9話目
カエデは未可子と別れた後、トサッとベッドに倒れ込む。こんなにふわふわな掛布団は初めてだ。
「私、これからどうなるんだろう・・・」
カエデは天井を見ながら、これからどうなるのか不安になる。戻る家は無い。頼る親や親戚はいない。父親の祖父母は居ないし、母親の方も同じだ。しばらくはここで暮らせるかもしれないが、そもそもここで何をされるのか。
まずはシャワーでも浴びようと、浴室へ向かおうと立ち上がろうとしたところでドアをノックする音が響いた。
「ねぇー、起きてるー?」
「はーい」
知らない声だが、一体誰だろうか。壁にかけてある時計を見ると、すでに23時を回っている。まあ、食事を摂ったばかりだからまだ寝ないが、こんな時間に来訪者が来るなんて思わなかった。施設の中に不審者が居るとは思えないので、とりあえず大丈夫だろうとドアのカギを開ける。
「よっ、あんたが新しい人ね? ね、中に入れてよ」
「は、はぁ・・・」
ドアの前に居たのは、20代くらいの女性だった。検査衣を着ているので同じ治験者だろうとあたりをつける。それならば、カエデとしても話を聞きたいので中へ招き入れる事にした。
「どうぞ」
「お邪魔しまーす」
女性は、自分の部屋のように慣れているのか、壁と一体化しているテーブルを引き出し、冷蔵庫の中から飲み物を取り出す。
「あんたも何か飲む?」
「あっ、はい。お願いします」
「そんじゃ、これでいい?」
女性はミネラルウォーターをカエデに渡す。もう夜も遅いのでこれが一番いいと判断したようだ。その割に、女性はビールを取り出していたが。女性はすでに酔っているようだし。この部屋は、誰が入ってもいいようにアルコール類も用意されているようだ。
「私は本渡楓と言います。えっと、あなたは?」
「あたし? あたしは高垣彩陽。アヤヒって呼んでいいよ」
「分かりました。よろしくお願いします、アヤヒさん。それで、ご用件はなんでしょう?」
「部屋で飲んでたら、外で音がしたから、新しい人が来たなら挨拶しとこうかなーって。大人なら飲みニケーションでもどうかって思ったけど、あんたはどう見ても子供だからビールは無しね」
「はい。私はまだ12歳なので」
アヤヒは一口ビールを飲むと、眉を寄せる。
「12歳って、まだ本当に子供じゃないの。どうしてここに?」
「それは・・・」
カエデはかいつまんでアヤヒにいきさつを話す。と言っても、自分でも詳しく知らないので本当にほんの少しだが。
「アヤヒさんはどうしてここに?」
「あたしは借金があんだよねー。それを返すのにお金が要るのよ」
カエデと違い、アヤヒは自分で志願した様だ。
「アヤヒさんは、ここにどれくらい居るんですか?」
「あたしはまだ数日だよ。ビジネスホテル暮らしみたいな感じだけど、悪くは無いね。食事は何でも食べられるし、今のところ検査しかされてないし。あたしよりも先に来てる人たちも居るから、そのうち会えると思うよ。まぁ、まだあたしも会ったこと無いけど」
「アヤヒさんも会った事が無いんですか?」
「無いよ。ずっと部屋で飲んでたらからねー」
どうやら、アヤヒは部屋で酒浸りだったようだ。カエデは、アヤヒの事を頼っていいのかどうか迷う。しかし、こうやって知り合ったのだから仲よくしようと考えた。




