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竜の養女になりました

お待たせしました。

ほんっとすみません。

ようやっと体力的に余裕が出来たので、連載化しました。

最初の数話は短編とほぼ同じです。

トントントンッ



ジャッジャッジャッ



「みのり~。まだかいのう~。」

「もうちょっと待っておじいちゃん。…よし。出来た。」



巨大な中華鍋をひっくり返して、これまた巨大なお皿に盛りつける。

皿の上には山のような焼きそばが乗っかっていた。



「お待たせ。おじいちゃん。」

「おお。いい~においじゃのう~。これは何じゃ?」

「塩焼きそばよ。麺をいろんな具材と一緒に炒めるの。あ。海鮮のスープも入れてる。」



「塩だけじゃないのか?」

「本当はもっと濃厚なソースで味付けするの。でも、おじいちゃんは濃い味は苦手でしょ?だから、スープで麺に、塩で具材に味付けしたの。」

「すまんのう。どうもわしらは人間の味付けは苦手でなあ。」



「それは言わない約束でしょ?苦手なのは仕方ないわ。私も濃い味は苦手だし。」

「みのりはええ子じゃのう。」

「もうおじいちゃんたら。」



そう言って、私は真横の巨体を軽くたたく真似をする。

私の傍にいるのは山のような巨体に輝く黒い鱗を持った老いたドラゴン。



ある日空から落ちてきた私を助けてくれた恩人だ。

私は日本の京都に住んでいた大学生だ。名前は酒井稔さかい みのり



買い物帰りにあるいていたら、何故か地面が無くなって落っこちた。

助けてくれたのがドラゴンだったことに驚いたけど、助かったのが嬉しくてお礼を言うと「お前さん異界のもんじゃろ?」と話しかけられて腰を抜かした。



そのままおじいちゃんの巣に連れて行ってもらって、異世界の生き物が時々落ちてくるということと、帰る方法はないこと、ここで人間は非常に弱く短命であるため立場が弱いことを教えてもらった。

奴隷にされることも多いみたいだから、おじいちゃんの所にいる方がいいだろうと言われ、一も二もなくお願いした。



奴隷になるくらいなら、お話の出来るドラゴンと暮らした方がまだ生き延びられると思ったからだ。

話していて、おじいちゃんはとっても博識で理知的だったというのもある。



「だてに1万年は生きとらんわい~。」と笑っていたけど、ドラゴンが言うと洒落にならない。

まあでも、パクリと食べない時点で信用できると思ったし、私は不思議とおじいちゃんが怖くなかったから一緒に暮らせると思った。



暮らすとなると、環境を整える許可をもらい、私は巣を見てまわった。

お世話になるなら何かしたくて、私は巣にあった何かの骨の掃除や料理から始めた。



ちょうど買い物帰りだったし、荷物はギュッと抱え込んで離さなかったから無事だった。

おじいちゃんは始めは不思議そうにしていたけど、私が初めて作ったオムレツを食べて「みのり。わしの娘にならんか。」と言ってきた。



どうやらお口にあったらしい。

娘と言うには年齢が離れているので、「おじいちゃんでええ。」と言われてそれが定着している。



「ねえ。おじいちゃん。今日は南に狩りに行くわ。ちょうど河を魚が昇ってくる頃でしょう?」

「おお。そうじゃのう。なら、今日はわしも行こうかの。魚目当てのファイアーバードなんぞがおったらやっかいじゃ。」

「ありがとう。さすがにつかまれて飛ばれたら私もどうしようもないから。」



おじいちゃんと話しながら今日の献立を考える。

あゆみたいなコケを食べる魚がこっちにもいて、生臭くなくて美味しいらしい。



おじいちゃんはこの魚が大好きだ。

でも、おじいちゃんは体格が大き過ぎるのと、ドラゴンの気配に魚が怯えて滅多に捕まえられないらしく、魚を捕まえた鳥のモンスターごと狙っていたそうだ。



ただ、最近はおじいちゃんも年だから肉の塊はつらいらしく、鳥はいらないのだそうだ。

私は魚を釣ってきてくれとお願いされて以来、魚が河をさかのぼってくる時期は魚を釣りに行っている。



海みたいに大きな河に網を巻いて力任せに引っ張るだけだけど、これが結構上手くいく。

大きな網も今の私なら軽いものだ。



異世界トリップでよくある恩恵として特別な能力を持ってたりするけど、もともと力持ちだった私はバカ力になっていた。

おじいちゃんを持ち上げられた時は、おじいちゃんも私も驚いた。



ますます下界で暮らすのは難しいだろうと、おじいちゃんに加護をもらって防御壁と身体能力アップの魔法を使えるようにしてもらった。

習得するまで大変だったけど、おかげで一人でも狩りが出来るようになったし、大きな網で漁も出来るようになった。



人間離れしていくことに悩んだ日もあったけど、帰れないのは本当だし、バカ力はもともと持っていた能力が異世界でアップしたものなのであきらめはついた。

そのおかげでおじいちゃんに迷惑かけずに暮らせているし、モンスターの多い危険な地でも生きていけると、暮らしていく中で力があることをありがたいと思うようになった。



「ほれ。見えてきたぞい~。」

「わあ。もう集まってきてるねえ。」



おじいちゃんの頭に乗って、南の大河にやってきた。

相変わらず向こう岸が見えないけど、おじいちゃん曰く河なんだそうだ。



まあ、確かに魚は淡水魚だったけどね。

河の上は魚目当ての鳥たちでにぎやかだった。



それもおじいちゃんが近づくと一斉に逃げて行ったけど。

おじいちゃんが河に近づいた隙に網を河に投げ入れる。



ドラゴンの気配に怯えた魚たちは上手く逃げることもできずに大漁だった。

引き上げた網を背負っていた巨大なカゴに放り込み、そのまま帰ることにする。



取り過ぎてはいけないのだ。

この時期の魚は出産前の鳥たちの貴重なタンパク源だから、自分たちが食べる分だけ取ることにしている。



おじいちゃんが引き上げると、鳥たちは我先にと戻ってきていた。

後ろがぎゃあぎゃあやかましい。



ん?まだうるさい?

後ろを見ると、何故か河にいた鳥のモンスターが2羽、私たちを追いかけていた。



え。何?おじいちゃんを追ってくるなんて勇気あるなあ。

私はわからないけど、ドラゴンの威圧感って半端ないらしいし。



「おじいちゃん。鳥さんが追いかけて来てるよー?」

「ん~?何じゃあ?ファイアーバードの番じゃないか?」



おじいちゃんは空中で止まると、追ってくる鳥たちを待った。

ファイアーバードって名前の通り、真っ赤な羽を持った大きな鳥だ。



一度エサにされそうになったことがあるけど、知性があるのは知っている。

私を捕まえたやつが「柔らかくてうまそー。」と歌うように上機嫌で言ってたのを聞いたことがあるからだ。おじいちゃんに蹴散らしてもらったが。



「何じゃあ?おんしら何か用かあ?」

「「私たちの子をお返し下さいっ。」」

「子供?」



「ぬしらの子供なんてどこにおるんじゃあ?」

「「そのカゴの中ですっ。」」



え。籠?

慌てて見ると、目を回した赤い鳥が魚と一緒に網にかかっていた。



「やだ。網で一緒にすくっちゃったみたい。」

「おお。そうか。みのり~。出してやってくれ~。」

「はーい。」



網を除けて、魚をくわえたままの鳥さんを慎重に取り出す。

おじいちゃんの背中に横たえると、親鳥たちは子供を呼んでぎゃあぎゃあ鳴きだした。



すると子供はすぐに目を覚まして、ドラゴンがいることに驚き、自分がその背中に乗ってることに更に驚いて、両親を見付けると一目散に逃げていった。

ファイヤーバードの親子は礼を言うとものすごい勢いで帰って行った。



「ふう。気をつけなきゃねえ。まさか河に突っ込んでるなんて思わなかったわ。」

「ヒナはたまにやらかしとるの。上手く空中に留まれんのじゃ。それより、我が子を取り返すためとは言え、わしに近づくやつは久々じゃの~。ありゃ上位種じゃな。」

「あ。強いやつね?他のより綺麗だったねー。」



そんな会話をしながら巣に帰った翌日。巣の前に果物が置かれていた。焼くとパンみたいに香ばしい香りのするやつだ。

不思議に思って周りを見てみると、ちょっと離れた場所から昨日の赤い鳥さんが1羽止まってこっちを見ていた。



お礼だろうと思って、「ありがとうー。」と叫ぶと、頷いて帰って行った。

遠い所をわざわざ来てくれたんだ。



おじいちゃんに果物を見せながらその話をすると、「やっぱり上位種じゃったの~。しばらくあの辺りの長はあやつじゃろう。」と言っていた。

上位種は寿命も知性も段違いだそうなので、南での狩りには気をつけるように言われた。



今回は恩返ししてもらったけど、次はそう思ってはくれないよね。

食べ物を取り合うとなれば争いになるものだし。気をつけよう。



「今日はこれでパンでも作ろうか。」

「パン?何じゃ?それは?」

「こないだ焼いたの出したでしょ?」

「おお。あま~くて美味しかったのう。」



興味を示したおじいちゃんに説明しながら、今日の献立を考え始める。

今日もいい天気だ。狩りも上手くいきそう。

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