61話目
「ところで、コンビニにはこんなものもあったぞ」
アオイさんは思い出したようにかごを漁り、紙の包みを取り出した。
「なんですか、それ」
「カレンダーだ」
「え、それじゃあ、今がいつか分かるって事ですか?」
「残念ながら日にちは分からないが、年は分かるだろう。コンビニあったデジタル時計は電池が切れていて表示されていなかったからな。ああ、そうだ。日持ちしない食品の消費期限を見ればいいか。あとでもう一度コンビニに行こう」
それなら、カレンダーは必要無いんじゃ・・・と思ったけれど口には出さない。とりあえず、今が何年なのか気になるからだ。アオイさんは、包みからカレンダーを取り出し、広げた。そこには、しっかりと今の年が書かれている。
「あれから、10年も経っていたんですか!? もし、食事の要る体だったら、とっくに死んで骨になっていますね」
「ふむ・・・、考えてみるとそうとも言えないな。あくまでカレンダーが最後に作られたのが10年前なだけで、それからまだ年月が経っている可能性がある」
「だとしたら、コンビニで消費期限を見ても意味ありませんね・・・」
「確かにな。まあ、食品の状態だけでも見ておこう。まあ、10年も経っていればほぼ乾燥するか腐敗するかして原型を留めていないだろうが」
私がコンビニに入った時も、腐ったような臭いはしなかったので腐敗し終わったのかもしれない。あれ? そもそも、私ってその時呼吸してたかな・・・。今思うと、意識して吸い込まないと、普段は無呼吸の様な気がする。
「まあいい。とりあえず、実験の続きだ。予想では、足や手を大きく損傷させればナノマシンが全身のエネルギーを使い尽くして死ぬだろう」
「アサミさんと同じ状態になるって事ですね・・・」
「そうだ。ただ、それはユカリ君の様に自身でエネルギーを作り出せる個体には効果は無いだろうしな。実際、ユカリ君の分体らしき存在は腕を再生しても生きていたしな。ああ、それならもう少し詳しくユカリ君の方も調べる必要があるか」
「ユカリさんで実験何てダメです! 本当に分体かどうかも分からないのに」
「むぅ、それを確かめる意味でも調べたいのだが・・・」
「少なくとも、ひどいことをしてはだめですよ」
「それは分かっている。それでは、実験に戻るとするか。今度は神経の切断を試す」
「神経の切断ですか? すぐに再生するんじゃないですか?」
「ああ。だから、切断状態を継続させる」
アオイさんは、言うが早いがおじさんの首の後ろにメスを突き刺した。少し血が出たけど、その程度の傷はすぐにナノマシンで再生する。でも、メス自体を押し出して再生する事は無いようだ。
「うえぇっ! おじさんが漏らしてますよ!」
「なるほど、神経の切断は異物があれば再生できないのか。下半身の筋肉へ脳からの信号がいかなくなったから小便を留めておけなかったのだろう」
私は、呼吸を止める。さっき思い出して呼吸をしていたのがあだとなったようだ。地面に広がる水たまりを避けるため、私はおじさんから距離を取る。
「あとは、脳の破壊や心臓の破壊が有効かどうかだな。唯一無二の細胞が再生するなら、実質私の悲願である不老不死の研究がほぼ成功したと証明されるだろう」
アオイさんは、少し興奮した様に顔を上気させている。けれど、私としてはそんな場面を見たくないんですけどね・・・。




