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ゾンビにされた  作者: 斉藤一


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43話目

 いままで色々なものを口に入れてきたカエデにとっても、金属味と言うのは初めての体験であったが、なんとか吐き出さずにすべて飲むことが出来た。


「めっちゃ不味そうに飲んでるけど、その、何か変化とかある?」

「・・・今のところ、特になにも感じませんが」

「私も、何も無いわね」


 カエデとユカリが飲んだことで、アヤヒも飲んでみる事にした。一口だけ口に含むと、ザリザリとした食感と、釘でも舐めたかのような味がする。


「おえっ、口に入れただけで嘔吐感がすごいんだけど・・・。けど、お金の為、お金の為!」


 アヤヒは、鼻をつまんで上を向き、重力を使って強制的に喉奥へと流し込む。量はそこまで多くなかったので、何とかすべて飲み干す。


「げほっげほっ、おえっ、はぁ・・はぁ・・。何とかあたしも飲めたわ・・・」


 吐き気の為、アヤヒはそのままぐったりと床に横になった。そうしないと、吐き出しそうだったので。


「なあ、本当に大丈夫なんだよな?」

「はぁ・・・はぁ・・・、あたしも、今のところ、吐き気以外は、平気、かな」

「では、わたくしも」


 今度はマリアが試験管の口に唇をつけ、そのままクイッと傾けて中身を口へと入れる。マリアはそのままコクコクと少しずつ飲み込むが、表情は完全に無表情だ。むしろ、死んだ顔に見える。それでも、すべて飲み干すと、無言のまま祈りだした。


「じゃ、じゃあ、うちも飲むわ」


 アサミは、自分以外の全員が飲んだことで決心がついたのか、試験管を手に取る。明らかに飲み物の色ではない銀色は、それだけで拒否感があるが、目をつぶって口へ入れる。


「うー!」


 あまりのまずさに、アサミの目には涙が出る。が、1千万の為だと喉へ流し込む。なかなか流れ込まないナノマシンに、アサミはウプッと吐きそうになるが、無理やり口を閉じて飲み込む。


「はぁ、はぁ、はぁ、飲め、た・・・」


 アサミも、脱力して座り込む。これで、5人全員が飲んだことになる。


「よし、全員飲んだな。それじゃあ、ナノマシンが体内に行き渡るまで暫く休んだ後、次の―――」

「かゆい、かゆいかゆいかゆいー!」


 アオイの話の途中で、アサミはかゆいと言い出し、自分の足の包帯をはがす。包帯の下には、事故で切断されたひざ下が見えた。


「な、なんだ?」


 アサミは、自分の傷口がかゆいが、触れることをためらう。それに、見ているうちに傷口の肉が盛り上がってきたのだ。


「こ、これは?」

「傷口が、再生している? なんだ、こんな事が起きるなんて。動物実験では、怪我をした動物など使ったことは無いから、いったい、何が起きているのか・・・」


 誰もがどう対応していいか分からず固まっている間にも、アサミの足がどんどん再生していく。しかし、再生と同時にアサミのほほがこけていく。足が半分ほど再生した辺りで、アサミは白目をむいて倒れた。


「まさか、再生に伴って体の栄養が減っているのか! ミカコ、すぐに診療室へ連れていき、点滴の用意を!」


 すぐにミカコは点滴の用意をしに行き、アオイは職員を呼んで担架でアサミを運ばせる。


「こ、これは・・・」

「やっぱり、やばい薬だったのか・・・?」


 すでにナノマシンを飲んでしまっているカエデとアヤヒは、アサミの状態を見て顔面を蒼白にする。もしかしたら、自分達もこうなるんじゃないかと。


「落ち着け! 恐らくだが、遺伝子を元に体の欠損を自動的にナノマシンが修復したのだろう。正直、予想外の効果だが、怪我が無ければ問題無いはずだ。くそっ、早く次の薬を飲ませるべきなのか、しばらく待つべきなのか判断がつかん!」


 アオイも予想外の出来事に判断がつかないでいる。動物実験の時は、何事も無く3日ほど過ごさせていたため、まさか怪我まで直す副作用があるとは気づかなかった。


「すぐに次の薬を所望しますわ」


 そこへ、マリアが笑顔で次の薬を要求するのだった。

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