41話目
カエデ達4人が会議室へと戻ると、すでにマリアも居た。
「よし、揃ったな。それでは、今日の治験を始める」
カエデは、マリアの予想通り薬を飲むことになったので、嫌な汗が出てきた。結局、飲んだ方が良いのか、飲まない方がいいのか分からないままだからだ。
「あの、すいません。その治験の内容を聞かせて貰ってもいいですか?」
「ん? ああ、元々説明するつもりだったから構わない。これからお前達にはこれを飲んでもらう。これは、次に飲んでもらう予定の薬とセットになっているから、これを飲んだら次の薬も飲んでもらう事になる」
アオイが一つの容器を見せながら説明を始めた。その容器の中に入っている液体は銀色で、どう見ても体に良いようには見えない。カエデがアヤヒの方を見ると、アヤヒも似たような感想を持ったのか、若干顔が青ざめている様に見える。
「・・・ちなみに、成分って聞いてもいいですか?」
「慌てるな。それもこれから説明する。これは薬品では無いから、成分とかは無い。これはナノマシンだ。このナノマシンは、体の中に入ると血液と一緒に体中の細胞へと行き渡り、細胞分裂などの活動を助けることになる。細胞と同じく、自己増殖機能を持っている。ちなみに、先ほど採取したお前達のDNA配列を記憶させてあるから、自分の番号の物を飲んでくれ。この治験が女性ばかりなのは、女性の方が染色体がXXと、男性のXYに比べて安定しているからだ。そして――」
「所長、所長。皆さん、そこまでの回答は求めていませんし、そもそもそれは企業秘密なのでは?」
「あ・・・。こほんっ。ミカコ君の言う通りだな。とりあえず、体には害のないと動物実験でも確認している」
「私達よりも前の治験者の人たちもそれって飲んでるんですか?」
「いや、今回が初めてだ。むしろ、今までこれが無いせいで効果が出なかったと踏んでいる。セットとなる薬は、テロメアが短くならないようにする効果がある薬だからな。テロメアが何かと言うと、染色体の末端を保護するDNAとタンパク質の構造で、本来は細胞分裂のたびに短くなる。この短縮がある一定の長さに達すると細胞はそれ以上分裂できなくなり、細胞の老化や寿命に関わると考えられる。そして――」
「所長、何度も言うようですが、誰もそこまでの回答を求めていませんし、企業秘密です」
「ん、ああ、すまない」
どうやら、アオイは自慢したい系の天才らしく、本来なら企業秘密である薬の効果まで説明してしまったようだ。といっても、カエデ達に理解できるものでは無いし、それを使って研究を始めるつもりも無いが。そもそも、どうすれば作れるのかは完全に分からない。
「うちは、一番大事な報奨金がいくらなのか聞きたいんだけど」
「今回は、今まで治験したことが無い、一番重要な治験となると踏んでいる。だから、出し惜しみする事は無いぞ。これを飲むなら、1千万支払う」
「「「一千万!?」」」
金額を聞いて、ユカリとマリア以外の驚く声がハモる。アオイは、1千万の金額が書かれた小切手を人数分机に並べる。
「一千万あれば、あたしの借金は完済できるよ!」
「うちは、それでも足りないけど、自力で稼ぐにゃでかい金額だな」
「あわわっ、そんな大金、見た事も無いです!」
1千万という大金を提示され、3人は目に見えて舞い上がっていた。




