85話目
「えっと、何をしているんですか?」
「ん? じっくり見ているんだ。ほら、私の特徴は視力がいいということだろう? だから、それを自分の意志で強化してみたんだ。するとどうだ、顕微鏡の様に見えるようになった」
「本当ですか!? それはすごいですね・・・」
しばらくアオイさんは髪の毛を見つめた後、私たちのほうへと向いた。
「やはり、この血液は単純にXY染色体のうち、Xに対してだけ反応するようだ。つまり、男にとってはナノマシンの効果が半分だな。そしてこれは中途半端に対応しようとして、女性に対しても効果が薄そうだ」
「では、仮に成功しても役に立たないかもしれないということですか?」
「そうなるな。残念だが、あきらめて―――いや、もう一つあるにはあるか」
「本当ですか!」
「そんなのありましたか?」
「アヤヒ君の血液があれば2つだったのだが、ユカリ君のナノマシンを試すことはできるだろう」
「ユカリさん、ですか・・・」
研究所近くに居たユカリさんは、無事ならまだ居るはず。でも、私は実験の様なものにユカリさんを巻き込むのはあまりいい気がしなかった。けれど、リナちゃんは何としても、それこそ命を懸けてでも試したいという。
「とりあえず、連れて行くだけ連れていくか。どちらにしろ、一度試してみないと分からないからな。それでダメだったら諦める。それでいいなら連れていくが」
「はい。大丈夫です。そこまででダメでしたら、あきらめて死にます」
「いや、死ぬ必要はないと思うが」
「いえ、戻れば食われるだけですし、一緒に行けないならどちらにしろ死ぬと思いますし」
「それはそうだが・・・」
「とりあえず、やれることをやってみましょう。それでだめなら、神奈川までは何とか連れて行ってあげましょうよ」
「本当ですか! お願いします!」
リナちゃんはよほどうれしかったのか、私に抱き着いてきた。けれど、私の体は固く、柱に抱き着いたような感触に、すぐに離れた。
「とりあえず、私たちが護衛しながら歩きましょう」
「そうだな。野犬やさっきみたいな不審者が居るかもしれないからな」
私たちは、安全を確保しながらユカリさんのもとへ戻ることにしました。




