94話目
私は素早く穴を掘り、そこへユカリさんを入れる。ユカリさんはしおれてしまっているからか、軽く、大きさも半分ほどになっている。土をかぶせ、両手を合わせて冥福を祈る。ユカリさん本人じゃないけど、声を聴いてしまったら感情移入してしまった。
「・・・・・・お待たせしました、終わりました」
「別に急ぐわけじゃないから構わないぞ。疲れていないなら、今からでも移動するか? それとも、研究所で休むか?」
「あっ、私休みたい!」
「私は平気です。さあ、神奈川へ向かいましょう」
「ガーン!?」
リナさんは休みたいようだけど、私は全く疲れてないし、見たところアオイさんも疲れてなさそうだ。急いではいないけれど、目的地が設定されていると、すぐに向かいたくなるのは何故でしょうね?
私たちは、うつむいて元気が無いですアピールをしているリナさんを真ん中に据えて歩く。別にリサさんが逃亡しそうだからというわけじゃなく、視力のいいアオイさんを先頭にして、耳のいい私が後ろからの奇襲を防ぐ方が理にかなっているからだ。
「お腹すいた・・・。ねぇ、あなた達は何か食べないの?」
「私達は腹が空かないし、睡眠も必要のない体だ。だから、食料など持っていないぞ?」
「えっ、なにそれズルい。とりあえず、私はお腹が空いたんだけど・・・」
「仕方ないですね。その辺の民家に保存食とかないか探してみましょうか」
「あっ、それならついでに服も探す。今はわざわざぼろい服を着る必要は無いし」
「それは自由にしてください。それじゃあ、探すのはアパートとかのほうがいいですかね? 探しやすそうです」
「正直、どの家が保存食を置いているかなど分からないからな。部屋数の多いアパートを探す方が効率はいいかもしれないな」
私たちは、近くのアパートを一階から順番に調べていく。ほとんどの部屋には、保存食どころかほとんど何も置いてなかった。避難するときに自分たちで持ち出したのだろう。それでも、いくつかは缶詰が見つかった。災害用の缶詰で、普通の缶詰よりも保存期間が長そうなやつが玄関付近に置いてあったのだ。おそらく、この家の人はここへ一度も戻ってこなかったのだと思う。
屋上で、別々に探していて見つけたものを持ち寄る。アオイさんと私は主に缶詰で、リナさんは缶詰といくつかのワンピースを持ってきていた。
「じゃあ、私だけいただいてもいい?」
「ああ。私たちは要らないからな。ついでだから、ここから街の方角を確認しておくか」
アオイさんは、屋上から神奈川方面を確認する。リナさんは、缶詰を開けてさっそく食べていた。保存食であっても賞味期限は切れているものがあるので、あんまりおいしそうに食べていないけど、再生に体力を使ったから食べざるを得ないんだろうなぁ。




