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声との再会、最後の啓示と新たな名

(…とんでもないものを、また背負い込んだのかもしれないな。呪われたドラゴンを救う旅、か…)

俺は苦笑しつつも、右手の甲に刻まれた「混沌の刻印」を見つめる。それは禍々しくも、どこか悲哀を帯びた神龍の願いそのもののように感じられた。


挿絵(By みてみん)


無限図書館が告げた通り、カオスドラゴンが消滅したことで「終焉の座」であるこの異空間は急速に不安定化し、彼方に見えた光の裂け目へと俺は飛び込んだ。


次に気づいた時、俺は再びあの何もない、けれどどこか暖かく、そして今は神々しいまでの白い光に満ちた空間にいた。以前「声」と対話した場所だ。体の傷や疲労は完全に癒え、むしろカオスドラゴンとの死闘を乗り越えたことで、魂が一段階昇華したかのような清々しさと、漲る力を感じていた。


すると、やはり『あの声』が、今度は以前よりずっとはっきりと、しかしどこか名残惜しさを滲ませた響きで、俺の意識に直接語りかけてきた。


『…もしもし、貴方。…聞こえますか?』


心の中で、俺ははっきりと応じた。

(この声…! 間違いない、俺をこの世界に転生させてくれた、あの「声」だ! ああ。聞こえているよ。あなたは…?)


『ええ、私です。以前お話しした者です。…良かった。貴方に助言を送りたかったのですが、貴方の魂に絡みつく「負の感情を収集するシステム」が、こちらとの回線を酷く遮っており、先程の朱雀戦やカオスドラゴン戦では、十分な通信ができませんでした。「囁きの回廊」も、その影響を強く受けていたのです』

声には、申し訳なさが滲んでいた。


『また、あまりこちらから貴方に関わると、この世界のことわりそのものに影響が出る恐れが強まってきておりまして…。こちらから貴方に直接干渉できるのは、おそらくこれが最後になるでしょう』

(最後…?)

『ええ。ですが、私たちから貴方を見ることは常にできています。いつでも、貴方を見守っておりますので、安心してください』

(そうか…。それは、心強いな)


『しかし、ある一定の条件下では、このように再びお話することはできるでしょう』

(ある条件下?)俺は問い返す。

『はい。ここの様な【神の試練】の場のように、神気を強くまとっている場所であれば、世界への大きな干渉を起こせずに、僅かな時間ですが意思の疎通が可能となるでしょう』

(世界への干渉とは、具体的にどんなことが起きるんだ?)

『そうですね…時間や空間の歪みが顕著になったり、自然法則の崩壊、最悪の場合は世界の書き換えに近い事象が発生したりする可能性も否定できません』

(結構、どころじゃなく、やばい話だな(汗))俺は内心で冷や汗をかいた。

『はい。ですので、これが私の方から能動的に干渉するのは最後、ということになります』

(例えば、神気をまとった場所とは他にはどこにあるんだ?)少しでもこの声の主と話せる可能性があるなら、知っておきたい。

『そうですね…。「神々の山脈の頂上」であるとか、「世界樹の秘境」とされるような大森林の奥深くなどでしょうか…。あ! あと、もし貴方の世界のどこかに、私を祭る神殿があるのであれば、そこでも多少の時間、お話ができるかもしれません』

(神殿…? あなたは、やはり神様なのか? それも、かなり高位の…)

俺の問いかけに、声は優しく、そして少し誇らしげに答えた。

『ええ…地上の方々からは、そう呼ばれております。光や繁栄、そして希望を司る、と。私の名は「タレイア」。以後、お見知りおきを』

(タレイア様…光と繁栄の女神…)

ようやく、ずっと俺を導いてくれた声の主の名を知ることができた。

「分かりました、タレイア様。でも、こちらの世界でタレイア様を祭る神殿はあるのでしょうか?」

『ええ。数は多くありませんが、こちらでも私の名と御業を記憶し、祭ってくださる方々の神殿は確かに存在しますので、心配は要りませんよ』

(良かった。では、何かあれば…その神殿で貴女様に会いに行く、ということでいいでしょうか)

『ええ、お待ちしております。…それと、一つお伝えしておかなければならないことが。「負の感情を収集するシステム」の影響と、この【神の試練】にて数多の神獣や強大な存在を打ち破ったことにより、貴方は「神に近し者」となってしまいました』

(神に近し者…?)

『それは、私たち神々に次ぐほどの力をその身に宿し、この世界の根幹、理に関わる存在になったということです。良くも悪くも、世界は貴方の動向を無視できなくなるでしょう。今後も様々な試練が貴方に降りかかる恐れがありますが、以前も言いましたように、貴方の新たな人生が、今度こそ幸多きものであることを、心から願っています』

(ははは…。これも不幸の後遺症、ですかね…。なんだか、とんでもないことになってきたなぁ)俺は乾いた笑いを漏らす。

『クスクス…』タレイアが楽しそうに笑う気配がした。『今の貴方ならば、それすらも乗り越え、新たな道を切り開いていけると信じておりますよ。…そういえば、貴方のお名前は、そちらの世界ではどうされるのですか? 前世の記憶は残っているようですが…』

(名前……確かに、考えもしていなかったな。この世界で、俺はどう名乗るべきなんだろうか…。前世の名をそのまま使うのも、何か違う気がする。新しい人生、新しい始まり…)

俺が黙考していると、タレイアが優しく言葉を続けた。

『新しい世界での、新しい人生です。新しい名前は、貴方の新たな始まりの良き証となるでしょう』

(新しい名前…そうだな。異世界で、全てを失い、本当にゼロから人生をやり直すんだ。俺の新しい名前は…「ーーー」。それが、今の俺にはふさわしい気がする)

心の中で、ある一つの名が浮かんだ。まだそれを声に出すには、何かが足りないような、そんな気がした。


タレイアは、俺が何かを心に定めたことを感じ取ったのだろうか、穏やかな声で言った。

『…何か、心に期するものが見つかったようですね、旅の方。では、これが本当に最後になります。これからの貴方の人生…幸多からんことを!』

その言葉を最後に、目も開けていられないほどの圧倒的な光が俺の全身を包み込んだ。


光が収まった時、俺はどこかの草原に立っていた。

(…ここは? さっきまでの空間じゃない。それに、あの神殿は…?)

周囲を見渡すが、先程までの神々の試練の痕跡も、カオスドラゴンのいた虚無空間の気配もない。ただ、穏やかな風が吹き、柔らかな陽光が降り注ぐ、見慣れない、しかし平和な場所だった。

俺は自分の体を確認する。力はみなぎっている。そして、ステータスは…。


「ステータスオープン」


名前: ゼロ

種族: ヒューマン

レベル: 48

HP: 15600/15600

MP: 10400/10400


【ステータス】

筋力(STR): S

体力(VIT): S

敏捷(DEX): S

知力(INT): S

魔力(MAG): S

幸運(LUK): S


【スキル】

〈無限図書館〉、「無限インベントリ」、「言霊理解ルーン・リーディング」、「氷寒耐性」、「灼熱耐性」、「雷撃耐性」、「烈風耐性」、「流水耐性」、「大地耐性」、「猛毒耐性」、「瘴気耐性」、「暗黒耐性」、「想像力の申しイマジネーション」、「囁きの回廊」、「勇者」、「神に近し者」、「混沌の刻印」


【魔法】

「ファイアーボール」、「フレイムランス」、「インフェルノ」、「ヒール」、「リカバリーフィールド」、「セレスティア・グレイス」、「ライトニングボルト」、「《サンダーストーム》」、「ルミナスジャッジメント」、「アクアショット」、「ヴァイパーストリーム」、「レヴィアタン・ウェイブ」


【称号】

「ゴブリンハンター」、「スライムハンター」、「ウルフスレイヤー」、「神獣殺し」、「スケルトンスレイヤー」、「ゴーストイレイザー」、「ドラゴンスレイヤー」


(名前が…ゼロ…? やはり、あの時心に浮かんだ名はこれだったのか。タレイア様が言っていた、新しい始まりの証…悪くない)

俺は空を仰ぐ。どこまでも青い空が広がっていた。

「ゼロ…か。悪くない」

俺は、新たな名前と共に、この世界での新たな一歩を踏み出す決意を固めた。



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