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魔狼の連携と鑑定の目覚め

ダンジョンをさらに探索していると、通路の少し開けた場所で、また数匹のゴブリンを見つけた。しかし、今回は様子が違う。ゴブリンたちの傍らに、明らかに彼らとは異なる、狼に似た体躯のしなやかな魔物が二匹寄り添っていたのだ。今まで見たことのない魔物だ。


その狼のような魔物は、俺がゴブリンやスライムには発見されないであろう距離にいるにもかかわらず、即座にこちらに気づき、鋭い視線を向けてきた。そして、一匹が天を仰ぎ、長く鋭い遠吠えを始める。その声に反応し、ゴブリンたちが一斉に警戒態勢をとり、こちらを睨みつけた。

遠吠えを終えた狼は、低く唸りながら、明らかに俺に照準を定めている。こちらもすぐさま剣を構えた。


次の瞬間、狼たちは直線的な動きではなく、左右に分かれ、明らかに連携を取りながら襲い掛かってきた。

まず、先行した一匹が目にも留まらぬ速さで距離を詰め、右斜め上から飛びかかってくる。それを剣で受け止めようとしたが、狼は器用に身を翻し、剣そのものにガブリと噛みついた。


(しまった、剣が…!)


剣が使えない。狼に剣を持っていかれないように必死で踏ん張っていると、死角からもう一匹の狼が襲い掛かってくるのが気配で分かった。このままではマズイ!

咄嗟に、剣に噛みついている狼から手を放し、迫るもう一匹の狼に蹴りを叩き込む。腹にクリーンヒットし、「キャン!」という悲鳴と共に狼は壁際まで吹き飛んだ。


「いい加減にしろよ!」


俺は最初の狼がまだ噛みついている剣を、力任せにその口から引き抜く。そのまま横薙ぎに斬りかかるが、狼は素早くそれを避けた。壁に叩きつけられた方の狼も既に体勢を立て直し、再びこちらを狙っている。奴らは驚くほど俊敏で、こちらの攻撃を的確に避ける。


そうこうしているうちに、ゴブリンたちも雄叫びを上げて飛びかかってきた。

狼に比べれば、ゴブリンの動きは鈍重に見える。斬りかかってきたゴブリンの攻撃を冷静に見切り、体を捌いて避け、すれ違いざまに剣で切り裂く。

(俺、この避けながら斬る動き、結構うまいな…)


などと、戦闘中に場違いなことを一瞬考える。

次のゴブリンが棍棒を振り下ろしてくる。それを受けると見せかけて巧みにいなし、体勢を崩したところを斬りつける。ゴブリンはこちらに倒れ込もうとしてきたが、それを蹴りで後方へと吹き飛ばす。

運悪く、そのゴブリンが先ほど蹴り飛ばした狼の方へと転がり、狼が一瞬怯んでジャンプした。


(隙あり!)


その一瞬の硬直を見逃さず、狼に斬りかかり、深手を与える。どうやら一匹仕留めたようだ。


(なるほど、直線的な攻撃だけじゃ、こいつらには読まれるのか)


いろいろなフェイントを駆使し、時にはゴブリンを盾にするような動きも交えながら、残りの狼とゴブリンたちを慎重に、しかし確実に仕留めていく。ALL-Sのステータスがなければ、この連携攻撃はかなり厳しかっただろう。


『レベルが上がりました』


最後のゴブリンを切り捨てた瞬間、そんな声が聞こえた。それと同時に、手にしていた剣がパキリ、という乾いた音を立てて、根本から折れてしまった。


(マズイ! この先どう戦えば…)


そう思っていると、先ほど倒した狼の死体がスウッと消え、その場に小さな革袋が現れた。中身を確認すると、干し肉が数枚入っている!

考えないようにしていたが、実はずっと空腹だったのだ。


(流石「幸運(LUK):S」様! 分かってらっしゃる!)


しかし、武器はどうすべきか。ゴブリンが持っていた武器を使えればいいのだが、奴らの武器は死体と一緒に消えてしまう。途方に暮れかけていると、ふと壁に不自然な突起物があるのに気づいた。足元の小石がカツンと音を立てて転がり、微かに鉄錆びたような匂いが漂っている。この辺りは何か違うのか…?


(上の階でも見つけた、隠し扉か!?)


期待を込めて突起物を押すと、やはり上の階と同じように、壁の一部がスライドして隠し扉が開いた。中を確認すると、そこには期待通り、宝箱が一つ!


(上では罠はなかったが、今回は分からないぞ…)


警戒しながら慎重に宝箱を開けると、中には刀身が赤い円弧を描くように反った、美しい剣が収められていた。


(良かった…! これが使えれば!)


手に取ってみると、今まで使っていた剣よりも軽く、手にしっくりと馴染む。試しに軽く振ってみると、なんと、剣の軌跡に沿って赤い炎が立ち昇ったではないか!


(魔剣か!?)


何度思ったことか。さすが異世界ファンタジー。素晴らしい! 宝箱の中には、この魔剣を収めるための鞘も丁寧に置かれていた。

俺は魔剣を鞘に収め、腰に携える。柄を握った掌に、まるで生きているかのように、微かな剣の脈動が伝わってくる気がした。これが、俺の新しい力…。

隠し部屋の壁を探ると、やはり扉を閉じるためのスイッチがあった。


(流石に食事中に襲われたらたまったもんじゃないからな)


扉を閉じ、安全を確保してから、さきほど回収した干し肉にかぶりつく。


(うまいっ!)


今までの人生、まともな食事に縁がなかったせいか、ただの干し肉ですら、これほど美味しく感じるとは。


(そうだ! 異世界の美味しいものを巡る旅、なんてのも良いかもしれないな)


そんなことを考えて、少しだけ心が軽くなった。


そういえば、先ほどレベルが上がったのだった。ステータスを確認しておこう。


「ステータスオープン」


名前: (前世の名前)

種族: ヒューマン

レベル: 5 → 6

HP: 2700/2700 → 3000/3000

MP: 1800/1800 → 2000/2000


【ステータス】

筋力(STR): S

体力(VIT): S

敏捷(DEX): S

知力(INT): S

魔力(MAG): S

幸運(LUK): S


【スキル】

「鑑定」


【称号】 「ゴブリンハンター」、「スライムハンター」


「ん!?」


思わず声が出た。【スキル】の欄に、今まで「なし」と表示されていた場所に、新たに見慣れない文字が追加されている。


「鑑定」


スキルが増えている! チート級の初期能力をもらっておきながら、最初に得るスキルがただの「鑑定」とは、なんだか地味な気もするが…いや、待て。

その瞬間、まるで天啓のように「鑑定」スキルの真髄が頭の中に流れ込んできた。

これは、ただ物の名前が分かるだけのスキルじゃない。アイテムやモンスターに隠されたあらゆる情報を一瞬で可視化し、未知の武具であればその真価や隠された能力を即座に見抜き、敵であればHPや弱点、耐性といったステータスを丸裸にする…そういう能力だ。

これがあれば、危険な罠や強力なモンスターとの遭遇リスクを大幅に低減できる。それだけじゃない。価値のあるアイテムを安く買い叩かれたり、逆にガラクタを高く売りつけられたりすることもなくなる。人材を見抜くのにも使えるだろう。もしかしたら、この世界の通常のルールそのものを事実上“破壊”しかねない、とんでもない力だ。


(そういう意味では…これも紛れもないチートスキルじゃないか!)


…本当に、こんな力を俺が使っていいのだろうか? 前の人生では何も持たなかった俺が。一瞬、そんな迷いが心をよぎる。だが、すぐに首を振った。与えられた力だ。使わなければ、また何もできずに終わる。それだけは、もうごめんだ。地味どころか、使い方次第ではALL-Sのステータスに匹敵する、あるいはそれ以上の可能性を秘めたスキルかもしれない。


早速、試してみよう。俺は袋から、洞窟の入り口にいた白骨遺体が持っていた「本」と「板切れ」を取り出し、それらに意識を集中して「鑑定」スキルを発動させた。



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