93話目
アオイさんは、間違いが無いようにか、ゆっくりとだけど隅々まできちんと検査しているみたい。そのおかげで、私も落ち着くことができた。
「カエデ、やはりこのユカリ君は本物ではない。あの花の根っ子で出来ているようだ。どうやら、ユカリ君は能力で自身の分身を作り出せるようだ。それが囮にするためなのか、他に目的があるのかは分からないがな」
「でも、ほんの少しとはいえ話していましたよね? そんな知能が花にあるんですか?」
「あれは単純に、近くで拾った音声を復唱しているだけに過ぎない。実際、このユカリ君には脳の様なものはなく、再生するのもあくまでナノマシンが行っているだけで、自意識があるわけじゃない」
「そうですか・・・」
結果を聞いたので、ちらりとリナちゃんを見ると、リナちゃんもこちらを見ていたようで、ビクッとして視線を逸らした。
「・・・さっきは、すみませんでした。頭に血が上って、自分を抑えられませんでした」
「い、いや、私も考えなしに行動してしまって、ごめんなさい」
「それにしても、カエデの力はすごいな。あれを受けたのがもし私だったら、恐らく最初の一撃が致命傷となって死んでいたかもしれんぞ。再生能力の高い爬虫類のリナだから生きていられたのだろうな」
「えっ、そんなに危険でしたか? 本当にすみませんでした・・・」
「ま、まあ、私も本当に死ぬかと思ったけれど、ちゃんと生きてるし、いいよ。でも、2度目は勘弁してほしいけど・・・」
お互いに謝り、一応わだかまりは少し減ったと思う。もし逆の立場なら、私だったら簡単に許せないと思うから。でも、今は謝る以上の事は出来ないから、精一杯頭を下げて謝る。
「ごめんなさい・・・」
「もういいよ。それより、神奈川に行くんでしょ? 私も力の限り味方するから、元気出して行こう? ね?」
リナちゃんはやっぱり大人だ。泣きそうな私の頭をなでて元気づけてくれる。これからはリナさんと呼ぼう。
「リナさん・・・ありがとうございます」
「あっ、呼び方変えるんだ? まあ、見た目は私のほうが年下に見えるから、ちゃん付けでもいいんだけどね」
「いいえ、私はリナさんを大人だと思ったので、リナさんと呼びます」
「まあ、好きにしていいよ」(けど、あくまで下の名前で呼ぶのよね・・・? これでも結構年上だと思うんだけど)
私は、しおれてしまったユカリさんのほうを見る。アオイさんは根っ子だと言っていたけど、見た目は本当にユカリさんに見える。
「そのユカリさんはどうするんですか?」
「別にどうもしないが、逆にどうしたいんだ?」
「このまま放置するのは気持ち的にできないので、せめて埋めようかと思うんですけどいいですか?」
「別に構わんぞ」
アオイさんから許可をもらったので、敷地の隅の方に穴を掘り、ユカリさんを埋めた。私の力があれば、穴なんてあっという間に掘れるから、時間はまったくかからなかった。




