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深夜、ドライブ、山で見たもの

今までで一番面白かったドライブは、深夜1時、濃霧に包まれた紆余曲折の深い秋の山道を、時速20kmで走ったドライブだね。今考えれば脇に止まって、仮眠とってやり過ごせば良かった。坂道を行くと段々白く、霧でじっとり寒かった。見事に白、ほらあのスチーブキングのミストって映画があるだろ、あんなに無邪気に笑えない。外に出て、伸ばした腕の手首から先がすっぽし見えなくなって、たまらず笑って反射的に精神を保護したくらい、かえって夜は明るかった。


深夜の田舎の山道だから、音が無い。あっても空気中の濃密な水分子に阻まれて、反響しない、遠くへ届かない、聞こえない。少しでも聴こえるように窓を全開にする、車内も白く煙り、助手席のシートが心なしかしっとり濡れる。30分経って、金木犀の白痴の臭いがプンプンしてきた、糞ったれ、ゲロ以下の臭気帯を15分で抜けるが、車へ鼻の奥へ糞蟲の這った跡が残る。唾を吐き罵倒して気を晴らしたい気分な感情だが、40分に一台くらい対向車が来るから気を抜けない、夜霧の山道を能天気な馬鹿が割と走っているもんで、呆れて何も言えない。10分置きにプップとクラクション鳴らしながら、対向車に注意をうながす、意味があったかどうか。普段一時間の道を三時間掛けて帰った。


その時に解ったのは、人間は、目も耳も鼻も利かなくなった場合、根源的な恐怖に陥ることさえできないということだった。足がアクセルを踏み、アクセルがタイヤを踏み、タイヤが石を踏む。足裏が石と接し続ける限り永久に闘争心は萎えない。人間の肉体と石は距離が開けば一層強く感じ合う。石は俺のタイヤを咥え込んで放そうとしない。俺もじらすようにアクセルを浅く踏んで、石を楽しんでいた。きっと今君が後ろに立ってる包丁を持ったオバサンに気付いても石と接している限り君はオバサンを恐れる事が出来ない。これが山で見た全てだ。危険を冒せば考えの外で人格を変えられてしまう気付かない抵抗しない逃げれない。みんなは石に囚われないよう、深夜の山道には気をつけて下さい。

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