57話目
「こっちだ」
アオイさんの案内の元、アオイさんが見たという人影の方へと歩いて行く。アオイさんが言うには、そう遠くないらしいのでそろそろ見えてくるはず。
「・・・あれ、ですか?」
「ああ、その様だな。上から見た時も変だと思ったが、直接見ると確実に変だな」
歩いていたのは、50代から60代のおじさんだった。けれど、様子が変だ。ふらふらと酔っぱらっている様に歩いているし、何よりその目は白目しかなく、どこも見ていない様に見える。
「では、話しかけてみるか」
「えぇぇ!? 絶対、普通の人じゃ無いですよ!」
「だから話しかけてみるんだろ。何か情報を持っているかもしれないし」
「そもそも話が通じそうに思えませんよ!」
「そう叫ぶな、ほら、こっちを見ているぞ」
アオイさんに言われ見てみると、動きを止めてジッとこっちを見ていた。白目だけど、目が合った気がした。すると、急に腕と足をバラバラに動かしながらこっちへ走って向かってきた。
「ヒィィッ!」
「あっ、カエデ!」
私は気持ち悪くて、反射的に逃げる。すると、アオイさんを無視して走っている私の方へ向かってきた。
「どうして私の方へ来るんですかぁ!!」
「ヴォアアアア!」
「ヒィィィッ!」
会話の代わりに雄たけびを上げている時点で話は通じないと思う。
「ヴァアァ!」
「ギャアァ!」
私はとっさに近くのコンビニへ入ろうとする。自動ドアは自動で開かなかったので、怒られるかもしれないけど力で鍵の部分を壊して扉を開ける。自分の命の方が大事だ。
「ア゛ァ゛!」
「ヒッ!」
扉を閉めた瞬間、バンッとおじさんがガラスに張り付く。ガラスを壊すような力は無いのか、扉をバンバン叩くけど壊れない。しばらくガラスを叩いていたけれど、しばらく叩いて開けられないと判断したのか、後ろへ下がり始めた。
「やっと諦めてくれましたか・・・」
「ア゛アァ゛ァァ!」
「違ったあぁぁっ!」
おじさんは、十メートルほど離れた後、扉に向かって突進してきた。私はとっさに扉から離れると、ガシャンという音と共にガラスが割れた。
「バアアァァ!」
「いやーー!」
おじさんの口が大きく割れて開き、私に飛び掛かってくる。私は食われると思い、とっさにおじさんにビンタする。
「ガハアァッ!」
そんなに力を込めたつもりは無かったけど、おじさんはコンビニのガラスを突き破って吹き飛んでいた。おじさんは倒れたまま動かない。
「・・・あれ? 私、やっちゃった・・・?」
私は、首が180度近く回ってしまったおじさんを見て、サッと顔が青ざめるのが分かった。




