74話目
「別におかしなことじゃ無いだろう? 肉食である神の使徒には肉が必要だ。けれど、今の日本の畜産業は壊滅していて肉が手に入らない。だから、人を食うんだ」
「で、でも、別に人じゃなくてもいいですよね・・・? せめて、犬とか、猫とか・・・」
「人が一番楽なんだよ。それに、ハズレはどうせ何の役にも立たない。だから、数年とはいえ生きていられるだけ幸せじゃ無いかな」
お兄さんの考えが私には理解できない。将来食べる家畜の様な扱い。お兄さんは、明らかにハズレの人たちを人間扱いしていない。たった10年で、こんなにも考え方が変わるのだろうか。それとも、これも体が変化した影響なのだろうか。私自身、あれほど食に対する執着があったのが今は無いという事を考えると、影響は大きいかもしれない。
「そうそう、俺達は神の使徒だって言ったけど、真の神の使徒様には序列があるんだ。第一使徒様から第十二使徒様までの12人で、ここに居られるのは第三使徒様だ。あくまで、使徒となった順番だから、序列がそのまま強さじゃ無いんだけど、真の使徒様は全員ランク4で強いから、絶対に逆らわない方が良いよ」
「分かりました・・・」
私はごくりとつばを飲みこむ。一体、どのくらい強いんだろうか。戦う予定はないけれど、私達に親切にしてくれるかどうかは分からない。万が一、戦いになった場合でも逃げられる余裕があればいいんだけど。
「そろそろ着くよ。ここでちょっと待っててもらえるかな? 先に話をしてくるから」
「はい、分かりました」
お兄さんは私達を建物の前に待機させ、自分だけ中へ入っていった。この大きな建物は元々は警視庁の様だ。
「アオイさん、このまま会うのは危険すぎませんか?」
「だが、貴重な情報源だ。真の神の使徒とやらが敵なのか味方なのかも分からんが、もしマリアが絡んでいるのなら恐らく敵となるだろう」
「私達の事、バレていませんよね?」
「どうだろうな。少なくとも、写真などは無いはずだ。私は見た目が変わっているし、カエデはすでに死んだものと思われているはずだしな」
「じゃあ、うまく情報を得ることが出来たら逃げますか?」
「ふむ。それがいいだろう。私はてっきり、ハズレとなった人たちを救いたいとか言い出すかと思ったが」
「さすがの私でも、そこまで出来るとは思っていません。助けた所で、私じゃ食料を用意する事も出来ませんし・・・」
「私も同意見だ。人助けは、最後まで責任をもって面倒を見られるのでなければ、下手に行うべきではない。それに、どれだけ使徒となった人間が居るのかも分からないからな」
私達は、相手の戦力も何も分からない。私は見ず知らずの人たちのために、自分の命をかけるほど善人だと思ってはいない。ただ、完全に見捨てることができるかどうかは、まだ私には分からない。




