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オリジンワールド  作者: HIGEKI
ドール村
29/50

冒険の始まり

 



 遥人は慣れない揺れに翻弄されながら今回の目的地ドール村向かっていた。

 ドール村はヴァローナの南に位置する小さな村である。


「ハルト大丈夫かい?」


 リアムは遥人に心配そうに声を掛ける。

 平然を装っていた遥人だがこのイケメンには通用しなかったらしい。


「大丈夫……といいたいところだけど気持ち悪い。まさか馬車がこんな揺れるとは」


 馬車に乗った経験がなかった遥人は完全に馬車の揺れを舐めていた。

 乗り物酔いという概念が頭からかき消すほど日頃何気なく乗っていた電車やバスに今さらながらありがたみを感じざるおえない。


「ここは田舎だからね。道も舗装されてないから相当揺れるんだ。僕も最初の頃は慣れるのに苦労したよ」


「しばらくしたら慣れるよ」とリアムは遥人の肩に手を置く。

 遥人には今までイケメンにはいいやつはいないという謎の偏見があったが目の前の優男に覆されつつあった。


「だせえな。よくそれでBランカーを名乗れるよな」


 オーフェンは相変わらず敵意の篭った視線を遥人に送ってくる。

 特別悪いことをした覚えがない遥人はなぜそこまでオーフェンが自分を敵視しているのか解らない。

 確かに最初の出会い方は良くはなかったが喧嘩を売ってきたのは向こうだ。


「こら。仲間にそんな言い方しない」


 オーフェンにミアが注意する。

 いつもならすぐミアに謝るオーフェンがだが今日は違った。 


「二人には悪いが俺はこいつを仲間として認めてないからな」 


 オーフェンは強い口調で宣言し、遥人に険しい顔で一瞥すると床に寝転ぶ。

 いつもと違う反応にミアはかける言葉がないのか、顔を下に向け黙り込んでしまった。


 まずい。遥人はこの重苦しい空気に危機感を抱く。まだ目的地についてもないのにこの空気。

 先の冒険者生活が思いやられる。この世界が明晰夢なのかそれともよくある異世界なのかを確かめるという遥人の目的がどんどん離れていく気がしてならない。


「ごめんね。ハルト。オーフェンはまだきみのことをわかっていないんだよ。これから一緒に行動すれば仲良くなるはずさ」


「あぁ、そうだな」


 小声でフォローをいれてくるリアムに内心不安を抱えながらも遥人はそう返すしか出来なかった。

 コミュニケーション能力が特別高いわけではない遥人にはオーフェンとの関係を改善する方法は皆無。

 ただわかるのは下手に関わるのはよくない。それだけだ。


「リアム。今回一緒に同行してくれているキッドさんたちはどんな人たちなんだ?」


 遥人は沈黙を恐れふっと頭に浮かんだことをリアムに聞く。

 最悪な空気での沈黙は負のスパイラルを作る大きな要因だ。それを避けることが今の遥人が出来る最善かつ唯一の応急処置である。


「キッドさんたちはCランカーのチームでBランカーと比べると個々の力は劣るけど、三人が団結すると他のBランカーのチームと引きをとらない実力発揮するんだ」


 個々は弱くても一度団結して戦うと何倍もの実力を見せつける。

 キッドたちはパーティーとして考えると最高な形といえるかもしれない。


「あっ! まさか」


 遥人の頭に光のような速さで閃きが駆け巡る。

 リアムは遥人の様子をみるとウインクをした。


「そう、ハルトも感じている通り僕たちパーティーは雰囲気最悪だろ? キッドさんたちと一緒にクエストをこなせば今僕たちになにが足りないのかわかるかなと思って。特にオーフェンに」


 リアムはオーフェンに聞こえないように小声で自分の思惑を遥人に伝える。


 やはりアムは優秀なリーダーだ。

 遥人はリアムに少しの不安を抱いていたこと自分を叱りたくなる。彼はこのパーティーが抱える問題を理解し、対策を立てていたのだ。


「キッドさんたちは俺たちの状況を知っているのか?」


「うん。僕からそれを含めて一緒にクエストを受けてもらえないかお願いしたからね。正直断られるかも……ってひやひやしてたけど快く引き受けてくれてよかった」


「いい人たちだな。そこまでしてくれたんだから俺もいいパーティーになるように頑張らなきゃだな」


「でも、頑張りすぎないでね。オーフェンはきみへの嫉妬であんな態度してるんだからさ」


「お、おう」


 リアムに痛いところを指摘され遥人はぎこちなく笑う。

 遥人の中で抜けてるようでよく周りが見えているリアムの人物像が曖昧になっていた。



 馬車が止まる。

 どうやら目的地着いたらしい。


「着いたみたいだね。じゃあ降りようか」


 リアムを先頭に馬車から降りる。

 既に降りていたキッドたちは既に村人と何かを話していた。

 キッドは馬車から降りた遥人たちに気づくと近づいてくる。


「村長の家まで案内してくれるらしい。挨拶も兼ねてゴブリンの情報を聞いてみよう」


 村人の案内で村長の家へと向かう。

 ドール村はゴブリンに襲われたと聞いたわりには襲撃の痕跡はどの家からも見当たらない。

 だが、ゴブリンを恐れているのか外にいる村人がいなかった。


「ドール村ってこんな寂しい村なのか?」


「うーん、この村は高齢化が進んでしまっていているからお世辞でも活気がある村とは決していえないね」


「なるほど」


 リアムの言う通り、案内をしてくれている村人も決して若いとはいえない容姿をしていた。

 遥人はなにか引っかかりを覚えながらも深く考えることをやめ足を進める。


「着きました。こちらが村長の家です」


 村長の家はその名に恥じないほど他の家より大きかった。

 よく考えてみれば規模は小さいが村長は現実世界でいう市長と同じである。他の村人と差があってもおかしくない。

 村人はドアをノックしドアを開けると遥人たちを中に招き入れる。


「よく来てくださいました。皆さんそこのソファーに座ってください」


 想像通りの白髪頭で大人しそうな老人。THE村長が遥人たちを待っていた。





 ◇





「ゴブリンに村を襲われたときの状況を教えていただけませんか?」


 来賓室のソファーに座りお互い簡単な自己紹介をした後、キッドは今回の話の要である質問をする。

 過去の惨劇を思い出してか村長の表情は暗くなっていく。


「突然ゴブリンが現れて食糧庫を襲撃されました」


「なるほど。食糧はどのくらい取られたのですか?」


「全てを取られてしまいました。しかし、各々の家にしばらく生活していくだけの食糧を偶然にも確保していたのは不幸中の幸いでした」


 村長は頭に手を置き乾いた声で笑った。

 キッドの質問は続く。


「被害は食糧庫以外にありましたか?」


「村の者が何人か命を落としてしまいました。しかし、それ以外の被害はありませんね」


「ゴブリンの数は?」


「五十ほどでしょうか。非力な私たちでは立ち向かうことは出来ませんでした」


 村長は当日のことを思い出したのか悔しそうな顔をする。

 彼の様子に遥人は牢獄でロックに好き放題いたぶられた過去を思い出した。

 考えるだけでも身震いするような痛みを一方的に受けた恐怖と、何もできない自分の非力さに悔しい思いが今でさえ遥人の心を蝕んでいく。


「では、ゴブリンがどこに逃げたかわかりますか?」


「西のほうに向かっていきました。西の方には森があります。おそらくそこの洞窟にいるのではないでしょうか」


「わかりました。私たちは今から西の森に向かいます」


「ではよろしくお願いします」


 情報を聞き終えたキッドは立ち上がり村長の家を出ようとする。

 ちょっと待ってよ。遥人は違和感を感じていた。

 遥人は質問をしようと手を上げかけるが、新米が出しゃばってはいけないと思い直し、キッドの後に続く。


 こうして遥人たちの向かう先が決まった。

 向かう先は西にある森だ。


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