46話目
アヤヒが居なくなった事で、部屋が静かになった。
「・・・? ユカリさん?」
ユカリはいつも静かであるが、どうも様子がおかしい。いつも以上にボーッとしているように見えるのだ。
「大丈夫ですか?」
「・・・大丈夫よ。ただ、動きたくないのよ」
「・・・! まさか、日光が足りないのか!」
アオイは、ユカリが栄養不足に陥っていると判断する。栄養を葉緑素で補うはずだが、研究所は地下にあるため日光が無い。照明だけではエネルギーが足りないのだ。
「え、じゃあ、すぐに外へ連れていってあげないと!」
「・・・それは出来ない。代わりに、照明を部屋へ集める」
「どうして! 外へ連れていけばいいだけじゃないですか!」
「この状態で外へ連れていく訳には行かない。どのような影響があるのか、まだ分からないからな」
「じゃあ、せめて入り口近くで光が当たる場所へ連れていくとか!」
「ダメだ。そもそも、今は研究所へ病原菌を持ち込まない様に封鎖されている状態だ」
「そんな・・・」
とりあえず、アオイが言ったように部屋へ連れていき、照明を増やす方法を選ぶしか無かった。アオイとカエデは2人でユカリを支えて運ぶ。
「ユカリさん、頑張ってください!」
カエデ自身も、頑張ってどうにかなるとは思っていないが、何かしら声をかけるべきだと思ったのだ。
「あれ・・・?」
カエデは、ユカリを運び終わった後で立ち眩みを感じた。貧血とはまた違う、体が自分の意思から離れるような感覚だ。
「どうした? 4番。何か体に異変が起きたか? 見た目は今のところ変わっていないが・・・」
「ちょっと、ふらついただけです。お腹もすいていないのに、変ですね・・・」
「もしかしたら、別の薬品を飲んだ影響が出てきたのかもしれないな。4番も部屋で休んだらどうだ? 2番については他の職員に見張らせているから、何かあればすぐに対応する」
「いえ、私も一緒にユカリさんの側にいます。なにか・・・あれ・・・ば・・・」
「4番!」
口ではそう言ったが、カエデは平衡感覚を失ったかのように倒れる。カエデは、自分の意識が遠のくのを感じる。
「ユカリさ・・・ん・・・」
カエデは、最後の力を振り絞ってユカリへ手を伸ばすが、途中で意識を手放すのだった。




