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第三十階層:白虎神殿、極寒の死闘

(ドラゴンスレイヤー…対竜族宝具か!)

とんでもないものを手に入れてしまった。砕けた〈エクソルシウム〉の悲しみを胸にしまい、今は新たな力、魔剣〈竜殺しの魔剣 - ドラグヴェイン〉を握りしめる。これまでの聖剣とは全く異なる、荒々しくも強力な力を感じる。

俺は新たな鍵〈第三十階層神域への鍵(白虎)〉とこの魔剣を手に、この氷の神殿のさらに奥、第三十階層へと続くであろう道を見据えた。白虎の試練とは、一体どんなものなのだろうか。

消耗した心身を〈ヒール〉とポーションで回復させ、決意を新たにして、フロストドラゴンが守護していた大扉の奥にある、次なる階層への階段へと足を踏み入れた。


階段は短く、すぐに開けた場所に出た。そこは、これまでのどの階層とも異なる、荘厳かつ殺伐とした雰囲気に満ちた空間だった。

見渡す限りの白銀の世界。しかしそれは雪や氷ではなく、磨き上げられた金属のような、あるいは巨大な獣の牙や骨を思わせる白い岩石で構成された大地だった。空は存在せず、代わりに天井全体がオーロラのように揺らめく淡い霊気の光で満たされ、幻想的ながらも肌を刺すような冷気が漂っている。そして、その広大な空間の中央に、まるで玉座のように鎮座する巨大な獣の姿があった。

全長は20メートルを優に超えるだろうか。雪のように白い毛皮は絹のように輝き、その身には黒曜石のような鋭い縞模様が走っている。四肢は大地を力強く掴み、長くしなやかな尾がゆったりと揺れている。そして、その頭部。天を睨む双眸は、冷徹なまでの知性と、万物を射抜くかのような鋭い金色の光を宿していた。

神獣・白虎。西方を守護する天帝の使い。その姿は、美しさと荒々しさ、神聖さと獣性を同時に内包し、見る者を圧倒する。白虎がその姿を完全に現した瞬間、神殿内の空気が一変した。先程までの霊的な冷気とは質の異なる、万物を凍てつかせる絶対零度のオーラが周囲に満ち、床や壁に瞬く間に白い霜が幾何学模様を描きながら広がっていくのが見えた。

俺は息を呑み、鑑定を発動した。ウィンドウが、白虎の頭上に厳かに展開される。


名称: 〈神獣・白虎(Byakko / White Tiger)〉

分類: 神性存在(★★★★★★)

HP: ???/???

MP: ???/???

属性: 氷/金/霊気

弱点: 火属性攻撃(氷結構造を融解させる)、雷属性攻撃(霊気の流れを乱す)、心眼(精神集中を崩す)

行動特性: 氷刃斬、霊気咆哮、金剛壁、虎牙連撃、時空跳躍

備考: 四神の西方を護る天帝の使い。氷と霊気を司り、封印が解かれし時、万象を統べる。「白虎覚醒」により、一時的に全ての属性耐性が大幅強化される。


(またHP計測不能か…! 弱点は火と雷、そして心眼…対ドラゴン用の〈ドラグヴェイン〉は、神獣であるこいつにどれだけ通じるか未知数だが、今の俺の最強の剣だ。それに〈紫電のレイピア〉と魔法を組み合わせるしかない!)

俺が武器を選定している間にも、白虎はこちらを一瞥しただけで、何の予備動作もなく、その場から姿を消した!

(消えた!? 「時空跳躍」か! どこだ!?)

直後、背後から凄まじい殺気! 咄嗟に振り返り様に〈ドラグヴェイン〉で受け止めるが、そのあまりの重圧に腕が軋み、衝撃で数メートル吹き飛ばされる。白虎が、音もなく俺の背後に回り込み、「虎牙連撃」を仕掛けてきたのだ。白銀の巨体が、嵐のような速度で連続して爪と牙を叩きつけてくる。

「ぐっ…速い、そして重い!」

Sランクの敏捷をもってしても、その全てを捌き切るのは至難の業だ。〈月煌の聖銀鎧〉が悲鳴を上げ、火花を散らす。数発が鎧の隙間を縫って肉を裂き、鮮血が舞う。


挿絵(By みてみん)


HP: 9500/11700 | MP: 7000/7800 | 状態: 負傷(軽)


(いきなりこれかよ! この時空跳躍、完全にランダムというわけではなさそうだ。跳躍前後の僅かな霊気の揺らぎ…あるいは奴の視線か? 何かパターンがあるはずだ!)

俺は距離を取りつつ、「ヒール」で傷を癒し、「ファイアーボール」を連射する! 白虎はそれを嘲笑うかのように軽々と避け、あるいは前足の一振りで叩き落とす。そして、大きく息を吸い込んだ。

(ブレスじゃない…「霊気咆哮」か!)

「グオオオオオオオオオオオオオッ!!」

咆哮と同時に、白虎の体から凄まじい霊気が衝撃波となって放たれ、周囲の空気中の水分が一瞬で凍りつき、ダイヤモンドダストのように煌めきながら神殿全体を揺るがす! 俺は咄嗟に耳を塞ぎ、衝撃に備えるが、霊気そのものが精神を直接揺さぶり、視界がぐにゃりと歪み、一瞬平衡感覚を失う。

(これが精神攻撃…!)

体勢を崩した俺目掛けて、白虎は再び「時空跳躍」で距離を詰め、鋭い氷の刃を纏った爪「氷刃斬」を振り下ろしてきた! キラキラと乱反射する氷晶を撒き散らしながら迫るその一撃は、回避不能かと思われた。

「させるか!」

俺は〈紫電のレイピア〉に持ち替え、その一撃を紙一重で受け流し、カウンターで雷撃を叩き込む! バチバチッという音と共に白虎の白い毛皮が焦げ、僅かに動きが鈍る。

(雷は効いてる!)

だが、白虎は怯むことなく、今度は全身の毛を逆立て、その身に金属質の輝きを纏わせ始めた。「金剛壁」! その名の通り、ダイヤモンドダストを凝縮したかのような、絶対的な防御障壁だ。

俺は「ライトニングボルト」を連続で叩き込むが、金剛壁に当たっては紫電を散らすだけで、有効なダメージを与えられない。

(くそっ、あの壁をどうにかしないと…! 火属性なら…!あの氷結構造を融解させるという弱点を信じるしかない!)

「ファイアーボール!」

火属性で一点集中! 金剛壁の一部が赤熱し、僅かに融解するが、すぐに再生してしまう。

(埒が明かない…! 何か、何か手は…!)

白虎は金剛壁を維持したまま、再び「虎牙連撃」で襲い掛かってくる。防御に徹しながらも、俺の思考は高速で回転していた。

(心眼…精神集中を崩す…!)

鑑定結果の弱点の一つが脳裏をよぎる。だが、どうやって?

その時、白虎が「時空跳躍」で俺の背後に回り込もうとした瞬間、俺はあえて防御を解き、全ての意識を白虎の気配、霊気の流れ、そして跳躍先の空間の歪みに集中した。Sランクの知力と「不屈の精神」が、俺の五感と第六感を極限まで研ぎ澄ます。

(ここだ!!)

白虎が実体化するまさにその一点、その瞬間に、俺は精神を集中し、意識の刃とでも言うべき一撃を放った!それは物理的な攻撃ではない。白虎の精神、その一点集中の「核」を狙った、魂のカウンターだった。

「グ…オ……!?」

初めて、白虎の金色の瞳に明確な動揺の色が浮かんだ。時空跳躍の精度が狂い、金剛壁の輝きも一瞬激しく揺らぐ。精神集中が乱れたのだ!

(今しかない!)

俺はその隙を見逃さず、弱点である火と雷の合わせ技を叩き込む! 左手にファイアーボールを凝縮させ、右手の〈紫電のレイピア〉にライトニングボルトの魔力を最大限にチャージする!

「喰らえええええっ!!」

炎と雷が螺旋を描きながら融合し、金剛壁の揺らいだ一点に直撃! ドゴオオオオン!!という凄まじい爆音と共に、ついに金剛壁が砕け散った!

白虎の巨体が大きく後退し、その白い毛皮は焼け焦げ、あちこちから紫電が迸っている。


HP: 4500/11700 | MP: 2200/7800 | 状態: 負傷(重)、火傷(中)、感電(軽微)


(まだだ…! まだ倒せない!)

俺も満身創痍だが、ここで退くわけにはいかない。しかし、白虎は吼えた。天を衝くような、凄絶な咆哮。

「白虎覚醒」!!

その全身から、先程までとは比較にならないほどの純粋な霊気が溢れ出し、傷がみるみるうちに癒え、毛皮はさらに白く、神々しいまでの輝きを放ち始める。全ての属性耐性が大幅に強化され、その金色の瞳はもはや怒りではなく、絶対的な神威を宿していた。

(これが…神獣の真の力か…! 全身が粟立つほどの恐怖と絶望感が襲ってくる。だが…ここで諦めたら、俺の新しい人生は終わりだ!)

絶望的なまでの力の差。〈紫電のレイピア〉の雷も、ファイアーボールの炎も、覚醒した白虎にはほとんど効果がない。攻撃はことごとく弾かれ、あるいは霊気のオーラだけで霧散させられる。

もはや、これまでか…。

脳裏に、あの幸福なキャンプの光景が蘇る。父さんの不器用な笑顔、母さんの優しい眼差し。

(いや…まだだ! 俺は、まだ何も成し遂げていない!)

俺は最後の力を振り絞り、無限インベントリからありったけの魔石と霊力結晶を取り出し、そして、先程フロストドラゴンから得たばかりの魔剣〈竜殺しの魔剣 - ドラグヴェイン〉を再び強く握りしめた! この剣の真価は未知数だが、今の俺にはこれしかない!

(これは賭けだ…! 俺の全てを、この一撃に!)

魔剣ドラグヴェインが、俺の闘気に呼応するかのように禍々しいオーラを放つ。白虎の覚醒した霊気と、ドラグヴェインの竜の怨念がぶつかり合い、空間が激しく歪む!

「おおおおおおおおおおおおおおっっ!!」

全てのスキル、全ての経験、全ての想いを込めて、俺は白虎の眉間目掛けて〈ドラグヴェイン〉を突き出した!

白虎もまた、最後の力を振り絞り、極大の氷塊と霊気を凝縮させた「終末の氷牙」を放つ!

禍々しい剣閃と絶対零度の氷牙が激突し、空間そのものが悲鳴を上げるかのような衝撃波が神殿全体を揺るがす!

一瞬、意識が白む。


どれほどの時間が経ったのか。

俺が気が付いた時、目の前には力なく横たわる白虎の亡骸があった。その神々しいまでの毛皮は色褪せ、金色の瞳からは光が失われている。そして俺の右手には、刀身から黒い気を放つ〈ドラグヴェイン〉が握られていた。

「勝った…のか…」

激しい消耗感と共に、それでも戦い抜いたという万感の思いが胸を締め付ける。


『レベルが上がりました』


名前: (前世の名前)

種族: ヒューマン

レベル: 32 → 35

HP: 11700/11700 (全快)

MP: 7800/7800 (全快)


【ステータス】

筋力(STR): S

体力(VIT): S

敏捷(DEX): S

知力(INT): S

魔力(MAG): S

幸運(LUK): S


【スキル】

「鑑定」、「無限インベントリ」、「言霊理解ルーン・リーディング」、「氷寒耐性」


【魔法】

「ファイアーボール」、「ヒール」、「ライトニングボルト」


【称号】 「ゴブリンハンター」、「スライムハンター」、「ウルフスレイヤー」、「神獣殺し」(玄武、青龍、白虎討伐により効果大幅深化)、「スケルトンスレイヤー」、「ゴーストイレイザー」、「リッチスレイヤー」、「ドラゴンスレイヤー」


(レベルが一気に3つも上がった…本当に、死闘だった…)

白虎の亡骸が光の粒子となって消えていくと、その場には荘厳な宝箱が一つ、静かに現れた。そして、その傍らには一枚の羊皮紙がひらりと舞い落ちた。

俺はまず羊皮紙を拾い上げる。


名称: 〈四神の試練・朱雀への道標〉

分類: 特殊キーアイテム(★★★★★)

備考: 神獣・朱雀が守護する第三十一階層への扉を開くための鍵。白虎の魂によって封印が解かれた。


「朱雀…南方を守護する炎の神鳥か。確か、古い伝承では再生と破壊を司る、最も気性の激しい神獣だったはずだ…次も一筋縄ではいかないな」

そして、宝箱を開ける。中には、まばゆいばかりの光を放つ一本の剣が収められていた。それは、これまでのどの剣とも違う、圧倒的なまでの神聖さと力を感じさせる剣だった。


名称: 〈聖剣・エクスカリバー〉

分類: 聖剣/伝説の武器(★★★★★)

攻撃力: 物理攻撃+280、聖属性攻撃+200

特殊効果:


絶対破邪: 魔族、アンデッド、その他邪悪なる存在に対し、攻撃力が大幅に上昇する。

王者の威光: 装備時、所有者の精神力を高め、恐怖や混乱などの精神攻撃に対する耐性を付与する。周囲の味方の士気を高める。

聖光爆裂斬: 聖なる力を極限まで高め、前方広範囲を浄化の光で薙ぎ払う必殺剣。(MP消費:300) 備考: 伝説に謳われる、選ばれし王が振るったとされる聖剣。あらゆる邪を切り裂き、正しき道を示す光を放つ。所有者の資質と成長に応じてさらなる力を解放するとも言われる。


「聖剣…エクスカリバー…!」

その名を聞いただけで、前世の記憶から様々な物語が蘇ってくる。まさか、そんな伝説の剣をこの手にする日が来るとは。

(これも、幸運(LUK):Sのおかげ、なのか…? それにしても、出来すぎている。だが、今の俺にはこれ以上ない力だ)

俺はエクスカリバーを鞘に納め(鞘もまた神々しい作りだった)、朱雀への道標を懐にしまい、深く息を吐き出した。休む間もなく、次なる試練が待っている。だが、今の俺には、絶望はない。ただ、進むだけだ。



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