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竜のお見舞い

「みのりや〜。それはなんじゃあ〜?」



 おじいちゃんが不思議そうに私の手元を覗き込む。

 私はついていた木の棒を横に置いて、おじいちゃんを見た。



「お餅よ。本当はもっと大きな杵と臼で、粒が残らないようにするんだけど。こっちのもち米は硬いのね。中々綺麗なお餅にならないわ。」



 この間、私が魔力が増えて寝込んだ後、薬を譲ってくれた赤い竜から、魔力を補う滋養に良いものが送られてきた。

 魔力調整の訓練中の竜が食べるものらしいのだけど、果物や木ノ実などたくさんあって、その中にもち米があった。



 もち米はこちらでは木ノ実で採れて、赤い竜によると「少々硬いが噛めば甘い」そうだけど、今の私の怪力で潰せない硬さは少々って言わないと思う。

 まあ、おじいちゃん用に大量に作ろうとしてるからかもしれないけどね。



「わざわざ形を変えるんかあ。そのままじゃ食えんのかの〜。」



「一応、潰さない料理もあるのよ?『おこわ』って言って、味をつけて蒸すの。でも、私、おこわの作り方は知らないし、お餅なら蒸して潰してつくだけだし、おかきも作れるから。」



「おかき?なんじゃそれは?」



「う〜ん。薄くてパリパリしてて、香ばしいおやつね。美味しいわよ。」



「美味そうじゃのう〜。しかし、そいつを潰さんと出来んのか〜?」



「粒のままだと薄く出来ないから、パリパリにならないの。私の好みもあるけど、やっぱりおかきはパリパリでなきゃ。」



「そうか〜。なら、魔法で潰してみればええ。みのりの魔力調整の訓練になるじゃろ〜。」



 そう言って、おじいちゃんは私にものを潰す魔法を教えてくれた。

 後で、力持ちな竜にとってはマイナーな魔法で、知ってるおじいちゃんがすごいのだと、お出かけから帰って来たガートルードさんが教えてくれた。



 魔力で対象を包んだら、物を圧縮するイメージで、さらに魔力を注ぎこむ。

 おじいちゃんは「ギュッと小さくするんじゃ〜。」って言ってたけど、これって圧縮するってことを知らないと出来ないんじゃないかしら。



 しかも、圧縮するために魔力を注ぎこむのが以外と難しいし。

 均等に注がないと、魔力の膜が破れちゃうのよね。



「魔力を均一に出せると、魔力を放出する時身体が楽じゃからな〜。みのり〜。頑張れ〜。」



 おじいちゃんて、意外にスパルタなのよね。

 出来るまでやる。みたいな。



 でも、魔力を放出してるからか、身体が軽い気がする。

 魔力がたまってきてたのかな。また倒れるところだったかも。



 メイリンちゃんみたいに太るかもって言われてるけど、私は自分の身体が耐えきれなくて、倒れるんじゃないかって思ってる。

 実際、この間倒れたし、その時だって目に見える異常はなかった。



 きっと人間の身体じゃ、たくさんの魔力に耐えきれないんだと思う。

 おじいちゃんもガートルードさんもそう思ったのか、おじいちゃんは私の側を離れないし、ガートルードさんは魔力を放出する助けになるハーブを探しに行ってくれている。



 数十分して、何とか潰すことが出来た。

 ちょっと硬いけど、あんまり柔らかく伸びてもおじいちゃんが喉に詰まらせちゃうから、これくらいで良いかも。



「出来た!お待たせ。おじいちゃん。ゆっくり噛んで食べてね。お餅は喉に詰まりやすいから。」



「おお。これがモチかあ〜。甘ーい匂いがするの〜。」



 つきたてのお餅は良い匂いがするもんね。

 別に用意してたエビの唐揚げやカボチャの餡子を包んで、おじいちゃんに食べてもらう。



「お〜。甘いの〜。美味いの〜。」



 おじいちゃんは気に入ったらしく、お餅を次々と食べていく。

 あ、あ、そんなに早く食べたら、喉に詰まっちゃう。



「う!」



「はい。お水。苦しかったら、吐き出して。大丈夫?」



「いや、大丈夫じゃ〜。心配かけてすまんの〜。」



「気をつけてね。喉に詰まりやすいから、小さく作ったんだから。一つずつ食べて。」



「すまんすまん。美味いから、いつもみたいに口いっぱいにしたくての〜。」



「あら、何の騒ぎ?良い匂いね。」



 おじいちゃんが落ち着いた頃に、ガートルードさんが戻ってきた。

 手には、何やら怪しい草の束がある。



「ん〜?ガートルード。えらく早かったの〜。」



「クーが薬草のこと知っててね。群生地を教えてくれたのよ。あの子、自分は食べられないって言ってたわりに、よく知ってるわね〜。みのり、これで魔力を放出する薬が作れるわよ。クーに後でお礼言ってあげてね。」



「はい。ガートルードさんありがとうございます。くーちゃんも、一緒に探してくれたんですね。」



「あら、いいのよ。そうよ。クーもみのりのために、何かしたいって言ってね。森の中を良く知ってる子がいて、助かったわ。」



「あやつも、長く生きとるからの〜。地を這う分、わしより植生には詳しかろう。」



「くーちゃん、まだ下にいます?」



「ええ。ここ最近はこの巣の下のところで寝泊まりしてるわよ。みのりが心配みたい。一緒に降りましょうか。」



「良いんですか?」



「いいのよ。クーもみのりも良い子だし。あ、長老、これ乾燥させといてね。」



「わかった〜。みのりや〜。モチをクーにも持ってってやれ〜。モチだけなら食えるじゃろ〜。」



「うん。そうする。ありがとう。おじいちゃん。」



「あ!私の分も置いといてよ!長老!」



「わ〜かったわい。早よう行ってこい。」



 ガートルードさんに抱えられて、入り口の方にいく。

 わあ、今日も良い天気。



 くーちゃんにも、もう大丈夫だからって伝えて、小さくお団子にしたお餅を食べてもらおう。

 ヘビさんだから、丸呑みで喉に詰まらせなように、注意しないとね。

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