77話目
「まさか、本当に自分の意思で体を変化させるなど!」
アオイさんが驚いている間にも、アイラさんの体の変化が続く。顔が爬虫類の様に変化し、手足が少し伸びる。友達が話していた、リザードマンというやつみたい。まあ、女性の場合もそれでいいのかどうか分からないけど。リザードウーマン?
アイラさんは尻尾で地面を叩くと、首をゴキゴキと鳴っては無いけど動かす。
「久々の変化はやっぱり変な感じがするわね」
長い舌を出し入れし、自分の体の具合を確かめているようだ。今なら逃げられるんじゃ?
「アオイさん、行きましょう!」
「ダメよ」
ドアの前を、アイラさんの長い尻尾が塞ぐ。
「力づくで通るしか無いか」
アオイさんはポケットからカッターとハサミを取り出す。
「子供がそんな刃物を持ってはだめじゃない。あなたの事を殺せとは言われて無いけど、私の邪魔をするのなら殺すわよ?」
「カエデに危害を加えるのなら、私に危害を加えるのと同等だ。抵抗させて貰う」
アオイさんは、ハサミの刃の部分を握り、アイラさんへ向かう。私も、少しでもアイラさんの気を引くためにアオイさんと逆方向へ走る。
「囮にして逃げようっていうわけ? だけど残念ね。私の最優先はあなたよ、本渡楓!」
アイラさんは完全に私を敵とみなし、私を優先的に排除するよう行動するみたいだ。長い尻尾を、私に叩きつけてくる。尻尾は鞭の様に早く、私は回避できずに叩きつけられ、衝撃で壁にぶつかる。
「カエデ!」
「大丈夫です!」
私の体は頑丈なので、このぐらいの攻撃では全くダメージは無い。ぶつかった壁の方はひびが入っているけど。
「ふーん、やはり普通の人間じゃ無いようね。普通の人間なら、今ので壁のシミになっているわ」
「こ、怖い事言わないでください!」
それが本当なら、今の攻撃は普通の人間が即死するほどの威力だったという事だ。でも、私にはノーダメージ。
「本当に私を無視するとはな!」
アオイさんは、完全に私にしか注意を向けていないアイラさんの背中にハサミを突き立て、腕をカッターで斬りつける。
「無駄、無駄よ。そんな攻撃じゃ私を殺す事なんて出来ないわよ。私の特徴は、驚異的な再生能力なんだから」
実際にアイラさんの傷は、直ぐに再生した。
「そういう事なら、カエデ、遠慮はいらん。全力で殴ってやれ」
「分かりました!」
「ん? ターゲットの方から向かって来てくれるとはな。絞め殺してやる」
アイラさんは、長い尻尾を私に巻き付けて締め上げてくる。けれど、私は全然苦しくない。
「んんっ、こんな、もの!」
私は、尻尾を掴んで引きちぎる。噴き出した血の色は緑色だった。人間の足一本分くらいの体積を引きちぎったはずだけど、アイラさんは何の事も無いように再生した。
「驚いた。あなたの能力は硬い皮膚だと思ったけれど、まさか怪力まであるなんて」
「お前こそ、その再生能力の高さは何だ? 普通なら、再生にエネルギーを使いすぎて死ぬはずだが」
「そんなの、ランク1の出来損ないの話でしょう? そんなのと私を一緒にしないで頂戴」
どうやら、アイラさんは普通ではないようだ。分かってたことだけど。今思うと、最初に見たユカリさんも腕をまるまる再生していたけど、少し萎れただけで死にはしなかった。ユカリさんが特別何だと思ってたけど、そういう意味ではアイラさんも特別なんだろう。




