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遺跡の扉と最初のレベルアップ

目の前の巨大な石扉は、明らかに部外者を拒むかのように、重々しい威圧感を放っていた。試しに押したり引いたりしてみるが、びくともしない。魔法か何かで封印されているのだろうか。

少し離れて扉全体を眺めていると、表面にびっしりと刻まれた複雑な文様に見覚えがあることに気づいた。


(そうだ、さっきの遺品の…!)


俺は急いで焚火の場所まで戻り、白骨遺体の傍らにあった袋を持ってくる。袋から指輪と板切れを取り出し、扉の文様と見比べてみる。間違いない。指輪に刻まれた模様、板切れや本の表紙にあった奇妙な文字や図形。それらが扉にも同じ様式で刻まれている。繋がりがあるのは明らかだ。しかし、俺にはこの文字が読めないし、どうすれば扉が開くのか見当もつかない。


再び扉をくまなく調べていると、ちょうど中央、俺の胸くらいの高さに、小さな円形の窪みがあるのを見つけた。何かをはめ込むためのもののようだ。


(もしかして…)


懐から例の指輪を取り出す。大きさは…合いそうだ。祈るような気持ちで、指輪を窪みにそっと押し込んでみる。すると、まるで最初からそこにあったかのように、指輪は窪みに吸い込まれるようにぴったしとはまった!


その瞬間、ゴゴゴゴゴ…という地響きのような重い音と共に、巨大な石扉がゆっくりと左右に分かれて開いていく。


(あの遺体は、やっぱりこの遺跡を目指していたのか…? そして、あと一歩のところで力尽きた、と…)


開いていく扉の向こうを見つめながら、見ず知らずの誰かの無念に思いを馳せた。


扉が完全に開くと、中から淀んだ空気が吹き付けてきた。それは明らかに嫌な臭いだった。獣の糞尿のような臭い、長年放置されたカビの臭い、そして、微かにだが確実に混じる、鉄錆びたような血の臭い。

そして、開かれた扉の向こうに見えたのは、どこまでも下に続いているかのような、暗い石造りの階段だった。


(うわぁ…ファンタジーでよく見るダンジョンの入り口って、まさにこんな感じだよな)


どうすべきか。危険なのは間違いない。だが、なぜか恐怖よりも好奇心が勝っていた。これも「不屈の精神」のせいか、それとも、手に入れたばかりのこの力を試したくてうずうずしているのか。「自由に生きろ」とは言われたが、この力があるなら、ただ生きるだけでなく何かを成し遂げたいという欲も出てくる。それに「幸運(LUK):S」だってある。この遺跡がどんな場所かは分からないが、いざとなれば逃げればいい。自分にそう言い聞かせ、俺は洞窟――いや、ダンジョンへと足を踏み入れた。


永遠に続くのではないかと思われた階段を、数十分ほど降り続けると、ようやく平坦な場所へとたどり着いた。目の前には、左右に伸びる通路が口を開けている。


(まさにダンジョンものだ!)


どちらへ行くべきか。ここで悩んでも仕方ない。こういう時こそ、授かった力に頼ろう。


(頼むぜ、俺の幸運S!)


俺は剣を地面に垂直に立て、そっと手を放す。カラン、と音を立てて、剣は右側の通路を指し示すように倒れた。

「よし、右だな」…本当にこれでいいのか? ただの偶然かもしれない。だが、今は信じるしかない。俺は授かった幸運(LUK):Sを信じ、決意を固めて右へと進む。


通路は不思議なことに、壁や天井がぼんやりと自ら発光しているようで、松明などがなくても問題なく進めた。自分の足音だけが、しんとした通路にやけに大きく反響する。時折、遠くの方でピチャン、と水滴が落ちるような微かな音が聞こえる他は、静寂に包まれている。

しばらく進むと、何かの気配を感じた。通路の天井近く、何か半透明なものが蠢いている。目を凝らすと、それはゼリー状の不定形な塊だった。


「スライムだ!」


思わず、子供のようにはしゃいだ声が出た。声は通路に反響し、すぐに我に返って少し恥ずかしくなる。

見れば、天井や壁に張り付いていたスライムは一匹だけではなかった。数匹がうねうねと蠢きながら、こちらに近づいてくる。単純な生物に見えるが、明確な敵意、あるいは捕食者としての意識を感じる。餌だと思われているらしい。


俺は剣を構え、タイミングを見計らって一番近くのスライムに斬りかかった。しかし、剣はゼリー状の体を通り抜けるだけで、全く手ごたえがない。スライムもダメージを受けた様子はなく、構わずこちらに向かってくる。


(物理攻撃が効かないタイプか!)


避けながら、斬りつけながら、どうすれば倒せるか考える。何か、弱点があるはずだ。ラノベかアニメだったか…スライムの弱点といえば…。

ふと、スライムの体の中央付近に、ビー玉くらいの大きさの、わずかに色の濃い石のようなものが見えた。


(あれか! 核だ!)


思い出した。あの核を破壊すればいいはずだ。


今度はその核を狙って、剣を突き出す。狙い通り、一匹のスライムの核を断ち割ると、スライムの体は一瞬で形を失い、まるで蒸発するようにシュワシュワと消えていった。


(間違いない!)


確信を得て、残りのスライムも同じように核を狙って斬り裂いていく。ALL-Sのステータスのおかげか、動きの鈍いスライムの核を捉えるのは難しくなかった。


そこにいた数匹のスライムを全て倒し終えると、どこからともなく声が聞こえた。


『レベルが上がりました』


同時に、目の前に半透明のステータス画面が自動で開く。


名前: (前世の名前)

種族: ヒューマン

レベル: 1 → 2

HP: 1500/1500 → 1800/1800

MP: 1000/1000 → 1200/1200


【ステータス】

筋力(STR): S

体力(VIT): S

敏捷(DEX): S

知力(INT): S

魔力(MAG): S

幸運(LUK): S


【スキル】

なし


【称号】 なし


レベルが上がった! HPとMPも増えている。これが、レベルアップか。ステータスはSのままだが、これは初期値がSということだろうか。スキルや称号はまだない。

初めてのレベルアップに、俺は確かな手応えと興奮を感じていた。


(上がった…! たったあれだけの魔物でレベルアップするのか。この力があれば、もっと先へ…!)


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