鑑定開眼と神々の遺産
手に入れたばかりの「鑑定」スキル。早速使ってみよう。まずは、洞窟の入り口にいた白骨遺体の持ち物だった「古本」と「板切れ」だ。
俺は革装幀の「古本」を手に取り、意識を集中して「鑑定」と心の中で唱えた。瞬間、掌にピリリと微かな魔力が流れ込むのを感じ、どこからかゴォン…と低い石の軋むような音が響いた気がした。本の上に半透明のウィンドウが淡い金色の光と共に現れ、文字が浮かび上がる。
名称: 〈神々の遺跡指針録〉
分類: 神聖考古/地理魔導書(★★★★★)
備考: 神々が残したと言われる遺跡の場所を記した本。選ばれし者、あるいは大いなる幸運を持つ者のみが解読し、その地へ辿り着けると言われる。古代言語と特殊な魔術的暗号で記述されている。
(神々の遺跡…指針録…! いきなり星五つだと!?)
ゴクリと喉が鳴る。これが、あの白骨遺体が命を賭してまで手に入れようとしたものか…? ということは、ここはやはり神々が残した遺跡で間違いない。途端に、この遺跡の難易度がとんでもなく高いものである可能性が頭をよぎる。
(…とんでもないものを手に入れてしまったかもしれない。神々の遺跡に、その指針録か…俺なんかが扱いきれるのか、これ? 古代言語と特殊な魔術的暗号…って、読めるのかこれ? いや、読めなきゃ意味ないだろ普通…どうなってんだ?)
運が良いのか悪いのか、もはやよく分からないが、進むしかない。一瞬の不安を振り払い、次に奇妙な文字が刻まれた「板切れ」も同じように鑑定してみる。再び、淡い金色のウィンドウが現れる。
名称: 〈神門開扉石〉
分類: 結界解除用キー・ルーンストーン(★★★★☆)
主な用途
神門開放: 〈神々の遺跡指針録〉に記された第七遺門の主要扉を開く唯一の鍵。特定の手順で扉の窪みにはめ込むことで起動する。
(これも星四つか…!重要な鍵なのは間違いないな。第七遺門の鍵ねぇ…じゃあ第一から第六もあるってことか? 先は長そうだな、おい…)
とにかく、どちらも非常に重要なアイテムであることは間違いない。慎重に袋にしまう。
あと、鑑定しておきたいものといえば、紫色のスライムが落とした「紫色の液体が入った小瓶」だ。これも鑑定を行う。
名称: 〈ヴェノムケアポーション〉
分類: 解毒薬(★☆☆☆☆)
主な効果: 一般的な毒素を中和し、毒状態を回復する。
「(解毒薬か、星一つ。まあ、持ってて損はないな)」と、シンプルに効果を理解し袋にしまった。あの紫スライムはやっぱり毒持ちだったんだな。
そういえば、先ほどからモシャモシャと食べているこの干し肉は大丈夫なのだろうか? ちょっと不安になってきたので、これも鑑定してみる。
名称: 〈グレイウルフジャーキー〉
分類: 調理系携帯食料/雑貨(★★★☆☆)
原材料: グレイウルフの筋肉繊維、洞窟内自生ハーブ塩、天然乾燥(魔力処理による保存性向上・無添加)。
栄養補給効果
空腹度回復: 最大スタミナの20%を即時回復。長時間の探索・戦闘による飢餓感を緩和。
疲労軽減: 微量の魔力タンパク質が筋肉の炭酸回路を活性化し、数分間だけ持続的に疲労回復速度が上昇。
備考: 適切に処理されており、食用に適する。美味。
(ただの干し肉じゃなかったのか! 空腹回復に疲労軽減まで…星三つも頷ける。鑑定スキル、本当に便利で楽しいな!)
俺は改めて鑑定スキルの有用性を噛みしめた。次は何を鑑定しようか。そうだ、腰に携えたこの魔剣も見ておこう。期待に胸が高鳴る。鑑定の瞬間、今度は周囲の空気がほんのり揺らめき、背筋にひんやりとした風が通ったような気がした。
名称: 〈フレイムアークソード〉
分類: 魔剣/古代神器(★★★★☆)
サイズ: 全長約1.2m、刃幅15cm
素材: 古神鋼と精錬炎鉱石の合金。微量のオリハルコンを含む。
特殊効果
斬撃時火炎付与: 刀身を振るうと、刃先から前方約2mまで炎の弧を描き、当たった対象に火属性ダメージを与える。MP微消費。
持続燃焼効果: 攻撃ヒット時、数秒間相手を燃焼状態にし、毎秒追加炎ダメージを発生させる。効果は対象の耐性により変動。
自己修復(小): わずかな魔力を吸収し、小さな刃こぼれ程度なら時間経過で修復する。
(魔剣…いや、古代神器だと!? しかも星四つ…! 自己修復までする魔剣かよ…どんだけだよ、この遺跡! まさか、こんなのがゴロゴロ出てくるのか? MP微消費ってのが気になるけど…まあ、俺のMPなら問題ないか? いや、油断は禁物だな)
息を呑むほどの性能だ。序盤の宝箱からこれほど強力な武器が手に入るとは…。やはりこの遺跡自体が相応の難易度を持つということだろう。俺がステータスALL-Sだから何とか対応できているだけで…そして、こういう幸運を引き当てるのは、間違いなく「幸運(LUK):S」のおかげだ。
俺は心の中で(「幸運(LUK):S」様、本当にありがとうございます!)と手を合わせた。
腹ごしらえも終わり、新たな武器と情報を手に入れた俺は、再びダンジョンの探索を再開した。
探索を再開して数時間。出現するモンスターの種類と、そのおおよその特徴も「鑑定スキル」のおかげで把握できてきた。試しに、目の前のアシッドスライムに鑑定を発動すると、奴の頭上に赤い縁取りのウィンドウが、一瞬チリッと火花が散るようなエフェクトと共にポップアップし、情報が表示された。
名称: 〈アシッドスライム〉
分類: 魔物種/粘液体(毒属性)
希少度: ★★☆☆☆(序盤~中盤の湿潤なダンジョンでよく見られる)
サイズ: 直径約0.5m前後
HP: 約80 弱点: 火属性、打撃
行動特性: ゆっくりとした移動ながら、高い粘性を活かした追跡と、弱酸性の粘液飛散攻撃を行う。粘液に触れると装備が劣化する場合がある。
(HP約80…! 見える、こいつの耐久力が数値で見えるぞ! これなら無駄な攻撃も減らせるし、戦い方がまるで変わる!)
この発見は大きかった。続けて他のモンスターも鑑定していく。
名称: 〈ホブゴブリン・ウォリアー〉
分類: 魔族種/中級雑魚モンスター(ゴブリンの上位種)
希少度: ★★★☆☆(序盤のダンジョン深部~野外で散発的に遭遇)
サイズ: 身長約1.5m前後
HP: 約150 弱点: 特になし(人間型ゆえ急所は共通)
行動特性: 集団での連携攻撃を好む。リーダー格が簡単な号令や剣や槍・盾や弓の使い分けを行う。ゴブリンより知能・身体能力が高い。
名称: 〈グレイウルフ〉
分類: 準魔獣種/軽量級雑魚モンスター
希少度: ★★☆☆☆(森林や洞窟などで比較的よく遭遇)
サイズ: 肩高約1.0m、全長約1.8m
HP: 約120 弱点: 腹部
行動特性: 単独または少数での狩りを基本とする。獲物を視認すると直線的に追撃するが、囲まれたり、手強い相手と判断すると撤退もする。
今のところ、この第二階層では、この三種類のモンスターしか出現しなかった。鑑定で弱点やHPが分かるようになったことで、戦闘は格段に有利に進められるようになった。
順調に経験値を稼ぎ、俺のレベルは9まで上がった。
そして、この階層ではもう一つ、素晴らしい戦利品も回収できた。それは、おそらくこの遺跡の地図だ!
「知力(INT):S」のおかげで、頭の中でかなり正確なマッピングは出来ていたが、やはり視覚的に確認できるものがあると安心感が違うし、何より楽だ。先ほどのような隠し部屋の宝箱から見つけることができた。これも期待を込めて「鑑定」する。ひときわ強い金色の光がオーブ状のアイテムを包み込み、周囲の壁の文様が一瞬、呼応するように淡く輝いた気がした。ウィンドウが開く。
名称: 〈セレスティアルルーンマップ〉
素材: 古代神刻盤(オーブ状の水晶板とルーン彫刻を組み合わせた構造)
希少度: ★★★★★(神聖考古学の最高峰とされるアーティファクト)
分類: 神聖地図/空間可視化アーティファクト
機能
踏破領域表示: 所有者が踏破した領域を網羅的に記録・立体表示する。周辺の魔力流を感知し、地図精度を自動補正。
未踏破領域予測: 高度な魔力演算により、未踏破領域の構造や規模、特異点の存在を高精度で予測表示する。
重要地点マーキング: 強大な魔力反応や古代の封印、転移装置などを感知すると、自動的に詳細なシンボルでマーキングし、警告レベルも表示。
(五つ星アーティファクトの地図って…もう何が何だか。こんなの、普通の冒険者が一生かかってもお目にかかれるかどうかだろ…。マジかよ、俺の幸運S…とんでもねぇな、おい! …というか、これどうやって使うんだ? 念じればいいのか? 見た感じ、なんかオーブっぽいけど…)
これがあれば探索効率が段違いだ!この地図と頭の中のマッピング情報を照らし合わせると、どうやらこの第二階層はくまなく探索し尽くしたようだ。レベルも9から上がる気配がない。経験値もほとんど入らなくなってきた。
しかし、この〈セレスティアルルーンマップ〉には、まだ俺が気づいていない、この遺跡の根幹に関わるかもしれない、大いなる秘密が隠されているようだった…。
そろそろ、次の階層へと向かうべきだろう。
最後に、現在のステータスを確認しておく。
「ステータスオープン」
名前: (前世の名前)
種族: ヒューマン
レベル: 9
HP: 3900/3900
MP: 2600/2600
【ステータス】
筋力(STR): S
体力(VIT):S
敏捷(DEX):S
知力(INT):S
魔力(MAG):S
幸運(LUK):S
【スキル】
「鑑定」
【称号】
「ゴブリンハンター」、「スライムハンター」、「ウルフスレイヤー」
(よし、レベル9。HPもMPも順調に伸びている。それに新しい称号「ウルフスレイヤー」か。悪くない。この調子でいけば、もっと強くなれるはずだ。…問題は、この先どこまでが「序盤」なんだってことだがな!)
俺は新たな決意と、ほんの少しの軽口を胸に、次の階層へと続く階段へ向かった。




