56話目
「入口は、やはり閉まっていますね」
街の様子を見たけれど、人は誰も歩いていない。何があったのか分からないけど、東京で無人の道路何て初めて見た。朝だから分かりにくいけど、どの建物にも明かりはついていないようで、恐らく誰も住んでいないのだろう。
「どうせ誰も居ないようだ、壊して入ろう」
「え。そんな事していいんですか?」
「もし、何かの責任に問われるようなら、私が責任と弁償をしよう」
「本当に、いいんですね?」
「ああ、構わん。開けてくれ」
私は何度もアオイさんに確認してから入口の自動扉に手をかける。ガラスは簡単に割れ、私達は中へと入る。
「エレベーターはやっぱり動いていませんね」
「その様だな。であれば、非常階段を上るか」
「30階登るんですか?」
「ああ。せっかくだから一番上を目指そうじゃ無いか」
アオイさんの提案で、非常階段で最上階まで登ることにする。階段を上りつつ耳を澄ませても、何の音もしないからやはり誰も居ないみたいだ。
体が変化したおかげか、汗をかくことも疲れる事も無く30階まで登ることが出来た。そう言えば、コンクリートを削っていた時も全然疲れた覚えはない。アオイさんも力は無いけど体力は私と同様の様で、普通に登れている。
「さすがに屋上へ出る扉には鍵がかかっているか。カエデ、これも破壊してくれ」
「分かりました」
今更なので、鉄製のドアを押す。ベキッという音と共に壁の方が割れた。屋上のフェンスに近づき、下を確認する。
「ふむ。特に火の手が上がっているとかは無いな。建物も壊れているところは見た所無いようだ。車も、放置されている物ばかりで動いている物は無いな」
「見えるんですか?」
「ああ、私はどうやら視力が強化されているようだ」
アオイさんの目を見ると、カメラのレンズが自動でピントを合わせるように瞳孔が大きくなったり小さくなったりと変化していた。私はユカリさんが居た場所の辺りを見るけど、特に何も見えない。
「おや? あれは何だ?」
「何が見えるんですか?」
「アヤヒ君とは違う、人間が歩いている。ただ、様子がおかしい。ふらふらと、目的も無く歩いている様に見えるな」
「初めての人ですね。会いに行きますか?」
「そうだな。何か情報が得られるかもしれない」
私達は、急いで階段を降りる。登りと違い、下へ行くときは全ての段差をジャンプして降りる。体が強化されているので、私は平気だ。アオイさんは最初に試したときに怪我はしないけど足がジーンと痺れるようで、次からは私がおんぶしている。
私の体だと、どれくらいの高さまで大丈夫か分からないけど、とりあえずジャンプジャンプで下へと降りる。登りにかかった時間が嘘のように、あっと言う間に一階に到着した。
「どの方向ですか?」
「いや、もうおんぶはいい。自分で歩くから降ろしてくれ」
「分かりました」
私はアオイさんを降ろすと、アオイさんは見えた人影の方へと案内しはじめた。




