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オリジンワールド  作者: HIGEKI
ドール村
30/50

侵入

 


 西の森では小鳥の鳴き声が心地よく響く。ほのぼのとした雰囲気からはドール村を襲ったゴブリンがいるように思えない。


「ゴブリンいないな。拍子抜けだぜ」


「村長の話にあった洞窟にいる可能性は高いな。だが、油断するなよ。ゴブリンの危険性はきみが身をもって知っているはずだ」


「すみません」


 緊張感がないオーフェンにキッドは釘をさす。

 オーフェンは自分だけ注意されたことに不満があるのか、ふてくされたように謝った。


「先輩に対してそんなぶっきらぼうに謝らないの。キッドさんにちゃんとあやまりなさい」


「ぶっきらぼうに謝ってなんか……」


「いいから謝りなさい」


「わ、わかったよ。キッドさん生意気な態度を取ってすみませんでした」


「大丈夫、気にしてないから」


 オーフェンはミアに怒られキッドに頭を下げ謝罪する。

 あまりの変わりようにキッドは困惑気味に笑っていた。


「ふふっ、ミアちゃんオーフェンくんのお母さんみたいね」


 ミアとオーフェンのやりとりをみてヴィレッタは笑う。

 リアムの話では二人は小さい頃から一緒にいるらしい。世にいう幼馴染ってやつだ。


 一人っ子で幼い頃を一人で過ごしてきた遥人にとって幼馴染は夢の夢である。

 だが、目の前の二人の関係を見ていると幼馴染は想像していたほどよいものとは言い難いのかもしれない。


「キッドさん、この先になにかがいます」


 遥人は前方からなにかの気配を察知しキッドに報告する。

 醜い能力によって身体機能も強化された遥人は気配を敏感に感じ取ることが出来るのだ。


「話には聞いていたが凄い察知能力だな。わかった。みんなここから慎重にいくぞ」


 キッドの指示に全員が黙って頷くと、彼を先頭に気配を殺しながら前へ進んでいく。

 しばらくすると、少し先に開けた場所が広がる。


「みんな止まってくれ」


 先頭のキッドは後ろに続く遥人たちに右手で制止させる。

 開けた場所の先には大きな穴があり、穴を守るように二匹のゴブリンが槍の石突きを地面に着け立っていた。


「どうやらあれが村長さんのいっていた洞窟ね」


「そのようだな」


 ヴィレッタの言葉にキッドは同意する。

 洞窟を守るゴブリンたちの容姿は前回の戦い通り一般的なゴブリンと変わらない。


「リアムは電撃でゴブリンたちの動きを止めて、その隙にハルトとオーフェンで処理してくれ」


「出来るか?」とキッドは遥人、リアム、オーフェンに問いかけ、三人は頷くと行動を開始する。


 リアムは両手に青白い電気を纏わせるとゴブリンたちに放つ。

 ゴブリンたちは奇襲に対応出来ず、見事に電撃がクリーンヒットした。

 痺れるゴブリンに考える時間を与えない。遥人とオーフェンは素早くゴブリンたちの前に出ると斬撃を放ち、二つの命を刈り取る。


「話で聞いたよりもやるじゃないか」


「ありがとうございます。でも、相手は二匹なので」


 キッドの褒め言葉にリアムは複雑そうな顔で答える。

 普段の二人の関係を知っているリアムとしては素直に喜べなかった。


「ここからは敵のテリトリーだ。引き続き気を引き締めて洞窟に侵入しよう。とりあえず、ここからはリアムたちを先頭にしていこう」





 ◇





 洞窟の中は等間隔に松明が設置されており、遥人たちが周辺の把握が出来る程度の明るさ確保されていた。松明が設置されているところからゴブリンたちが長期的に住み家にしていることが伺える。


「それにしても静かだな。そろそろゴブリンと遭遇してもいいと思うんだけど」


 先頭を歩くリアムはゴブリンと遭遇しないことに不自然さを感じていた。

 洞窟の中は遥人たちの足音と水がしたたる音しかしない。


「ハルト、なにか気配を感じない?」


「不気味なくらいなにも感じないね」


「ここまで出てこないということは俺たちが侵入していることはばれているかもな」


「でも、どうやってばれたの? 今までそんなばれるようなことはなかったと思うけど」


 キッドの発言にヴィレッタは疑問を投げかける。

 彼女のいう通り慎重に動いてきた遥人たちは侵入がばれてしまうような行動はしていない。

 唯一ばれる可能性がありそうな洞窟の前での戦いは相手に反撃をする余裕を与えず終わらせた。


「相手の能力の可能性が高いな。ゴブリンが能力を持っていることなんてあり得ないがハルトと戦ったゴブリンは能力を使っていたんだろ? 」


「はい。具体的な能力はわかりませんが、能力らしき力を使っていました」


「なら、その可能性があるな。ここから先いつでも襲われてもいいように警戒するべきだな」



 ―― 突如、遥人は気配を感じとった。


 しかも、一体、二体の数ではない。十、二十、いやそれ以上だ。


「キッドさん。この先にもの凄い数の気配を感じます。ちょうど村長の話していた数ぐらいです」


「やはり、待ち伏せされていたか。五十もの大人数だとこ広い空間で待ち伏せされている可能性があるな。ここからはハルトを先頭に敵が見えるギリギリまで接近するぞ」


 遥人はキッドの指示で先頭に立つと慎重に歩を進めていく。


 目の前に広がる闇の中から複数の赤い点がこちらを見つめていた。


「ゴブリンの姿を発見しました」


「了解。みんな一回止まってくれ」


 全員が止まったのを確認するとキッドは口を開く。


「ここからはリアムのパーティーに任せて俺たちは後方で待機だ。リアム、ハルト、オーフェン、ミア任せたぞ」


「よし、みんないくぞ」


 リアムは立ち上がり前に進む。

 三人も立ち上がり、リーダーの後に続く。


 ルーキーたちの戦いはこうして始まった。

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