称号ハンターと安息の隠れ部屋
スライム数匹でレベルが1つ上がるのか。いや、最初の森で倒したゴブリンもカウントされているのかもしれない。それにしても、このHPやMPの上がり具合は…一般的なゲームと比べてどうなのだろう?比較対象がないからよく分からないな。
それに、【スキル】も【称号】も依然として「なし」のままだ。これらは何か特別な条件を満たすと習得できるのだろうか。そもそも【称号】とは一体どんな効果があるんだ?分からないことだらけだが、まあ、これから少しずつ検証していけばいいか。俺は持ち前の「不屈の精神」で、そう前向きに考えることにした。
スライムを倒した場所をよく見ると、地面に小さなガラス瓶のようなものが数本落ちているのに気づいた。中には青い液体が入っている。ラノベやアニメでよく見る、あれだろうか。
(恐らく「ポーション」的な回復アイテムか何かだろうな)
正体は不明だが、あって困るものでもないだろう。洞窟の入り口にいた遺体のボクサーバッグのような袋は持ってきていたので、それらを丁寧に回収し、再び通路の先へと進んだ。
少し進むと、また分かれ道に突き当たった。今度は左へと続く道と、まっすぐ前に進む道だ。
(どっちに行くか…さっきは剣に頼ったけど、毎回それじゃ芸がないな。それに、もしもの時のために、ある程度マッピングもしておきたい)
俺は古典的だが確実な探索方法である「右手伝いの法則」
(常に右側の壁に手を置きながら進む方法)で進むことを決心する。
そのまま右手側の壁に沿って少し進むと、正面からツンと鼻をつく異臭が漂ってきた。この臭い…嗅いだことがある。
(間違いない、ゴブリンだ!)
身を隠す場所もない一本道。案の定、通路の奥から現れたゴブリン数体にすぐさま発見され、敵意むき出しで襲い掛かられた。
前回はまともな武器がなく、素手とゴブリン自身のナイフでの泥臭い近接戦闘になったが、今回はあの遺品である剣がある。
(この前みたいに返り血まみれになるのはごめんだ。あの臭いをまた服につけるわけにはいかない!)
そう肝に銘じ、剣を構える。
数分後。俺はあっけなくゴブリンたちを倒すことができていた。レベルアップしたおかげか、「知力(INT):S」によるものか、あるいは数少ないながらも蓄積された戦闘経験の賜物か、以前よりも格段に落ち着いて、効率的にゴブリンを処理できたのだ。
倒したゴブリンの遺体は、最初の森でのようにその場に残るかと思っていたが、まるで地面に吸い込まれるかのようにスウッと消えていった。
(さすがファンタジー…。ゲームでよくある、モンスターがアイテムだけ残して消えるやつか? それとも、このダンジョン自体が生きているとか、そういう設定でもあるのか?)
そんなことを一人で考えながら、俺はさらにダンジョンの奥へと進むことにした。
このダンジョンを数十分ほど探索した結果、今のところ出現するモンスターは「スライム」と「ゴブリン」の二種類だけだと分かってきた。モンスターを倒した後に回収できるのも、今のところスライムが落とす「ポーション」らしき青い液体の小瓶と、ゴブリンが稀に落とす紫色の小さな石だけだ。この石が何なのかは不明だが、魔力を秘めていそうなので、俺は勝手に「魔石」と呼ぶことにした。
そして、スライムとゴブリンをひたすら倒し続け、レベルが5になった時、ステータス画面に新たな変化が現れた。
名前: (前世の名前)
種族: ヒューマン
レベル: 5
HP: 2700/2700
MP: 1800/1800
【ステータス】
筋力(STR): S
体力(VIT): S
敏捷(DEX): S
知力(INT): S
魔力(MAG): S
幸運(LUK): S
【スキル】
なし
【称号】 「ゴブリンハンター」、「スライムハンター」
(称号…! やっぱり何か条件を満たすと勝手に増えるんだな)
「ゴブリンハンター」と「スライムハンター」。
名前からして、特定のモンスターを一定数倒すとか、そういう条件だろうか。効果はまだ不明だが、悪いものではないはずだ。
「体力(VIT):S」のおかげか、それほど肉体的な疲労は感じていなかったが、それでもぶっ通しで探索と戦闘を繰り返していたため、体感ではそろそろ徹夜に近い時間が経過しているはずだ。さすがに精神的な疲弊感が少し出てきた。
ふと、壁に手をついて一息つくと、手をついた部分の壁が「ガコッ」という鈍い音を立ててわずかに沈み込んだ。
(ん? なんだ?)
驚いて壁から手を離すと、沈み込んだ壁の一部がゆっくりと横にスライドし、人が一人通れるくらいの隠し扉が現れたのだ。
中を覗くと、そこは畳にして6畳ほどの狭い空間だった。そして、その空間の奥には、明らかに日本の某国民的RPGに出てくるような、木製の宝箱が鎮座していた。
(お、お宝だ!)
思わず声が出そうになるのを抑え、警戒は怠らずに近づく。別のラノベで、こういう狭い空間にある宝箱はトラップの餌で、開けようとするとモンスターに襲われる、なんて話を思い出していたからだ。
恐る恐る宝箱に手をかけ、ゆっくりと蓋を開ける。
…何も起きなかった。罠はなかったようだ。
宝箱の中を確認すると、なめされた皮で作られた篭手のような物と、同じく皮製の胸当て。そして、肩当てと一体になったマントのようなものが入っていた。
(防具か…!)
これからの探索を考えると、少しでも体を守るものは必要だろう。俺はそれらを身に着けてみることにした。まるで俺の体のサイズを測ったかのように、全ての防具がぴったしだった。今の服装(Tシャツとジーパン)の上からではあるが、ずいぶんとそれらしくなった気がする。はたから見れば、駆け出しの冒険者のように見えるかもしれない。そう思うと、少しだけ興奮した。
この狭い部屋をよく調べてみると、壁に小さなスイッチのようなものがあり、それを操作すると隠し扉が開閉することが分かった。
(ここなら安全そうだ。モンスターも入ってこれないだろう)
俺はここで仮眠をとることに決め、焚火の火を調整し、ゆっくりと意識を休息へと沈めた。




