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目覚めの森とALL-Sの証明

目の前が真っ白になり、意識が遠のく感覚。しかし、それは本当に一瞬のことだった。


次に意識がはっきりした時、最初に感じたのは背中に当たる柔らかな土と草の感触。

次に、湿った土と濃い緑の匂い、すぐ近くで響く小鳥のさえずり、そして木々の葉が風にそよぐ音。

微かに、どこかから水の流れる音も聞こえる気がする。風が頬を撫で、知らない花の甘い香りを運んできた。


ゆっくりと目を開けると、視界に飛び込んできたのは、緑の葉の隙間から降り注ぐ木漏れ日。

見上げれば、青々とした葉が生い茂る木々の枝が空を覆っている。どうやら、俺は森の中にいるらしい。


(……転生、したのか)


体を起こしてみる。信じられないほど体が軽い。かつての人生では、起き上がるだけで億劫で、少し動けば息が切れ、全身に鈍い痛みが走ったというのに。今はどうだ? 全く疲労感がない。

立ち上がり、その場で軽く屈伸し、腕を回してみる。指先に力を込めると、内側から力がみなぎってくるのがはっきりと分かった。

これが、願った「丈夫な体」…! 病に蝕まれ続けた過去が、遠い悪夢のように感じられる。

嬉しくて、思わず地面を蹴って軽く跳躍してみた。ふわり、と予想以上に高く体が浮く。本気を出せば、木の枝にだって届きそうだ。


(記憶も…うん、ちゃんと残ってるな)


あの白い空間での声との対話。呪いとしか思えなかった人生の真相。そして、この新しい体と機会を与えてくれた、いくつかの願い。全て鮮明に覚えている。この記憶があるからこそ、俺は前に進める。


(そうだ、不屈の精神…)


以前の俺なら、見知らぬ森にたった一人で目覚めたら、間違いなく絶望し、動けなくなっていただろう。

「どうせまた悪いことが起きる」と。だが、今の俺は違う。不思議なほど心は凪いでおり、状況を把握し、

次の一手を考えようとしている。これも願いの効果か。長年、不幸に打ちのめされて染み付いた諦念の代わりに、確かな意志の力が宿っているのを感じる。


(…本当に? これで、本当に大丈夫なのか…?)


一瞬、心の隅に小さな疑念がよぎる。あまりにも都合が良すぎる状況。これまでの人生で、希望は常に裏切られてきた。この力も、この決意も、また何かの間違いで、すぐに失われるのではないか…? いや、今は信じよう。信じて、進むしかないんだ。


(そして、あれだ…例のやつ)


気を取り直し、俺は意識を集中して念じた。

「ステータス」


すると、目の前の空間が軽く揺らぎ、淡い青白い光の縁取りを持つ半透明のウィンドウが、音もなくすっと現れた。他の誰にも見えない、俺だけの情報パネルだ。


名前: (前世の名前)

種族: ヒューマン

レベル: 1

HP: 1500/1500

MP: 1000/1000


【ステータス】

筋力(STR): S

体力(VIT): S

敏捷(DEX): S

知力(INT): S

魔力(MAG): S

幸運(LUK): S


【スキル】

なし


【称号】 なし

(うおおっ……! 本物だ、本当にALL-Sだ!)


ウィンドウに浮かび上がる、圧倒的な文字列。声は約束を果たしてくれた。

レベル1とは思えない破格のステータス。HPやMPも桁違いだ。これなら、このファンタジー世界でも十分にやっていけるはずだ。

幸運(LUK)までSなのは、前世の壮絶な不運に対する揺り戻しか、それとも皮肉か。

どちらにせよ、ありがたい限りだ。スキルや称号の欄が空なのは、これから自分で獲得していくもの、ということだろう。


「よしっ!」


パン、と両手を打ち合わせ、気合を入れる。

体は万全。記憶もある。心も、さっき一瞬揺らいだが、すぐに立て直せた。そして、この最強のステータス。


(あの声は言った。「あなたの好きに生きなさい」と)


前回の人生では、不幸と病によって、何もかもを諦めさせられた。だが、今回は違う。この溢れる力があれば、なんだってできるはずだ。自分の意志で、自分の人生を切り開ける。


まずは、この森がどんな場所なのか把握しないと始まらない。人里を見つけるのが当面の目標だ。

幸い、この規格外のステータスのおかげか、空腹も疲労も全く感じない。これなら長時間動けそうだ。


新たな世界、新たな体、新たな人生。

「不幸吸引体質」だった過去とは決別する。与えられたこの最高のチャンスを最大限に生かして、今度こそ、誰にも邪魔されず、自由に、幸せに生きてやる。


強い決意を胸に、俺は森の奥へと続く、かすかな獣道と思しき方向へ、力強い第一歩を踏み出した。



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