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オリジンワールド  作者: HIGEKI
ケペル城の戦い
25/50

無謀

 


「敵は約三万余。城下町には火が上がっていて城は完全に包囲されている」


「あのまま放置したらケペル城は落城。東征軍は挟み撃ちだな」


 東征軍の数は十万。対して三国連合本隊は六万。

 いかに十万の大軍といえど三万と六万に挟み撃ちされたらただでは済まないだろう。


 良きせぬ事態に焦りを隠せないルークと違いアマギの声からは余裕が感じられた。


「どうする? 一度本陣に報告しにいくか?」


 ルークは期待の眼差しでアマギを見る。

 敵は三万。こちらはケぺル城の兵力と合わせても七千。圧倒的な兵力差がある。

 だが、こちらには”龍殺し„と呼ばれ諸国に恐れられているアマギがいる。

 彼女なら戦況をひっくり返してくれるとルークは言葉とは裏腹に期待していた。


 だが、その期待はたった一言で裏切られる。


「そうだな」


「わ、わかった。流石に六倍の勢力差があれば龍殺しも厳しいか」


 ルークは悔しそうに下を向き拳を握る。

 兵力約四倍の差を埋めるのは”龍殺し„でも不可能と判断したんだろう。

 戦争は無残にも犠牲はつきものだ。勝利のために散っていく者を沢山見てきた。ケペル城の兵たちも勝利のための儚い犠牲になのだ。


「って、アマギなんで地竜から降りてるんだ? 早く東征軍の本陣に行かないと」


 地竜から降りたアマギは可笑しそうにルークを見る。


「何を勘違いしているんだ? 本陣に行くのはお前らだけだぞ」


「はぁ?」


 アマギの理解不能な言動にルークは空いた口が塞がらない。


「そういうことだ。総司令殿によろしくな」



 ―― アマギは右手を上げ指を弾く。


 五千もの地竜たちは一斉に走り出す。


「アマギーーーっっ!!!」


 ルークの必死な叫びは地竜の地面を蹴る音ともに遠ざかり消えていく。


 ”サリエル„は伸びをして身体をほぐすと歩き出す。


「さてと行くか」





 ◇






 ケペル城の周りは三匹のカラスがピラミッド状に並ぶ紋章が描かれた旗に埋め尽くされていた。三国連合だ。


 ケペル城を包囲する三万余の本陣では小太りの男が曇った表情で椅子に座っていた。

 彼の激しく貧乏揺すりは三万の軍勢を指揮する将の一人とは思えないほど激しく、止まる気配を見せない。


 本陣に一人の男が入ってくる。


「ロイド殿。様子はどうだ?」


「包囲は完璧です。城からはネズミ一匹出ることができません。帝国側に気づかれる心配はないでしょう」


 ロイドは小太りの男とは正反対でがっちりとした体格で武人の風格が出ていた。


「本当に籠城戦に持っていくつもりなのか? 一気に攻め落として帝国の一刻も早く後ろを取る方がいい。わかっているのか? この戦いで負けたら裏切り者のわしは終わりなんだぞ?」


「焦りは禁物です。無理に攻め混んで攻めあぐねた挙句せっかく敷いた包囲網をかいくぐられて救援を呼ばれたらそれこそお終いです。ビルド卿のお気持ちもわかりますがここは私にお任せください」


 ロイドの言葉に納得したのかビルドの貧乏揺りが止まる。


「確かにロイド殿のおっしゃる通りだ。ここはべヴァリエ王国の大将軍様に任せるとしよう」


「ありがとうございます」


 ロイドは軽く頭を下げ謝意を示すとビルドの正面にある椅子に座る。


 三国連合は文字通り三つの王国で構成されている。ロイドはその一つで三国の北側に位置する『べヴァリ王国』の大将軍である。

 大将軍は軍事のトップだ。これは三国統一しており、南側に位置する『グランシル王国』や、『プロイセル王国』も同じく大将軍が存在している。

 どの大将軍も強力な力を持っておりその名は東征軍にも轟いていた。


「しかし、東征軍本体はもちろんだが後ろも気になりますね」


「後ろとは?」


「龍殺しですよ。彼女は五千の兵とともにケペル城の南西にある砦にいるそうじゃないですか」


「あぁ、あの小娘か」


 ロイドの発言に表情が硬くなるが龍殺しの単語を聴いて安堵の色を見せる。


「何故です? 噂では東征軍総司令のガイロンにも匹敵する実力を持つと聞きますが」


「あの小娘は実力は高いがこの戦争に興味がないらしい。現に今回砦の待機を命じられても嫌がるどころか喜んで砦の待機を受け入れたわ」


「ほう。因みにその指示はガイロン本人が?」


「そうだ。ガイロン本人が直接指示をだした」


「なるほど」


 ロイドは顎に手を当てしばらく黙り込む。

 その様子をビルドは怪訝な目で見ていた。


 ビルドにはそんな考えるほどのことなのか疑問に感じていた。戦争に参加する意欲がない人間が待機命令を出されたらなおさら攻めてくるはずがない。しかもこちらは隠密に動いているのだ。東征軍ですらまだ気づいていない。運良く能力に恵まれただけの小娘が気づけるはずがない。



 ロイドは顎から手を外すとビルドの方に目線を向ける。


「ビルド卿。作戦を変更し直ちにケペル城を攻めます」


「どうしたのだ。さっきは無理に攻め込むのは危険といっていたのに」


 急な方向転換に思わずビルドは立ち上がってしまう。


「あのガイロンが恐れて戦線を離脱させたのだとしたら彼女が動く前にケペル城を攻め落とさなければ元も子もありません」


「しかし、ロイド殿。先程から申しておるがあの小娘は……」


「報告致します」


 本陣にやってきた兵士の声がビルドの声を遮る。


「北西の森林から龍殺し、ヤガミアマギと思われる女が現れました」


「なんだと!」


「一足遅かったですね。一万ほど城の包囲に残して二万で向かいうちましょうか。それで敵の数は? 」


 兵士は唾を飲み込むと口を開く。


「敵は一人。ヤガミアマギたった一人であります」


 本陣を沈黙が支配する。

 ビルドに至っては驚きのあまり口を開けていた。


「そうですか。いいでしょう」


 ロイドは笑みを浮かべると兵士に命令する。


「直ちに二万五千の兵を向かわせろ。我らべヴァリエ王国を舐めたこと後悔させてやれ」


 ロイドの顔は怒りに支配されていた。

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