42話目
「4番、喜んでいるところ悪いが、君の場合はすでに飲んでもらう事が決定している。すでに父親にお金が支払い済みだからな」
「あ・・・そうでした・・・」
カエデはアオイにそう言われ、飲むことが決定していたことを思い出す。そもそも、人数分置かれているはずの小切手が4枚しか置かれていない時点で明白だったのだ。
「じゃあ、飲みたくないって言ったらどうなりますか?」
「ん? んー、私としては好ましくない状況だが、どうしてもというなら1千万を返金してくれればいいぞ」
「1千万を返金・・・」
カエデは、すぐに無理だと分かる。父親の所在が分からないし、おそらく・・・というか、ほぼ確定ですでにそのお金はもう手元に残っていないだろう事が分かる。
「わかり・・・ました・・・飲みます・・・」
カエデは、しょんぼりとうつむく。飲むのが確定しているなら、なぜマリアは飲むか飲まないかの選択を聞いてきたのだろうか。カエデが借金返済のために飲むことは最初から何度か言われてきた事だ。今はカエデも大金の前に忘れていたが、秘密にはしていないのでみんな知っている。
「・・・カエデちゃんが飲みたくないなら、私への報奨金をカエデちゃんにあげるわ。それなら問題無いでしょう?」
「まあ、そうなるな。だが、それでいいのか?」
「私は別に、お金の為にやってるわけじゃないから」
ユカリはそう言うと、自分の番号が書かれている試験管を取ると、一気に飲む。拒食症のため、嘔吐感が込み上げるが、いまは飲まなければならないと必死でこらえて飲み干す。
「・・・飲んだわ。次の薬も飲むから、カエデちゃんに1千万円渡してあげてちょうだい」
「・・・待て待て、次の薬は今のナノマシンが体に馴染んでからだ。今飲んだ量のナノマシンじゃ全身に行き渡るには足りないから、増殖するのを待つ時間がある」
カエデはちらりとマリアを見る。ほぼ1千万がユカリからカエデへ支払われる様な状況になっても、マリアの表情は変わらない。つまり、マリアの中ではカエデが飲まない事の可能性の方が高いのかもしれない。
「・・・ユカリさん、ありがとうございます。けれど、私はこれを飲みます。やっぱり、1千万はユカリさんのものですし、正直、微妙ですけど、あんな父親でも育ててもらった恩がありますから、1千万は最後の親孝行として渡しておきたいです」
「カエデちゃん・・・」
カエデはユカリの隣に立ち、4番の番号が貼られた試験管を取ると、一気に飲み干す。
(うっ、なにこれ! まずい、まずすぎる! よくこんなものをユカリさんは飲めましたね・・・)
ナノマシンというだけあって、金属の味しかしない。まるで鉄の粉を飲んでいる様で、ユカリじゃなくても吐き戻しそうになった。




