安全確保編1
梅宮さんが、輸送ヘリに乗るのに続いて俺らも乗る。乗ったヘリは部屋が三つに分かれていてそれは操縦室、そして今俺らがいる八人程度が入れる場所が二つだった。
同じ部屋には俺たちとあと二人いた。
「お前ら全員来たのか。大人しくあの建物で待ってりゃいいのに。」
そこでやっと梅宮さんは笑った。
「一応紹介だけしとくか。私は先ほども行ったが、この部隊の隊長を務めている梅宮沙織空軍中佐だ。呼ぶときは梅宮ではなく、沙織と呼んでくれ。梅宮と呼ばれると嫌な奴を思い出すんでな。」
この人空軍の人なんだ。
「こいつは副長の真壁雄二。」
梅宮さん、じゃなくて沙織さんの隣にいるのが真壁という人だった。金作と同じように筋肉がかなりついた人だ。
「で、向こう側にいるのはお前達と同じただの雑魚どもだ。」
(この人美人なのに口が悪いなぁ)
もう少し丁寧にしゃべったら男の人だって寄ってくるだろうに。
「これから我々が行う任務について説明する。」
全員の視線が沙織さんに向く。
「まず、食料輸送ルートの確保のため君たちがいた街に行き、カルダノを討伐する。数は把握しきれていないが、恐らくまだ100体以上はいるだろう。」
「あの〜、俺らがいた街って危なかったんですか?」
そう聞くと、
「あぁ、あそこは奴らが直接落ちた地点だからな。君たちが生きていることが不思議だな。」
「そいつらを全員殺ればいいんだな?」
龍神が確認を取る。
(殺るとか、恐い言葉使うなぁ)
「そうだ、あそこが制圧できればとりあえず食料不足は解決する。到着し次第向こうの部屋の奴らが一気に展開する。我々はそれに続いて迅速に動く。行動を共にするものを言うぞ。」
共に行動する班は俺は沙織さんと金作、龍神、そして沙織さんの部下3人がいる1班、綾月さんはてっちゃん、そして副隊長の真壁さん、その部下の人たち3人がいる2班、という構成だった。班が決まったところで今後の作戦の説明をされた。
『あと1分で到着します』
操縦席からそうアナウンスが入る。
「では全員に武器を渡しておく。」
そう言って渡してきたのは一人に対してアサルトライフルを一丁と弾薬箱、携帯食料と少量の水そして軽い治療ができる救急箱が入った袋だった。リュックの方が自分は慣れているので詰め替える。
「あとそこのお嬢さんにはこっちを」
沙織さんが綾月さんに俺らがもらった救急箱の2倍くらいの大きさの箱を渡す。
「あんたになんかあるとあんたの父親の大佐に殺されるからね、後ろで全員の救護を頼むよ。」
「了解です!」
綾月さんが元気に返事をする。
『ゴォォォ‼︎‼︎』
すさまじい音と振動が足から伝わってくる。
『到着しました。3秒後全ての扉を開けます。3……』
カウントダウンが始まる。
「いよいよだな…」
金作の久しぶりに真面目な言葉を聞いて、思わずほおが緩む。
『2……』
ここからは生きるか死ぬかの戦いか……生き残れればいいな。
『1……』
いや、絶対に生き残ってやる。
『ゴーゴーゴーー‼︎』
その声と共に扉が開く。皆が一斉に走り出す。
「第2班展開して安全の確保!第1班それに続き30メートル先までの道の確保!」
沙織さんが命令する。すぐさま全員が指示されたように動く。すぐに行動できたのは、ヘリの中で沙織さんから作戦について聞いていたからだ。
作戦によると、このあと2班に分かれて行動を開始する。第1班は現状で行けるところまで行き状況を把握し、第2班が近くからゆっくり安全を確認していく、というものだった。
近場が安全であることを確認した俺らはすぐに2班に分かれた。
分かれて少しして突然
「おい!」
沙織さんが指で前方を指す。
そこにはカルダノが5体いた。
「龍神、君は最後の切り札としたいから、まずは我々がいく。それから薩美、奴らの弱点は右胸だったな?」
「はい!多分……」
「多分では困る。どっちだ?」
「そうです!」
強引だな、この人。それにもし間違っていたら危険なことになる。
「よし、薩美は私と左から、他のものは右から頼む。行動開始は1分後だ。」
だが、やってみなきゃダメだ、いつまでも殻に閉じこもってる卵のままじゃ蛇には勝てない。
そう今が、今からが殻を破る時だ。