84話目
「あの! 私も連れて行ってくれませんか!」
草むらから、小学校の低学年くらいの少女がそういいながら飛び出してきた。
「えっと、君は誰なのかな?」
「あ、まずは自己紹介ですよね。私は日高里菜と言います」(CVイメージ 豊臣ヒデヨシ)
「私は本渡楓だよ」
「私は悠木碧だ。君は何故こんなところに居るのだ?」
「私、あの男の人に食べられるところだったの。けれど、あなた達が倒してくれたから助かりました。でも、もう街へは戻りたくありません。何でもします、一緒に連れて行ってください!」
どうやらこの子はあの幼女趣味の男に連れてこられたようだ。言い方から、どうやらこの子はあの男の食料になるところだったみたいだ。私たちは知らずに少女の命を救ったみたい。
「ふむ・・・私たちは神奈川へ向かうところだが、君の目的地はどこだ?」
「あの街じゃなければどこでもいいです。家族はすでに殺され、私もいつ食料になるか分かりません。何かあった時の囮でもいいですから連れて行ってください!」
「そう言われても・・・」
私たちにはこの子を気にかけてあげられるような余裕はない。私とアオイさんは食事も睡眠もいらないから簡単に旅ができているけれど、この子はそういうわけにはいかないだろう。食料を探さないといけないし、夜も寝なければならない。それだけでも、私たちにとって足手まといにしかならないのだ。
「見ていたのなら分かると思うが、私たちは普通の人間じゃないぞ。それこそ、あの男と同じ使徒と言われる存在だ」
「はい、わかっています。―――だったら、私も使徒にしてください! 使徒化の方法は知っています。使徒様の血肉を体内に取り入れる事ですよね」
「正確には、ナノマシンを取り込むことだな。だが、誰にでもナノマシンは馴染むものじゃない」
「失敗した時のリスクも知っています。けど、そうしないと連れて行ってもらえないのなら、どうせ死ぬだけですし、試すだけ試します」
「無駄死にするだけだと思うが・・・。―――少し試してみるか。髪の毛を少し貰ってもいいか?」
「はい、大丈夫です。どうぞ」
リナちゃんは頭をアオイさんのほうへと差し出す。アオイさんは、ハサミで少しだけ髪の毛を切り取った。
「まずは、私の血液を試してみよう」
アオイさんは指をカッターで軽く切った。指の傷はすぐに再生するので、リナちゃんの髪の毛へ素早く押し付ける。すると、リナちゃんの髪の毛はボコボコと破裂して粉々になった。
「私と繋がりは無しか。次はカエデだな」
「私の場合は、カッターじゃ切れそうにないので・・・ぐっ」
私は思い切り自分の唇を噛む。噛んだ場所を指でこすると、少しだけ血が付いた。これをリナちゃんの髪の毛へ押し付ける。けれど、結果はアオイさんの時といっしょで破裂して粉々になった。
「どうやら、私たちのナノマシンでは君を使徒とすることはできないようだ。あきらめるんだな」
「いえ、まだもう一種類ありますよね? 私、見ていました。アオイちゃんが男の人の血を取るところを」
リナちゃんは、アオイさんを同じ年くらいだと判断したのか、ちゃん付けで呼んでる・・・。アオイさんは気にしていないのか、特に訂正しないけど、いいのかな。
「これは、私もどう作用するか分からないぞ。まあ、試すだけ試してやろう」
アオイさんは注射器から一滴、リナちゃんの髪へと血液を落とす。結果は、破裂して粉々にはならなかったけれど、ボコボコしている。これが適用しているのかどうか私には分からない。
「私たちの血液よりはマシだが、恐らく成功はしないだろうな」
「構いません。どうせ長く生きられないのなら、今死んでも一緒ですから」
「・・・その年で死ぬ覚悟があるというのか・・・。少し待て」
アオイさんは、ボコボコしているリナちゃんの髪の毛を拾うと、じっと見つめた。




