4話目
カエデは目を覚ますと、自室では無い事にすぐ気が付いた。いつもなら、ぺったんこのせんべい布団で寝ると起きた時体が痛いからだ。だからと言って、買い替えるお金なんて無い。
「ここ・・・どこ?」
カエデはあたりを見まわす。どこか学校の保健室を彷彿とさせる部屋だが、違うとしたらこの部屋には窓が無い事だろうか。なので、今が朝なのか夜なのかも分からない。
「あら? 起きたのね。気分はどう?」
「あっ、はい。大丈夫・・・です?」
カエデは少し頭が重く感じたが、そんな事よりも知らない女性が同じ部屋に居るという事に危機感を抱く。
「あの・・・あなたは?」
「そうよね。まずは自己紹介が必要よね。私は小松未可子。研究者だけど、あなた達の体調管理も任されているわ」
カエデは、まだうまく回らない頭で直前の事を思い出そうと頑張る。
「そうだ・・・私、家で急に眠くなって・・・気が付いたらここにいたんだ」
(なるほど。本人に同意を得ていない被験者って事ね。まあ、10代の被験者は貴重だし、逃したくない気持ちは分かるけど、研究のためとはいえ、こんな小さな女の子を無理やり連れてくるのは少し心が痛むわね)
未可子は、カエデの呟きを聞いてどういう状況か推測した。被験者を連れてくる担当者は、未可子に詳しい話をする事は無い。彼らの仕事は被験者を集めることだけで、それ以外については全く関与する気が無いからだ。カエデも、眠らされた状態でいきなりこの部屋へと連れて来られたので、未可子もカエデを放置できず、ずっと見張っている羽目になっていたのだ。
「私、どうなるんですか? ちなみに、帰れと言われても父親は家も土地も売り払ったらしいので、帰るあては無いんですけど」
「ここに関しての話は何か聞いた?」
「全く聞いていません」
「っとに、あいつらは・・・」
未可子は改めて被験者に対する態度がなっていないと立腹する。フォローする身にもなってほしいと。
「ここは研究施設よ。そして、私達は色々な年代の女性に対して薬の治験をしてもらっているの」
「あっ、それはお父さんから聞きました。ちなみに、その治験と言うのは安全なんですか?」
「今のところ、動物実験では異常は見られないわね。理論上では、もう完成しているはずなんだけど、動物と人間ではやっぱり効果が違うのか、変化が見られないのよ」
「だから、人間で試そうと・・・?」
「まあ、その辺は詳しく話すとプラシーボ効果とかありそうだから、治験者にはまだ詳しく話すことは出来ないの。他に何か聞きたいことはある?」
その時、カエデのお腹から「ぐ~っ」と大きな音が鳴る。カエデは慌ててお腹の音を抑えようと押さえるが、もう遅い。
「ふふっ、そうね。お腹が空いているのなら先に食事でもどう? と言っても、今の時間だと食堂はもう閉まっているから、出前しか無いけど。ピザとかどう?」
「ぴ、ピザですか! 私、食べた事無いんですけど、食べてみたいです!」
「え・・・? ピザ、食べたこと無いの? 分かったわ。それじゃあ、具は何がいいかしら」
「お肉が多いやつでお願いします!」
「分かったわ。それじゃあ、ピザが届くまで、あなたの現在の状態を見たいから、診察させてもらえるかしら?」
「はい、分かりました!」
ピザが食える・・・それだけで、カエデはあっさりと未可子の事を信用するのだった。




