51話目
扉をくぐりぬけた先をみると、何かが見えた。一瞬、緑色の等身大のサボテンに見えたけど、どうやら人影みたい。
「ユカリさん・・・? ユカリさん!」
その人影は、よく見るとユカリさんに見えました。あの時の、壁に向かって立っていた時のユカリさんに。ただ、服を着ていなくて素っ裸に見えるけど。私は、すぐに確認しに走り出した。
「おいっ! カエデ! 安全も確かめずに近づくな!」
「ユカリさん!」
「・・・ユ、カリ、サン」
「ユカリさん・・・?」
「・・・ユカ、リ、サン」
私が呼びかけると、ユカリさんが反応してくれましたが、「ユカリさん」とオウム返しするだけで、ピクリとも動きません。
「ユカリさん、どうしたんですか? 大丈夫ですか?」
「ユカ、リサン、ドウシ、タンデ、スカダ、イジョウ、ブデス、カ」
「アオイさん、ユカリさんの様子がおかしいです・・・」
アオイさんは、辺りをきょろきょろと確認しながらも、私の元へ来てくれました。そして、まったく動かないユカリさんを見て、触って、少し考えこんでいるようです。
「これは、おそらく分裂体だな。2番・・・いや、ユカリ君と呼ぼう。これを見るに、ユカリ君の変化は植物状態へなるようなものだったのだろう。見ろ、頭の上にある花を。もしかしたら、植物のように種で増えるのかもしれん。足元からも栄養を取っているようだ」
ユカリさんの頭の上には、しぼみかけですが、確かに花が咲いています。そして、足元を見ると足首から先が地面へとめりこんでいました。動かないのでは無く、動けないという事でしょうか。それに、アオイさんの話では、これはユカリさん本人ではなく、分裂体とかいうやつらしいので、ユカリさんが増えたという事でしょうか。
「これは、思ってもみなかった変化だ。まさか、これほどの変化を起こすとは」
「あの、本物のユカリさんはどこへ行ったんですか?」
「それは私にもわからん。だが、こうして分裂体があるという事は、本体であるユカリ君も外へと出たという事だ。恐らく、研究所内で見かけなかったのは、根が張れず存在出来なかったのだろうな」
「じゃあ、ユカリさんはどこかに居る可能性があるんですね」
「そうだな。だが、これを見ると、どのような状態になっているかは分からんぞ?」
「だとしても、無事かどうかは確認したいです」
私がアオイさんと話していると、ジャリッという音が近くからしました。振り向くと、そこには四つん這いになった何かが居ました。
「犬・・・じゃない、なに、あれ・・・」
「3番・・・いや、アヤヒ君か?」
アオイさんの言う通り、そこで四つん這いになっていたのは全裸のアヤヒさんに見えました。でも、私にはそれはアヤヒさんだと思えません。髪の色が黒色なのもそうですが、目が赤く、口には牙の様な物が生え、涎を垂らしていて、どう見ても人間のする姿ではありません。
「アヤヒ・・・さん、ですか?」
「グルアァァ!」
私が話しかけると、アヤヒさんは口を開け、唸りながら獣のように四つん這いのまま走ってくるのでした。




