89話目
「あっ、分かったわ! あなた達、私の声が聞こえる場所を狙っているでしょ!」
「やっと気が付いたのか?」
「だったら、話さなければ私の勝ちね」
リナちゃんはどうやら声で居場所がばれていたと気が付いたようで、話すのをやめてしまった。けれど、地面の様子を見ているアオイさんにも、移動時に発生する足音でも場所が分かる私にも、あまり意味のある対策ではなかったけど。
実際、リナちゃんが話さなくなってもアオイさんは的確にリナちゃんが居る方へ攻撃しているし、私もそのサポートの攻撃をしている。
「くっ、あなた達、実は私の姿見えてるでしょ! だったら、もう擬態に力を使うのはやめた!」
リナちゃんは姿を現した。本当は私たちにリナちゃんの姿は見えていないから、それなりに効果はあったと思うんだけど、本人がそう思ってないみたいなら仕方ないよね。
「私達を狙うのをやめてもらえれば、私としては戦う理由が無くなるのだがな?」
「それは無いって。私の仕事はあなた達を処刑する事なんだから!」
「それは違うだろう? お前の仕事はマリアの邪魔をする者を排除することだ。私たちは別にマリアの邪魔はしない。つまり、お前は私たちと戦う必要は無いだろう?」
「え? うーん、そうなのかな?」
リナちゃんは、それほど頭が良くないのかアオイさんのごまかしを信用しようとしているように見える。実際はマリアさんのいうことを忠実にこなすなら、有無を言わさず私たちを排除するのが正解な気がするし。
「私たちは別に敵対していない。だから、おまえはもう帰ったらどうだ?」
「ちょ、ちょっと待って! 考えるから!」
リナちゃんは攻撃の手を止め、腕を組んで考え始めた。私たちが完全に敵対していたなら、ものすごい隙をさらしていることに気が付いているのだろうか? それとも、攻撃を誘っている?
「考えたけど、よくわかんないからあなた達をとりあえず捕まえることにするわ。殺すのは、マリア様に聞いてからにする」
リナちゃんは、妥協点として私たちの捕縛に決めたようだ。けど、それは私たちに勝てる前提の話だと思うんだけど、さっきまでの劣勢を忘れたんだろうか?
「捕まるわけにはいかないから、抵抗させてもらう」
「それじゃあとりあえず、弱いほうから行くわ」
「え」
リナちゃんはそういうと、私のほうを向く。リナちゃんの中では私のほうがアオイさんより弱いと判断したようだ。実際は、アオイさんが言うには、私の頑丈さと怪力は戦闘に関してはアオイさんより上だという話だったけど。私はサポートしかしてないから弱いと判断されたみたい。それに実際、戦闘経験はほとんどないから、まともに戦ったらやっぱりアオイさんより私のほうが弱いかもしれない。
「カエデ!」
アオイさんが叫んだ時には、私はすでに何かの衝撃を受けて十数メートルは弾き飛ばされた後だった。
「な、なにが・・・?」
「え。なんでこれで生きてるのよ。普通の人間なら、胴体貫通しててもおかしくないのに」
「だから、私たちは普通の人間じゃ・・・いてて。アオイさん、私、一体、何をされたんですか?」
私は思ったよりもダメージを受けて、痛みを感じていた。ナノマシンが修復してくれたのか、すぐに痛みは引いたけれど、つかえながらアオイさんに聞く。
「舌を高速で伸ばしたんだ。おそらく、弾丸並みの速度だ」
「え。私の舌が見えてたっていうの・・・? 一体、あなた達は何者なの!」
今更ながら私たちに驚くリナちゃんを見て、攻撃されたけど怒る気にならなかった。




