82話目
「ここから一番近い大都市は神奈川だな」
「さっそく向かいますか?」
「そうだな。幸い、私たちには準備はほとんど必要ないからな」
食料が要らないため、持ち物は衣服と道具くらいなため、移動に困ることはない。もし、必要なものがあればコンビニや空き家で探すという手もあるし。
「それにしても、広い畑ですね」
「そうだな。東京はやはり人口が多いのだろう」
私たちは、会話をしながら神奈川方面へゆっくりと歩いていた。急ぐ旅であれば走るんだけど、会話しながらなので歩いていたのがいけなかったのかもしれない。私は、ひそかに接近されていた事に気が付かなかったのだ。
「俺好みの子はっけーん。要らないほうはとりあえず死んでおけ」
そう男の声が聞こえた瞬間、パンッと乾いた破裂音が響き、私の頭部に衝撃が走った。
「痛っ、一体、何が――」
「あれ? 頭蓋骨で銃弾が滑ったか?」
私が振り向いたとき、数メートル先に陰湿そうな男が立っていた。そして、その手には拳銃が握られていた。本物を見たのは初めてだけど、もしかしなくても私、撃たれた?
「じゃあ、今度はきちんと狙うわ」
「ぎゃっ! うぐぅぅぅ!」
パンパンッと2連続で音がして、私の右目に激痛が走る。もう一発は腕に当たったけど、そんなに痛くない。アイラさんに攻撃された時でもほとんど痛みを感じなかったのに、眼球という体の中でも柔らかい部分を的確に撃ち抜かれ、体内へのダメージとなった。
「カエデ! こいつ、敵か!」
「おっ、やっぱり俺好みだ。おい、白衣の女。俺が遊んでやるからついてこい」
アオイさんの見た目は小学生くらいなのに・・・。この男は、どうやら幼児趣味みたいだ!
「ついていくわけないだろう? お前は私が殺す」
「まあ、逆らうのは想定内だ。俺の特別な左腕が―――」
「シッ!」
男が話し終わる前に、アオイさんはいつの間にか持っていたカッターを投げた。
「いきなり攻撃―――」
「どこを見ている? そんなにずっと投擲物を見ているから、こうして隙ができるんだ」
アオイさんは、カッターを囮にして男の後ろに回り込み、逆手に持ったハサミを男の首へと刺した。
「くぞっ、ごんな見た目で使者だったのがよ!」
「さすがにこの程度では死なないか。だが、お前は確実に私が殺す」
アオイさんはそういうと、白衣のポケットからいくつもの刃物を取り出し、男の関節へと刺していく。再生しようにも、異物が入ったままでは再生しきれないのは、以前のおじさんで実証済みだ。
「これはおもちゃじゃなくて本物か。残弾はすべてお前にくれてやる」
「や、やめ゛―――」
アオイさんは男から拳銃を奪うと、心臓付近にパンパンと2発撃ちこんだ。しかし、心臓を撃たれても致命傷にはならなかったようで、男は生きていた。
「装填数が5発か。これは警察の標準装備だな。まあ、警視庁が本拠地なんだ、拳銃くらいあるか。弾は製造できていないだろうから、貴重品のはずだと思うが、こんな下っ端に使わせるとは」
「お、俺はランク2、エリート、だ」
「時間をかけるとさすがに再生するか。まあ、できるだけ苦しんで死ぬようにしてやるからな。カエデ、ここからは見ないほうがいい。こいつの首をゆっくりと切り落とすからな」
「なっ、やめろ!」
アオイさんはそういうと、男の胸に腰を下ろし、小型ののこぎりの様なものを取り出した。私は、本当にやるんだと思い、慌てて後ろを向いた。それから、男の水気を含んだ悲鳴が響き渡った。




