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竜のダイエット-1

おひさしぶりです。

体調が安定してきたので、やっと続きが書けました。

「みのり~。まだかいのう~。」



「もうちょっとよ。これは時間が勝負なんだから。」



ふたをしたフライパンの出す音に集中する。

派手な音が収まって静かになる瞬間、さっと火からおろす。



「出来た。お待たせおじいちゃん。」



「おお。待ったわい~。ええ匂いじゃのう~。」



おじいちゃん用の大きなお皿にフライパンをひっくり返して餃子を乗せる。

そう。今日の献立は餃子だ。



水餃子も良かったけど、香ばしい焼き餃子も美味しいのよね。

私の両手サイズの生地に餃子の餡を包んでちょっと長めに焼くんだけど、ここで魔法の出番。



うすーい水球で来るんで、中火で蒸し焼き。

だから巨大餃子も中まできちんと火が通る。



そこから最後は強火にして、水分を飛ばして完成だ。

おじいちゃんは身体が大きいから、このサイズの餃子も10個くらい一度に口に入れないと、食べたかどうかわからない。



今もちょっとしたミニテーブルくらいある餃子の塊を一口で咥えて、もぐもぐとお行儀よく食べている。

目を細めて味わうようにゆっくり食べてくれてるから、気に入ったみたい。よかった。



「うまーいのう。みのりは料理が上手じゃなあ~。」



「ふふ。ありがとうおじいちゃん。まだまだ焼くから待っててね。あ、これも水でくるんでもらえる?」



新しい餃子をおじいちゃんの魔法でくるんでもらって、フライパンに放り込む。

いちいちお願いしないといけないのは手間だけど、おじいちゃんは手伝えることが嬉しいらしく、喜んでやってくれる。



焼けるのを待つ間、一つだけ除けておいた餃子を私も食べて、上手くできたことを確認して満足だ。

ちなみに、中身の餡はお魚のすり身を中心とした海鮮餡で、おじいちゃんも食べやすいあっさり味だ。



キャベツみたいな葉野菜も刻んで入れてある。

この葉野菜、狩りの時に偶然見つけたものだった。



一緒に狩りをする岩ヘビのくーちゃんが「これは食べられる。でも上手くない。」と教えてくれたのだ。

動けなくなってた所を助けて以来、くーちゃんは私を助けながらいろいろなことを教えてくれる。



草食だけあって食べられる果物や草について詳しく、彼が狩りに加わってから使えるハーブや野菜の種類が増えた。

おかげで料理のレパートリーが増えて、おじいちゃんも大喜びだ。



「美味かったのう~。ご馳走さまじゃ~。」



「お粗末様。気に入ってくれて良かったわ。」



「みのりの作るもんは何でも美味いんじゃあ~。ん~?おお?通信が来とるのう?」



上機嫌で昼食を終えると、おじいちゃんが驚いたように上を見る。

私も、修行して少しだけ魔力の流れが見えるようになったから、上の方に何かの魔力が来ているのはわかった。



おじいちゃんが通信って言ってたから、魔法を使った電話みたいなものかもしれない。

長生きで博識なおじいちゃんには、いろいろな所から相談ごとがくる。



武力目当てで力を貸してくれといった要望には「年寄りに無理させるんじゃないわい~。」と断っているけど、病気や災害についての相談には丁寧に対応している。

今回は後者だったらしく、熱心に話し込んでいた。



「ん~。これはわしじゃあ、ちっとわからんのう。みのりや~。」



普段は呼ばれることはないのに、珍しく私が呼ばれる。

狩りの準備を置いておじいちゃんの傍に行くと、困った顔をして「すまんのう~。」と謝られた。



「どうしたの?おじいちゃん。」



「いや。緑の里の所の娘がのう~。何も食べなくなって困っとるらしいんじゃが、わしにも年頃の娘が何を考えとるかなんぞわからなくてのう~。何か思い当たることはないかの?」



話を聞いて納得した。

それはたしかにおじいちゃんも聞かれても困るだろう。



「そうなの。何も食べないってことは、ダイエットかしら?でもそれって、かえって太っちゃうけど。」



「だいえっと?なんじゃあ。そりゃあ~。」



余程驚いたらしく、おじいちゃんは口をあんぐりと開けている。

緑の里と言ってたから緑のドラゴンのことだろうと思うけど、ドラゴンにはダイエットの概念はないんだろうか?



「ええっと。節制って言ったらわかる?食べ過ぎたりして身体が重くなると、狩りをするのや飛ぶにも不都合でしょう?それを避けるために、食事の量を調整するんだけど、減らすことに専念したのをダイエットって言うの。」



「おお。成る程のう~。しかし、わしらは食べたものは魔力に変えて、余分なものは周囲に拡散してしまうから、身体にたまることは無いんじゃがのう~?」



私の説明に納得したらしいおじいちゃんは、今度は別のことで首をひねっていた。

どうやら、ドラゴンは節制とは無縁なものらしい。羨ましいな。



「ふむう。聞こえ取ったじゃろう~?その『だいえっと』とやらかもしれんのう~。出来れば、わしの娘と直接話をさせたいんじゃが、そちらの娘にも話を聞くことは出来るかのう~?」



おじいちゃんは上を見て「よし。みのりや~。ちょっと話を聞いてやってくれんかのう~。」と言うと、何かをつぶやいた。

すると、壁の上の方の大きな映像が映し出される。



おじいちゃんの魔法はすごい。

物語の中でしか聞いたことのないようなものも楽々操る。



その証拠に、画面に映った緑のドラゴンは目を真ん丸に見開いて固まっていた。

驚いたんだろうなあ。私もびっくりしたし。



「こんにちは。娘のみのりです。」



「初めてお目にかかります。緑の里の長、ユーリンです。」



エメラルド色の鱗を持つドラゴンが、穏やかな黄色の瞳でこちらを見る。

驚いただろうに、礼儀正しく挨拶してくれた。いいドラゴンだなあ。



「いきなりのお願いで申し訳ありません。実はうちの一族の娘が閉じこもって何も食べなくなってしまいまして。話を聞こうにも答えてくれないのです。」



事情を聞いてみると、どうやら問題の娘さんは引きこもりのようだ。

う~ん。もしかしたら、ダイエットじゃなくて別の問題があるのかも。



「そうなんですか。私でお話ししてくれるでしょうか?」



「黒の長老さまには懐いていましたから、長老のお嬢さんなら答えてくれるかもしれません。」



成る程。それでおじいちゃんに相談したんだ。

私で相談相手になれればいいけどなあ。



「メイリンや~。出てきて、わしの娘と話をしてみんかのう~。」



挨拶が終ったのを見て、おじいちゃんが大きく呼びかける。

すると、ズウンと思い音がしたと思ったら、大きな竜が画面に出て来た。



「長老さまあ。助けて下さいい。」



可愛らしい声の緑の竜は半泣きで助けを求めてきた。

その体型は、何というか、緑の長やおじいちゃんと比べても丸々としていた。



「身体がどんどん膨らむんですうう。もう飛ぶことも上手く出来なくてええ。うわああんっ。」



そう言うと、泣き始めてしまった。

どうやら、太ってしまったのを気にして食べなくなっていたようだ。



でも、おじいちゃんの話だとドラゴンって太らないんじゃないっけ?

おじいちゃんもそう思ったらしく質問する。



「よしよし。落ち着け~。メイリン。おんし、魔力調整はどうやっとるんじゃ~?」



「?魔力調整ですか?もう成龍なので、訓練は終わっていますが。」



「ん?訓練?どういうことじゃあ~?」



何だか話がかみ合ってないみたい。

魔力調整って、太るのと関係あるのかしら。


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