31話目
「そろそろ食堂へ行きますか?」
「あ、もうそんな時間?」
カエデはトランプもウノもほとんど勝てない為、飽きて来ていた。それに、そろそろ18時となり食事をするにもいい時間だろう。食堂は基本的に朝6時から夜の21時まで開いているので、夕食はいつでも食べられる。
「お昼に結構食べたから、あたしはまだそんなにお腹空いてなかったかな」
「アヤヒさんはノンアルコールも飲んでいますしね」
「・・・カエデちゃんがお腹空いたのなら、食堂へ行きましょう」
ユカリもアヤヒも正直お腹は空いていなかったが、カエデに合わせて食堂へ行くことにする。
「アサミさんも誘いますか?」
「そうだね、彼女、思ったよりも普通の子だったし」
見た目が完全に不良だったため、最初は避けようと思っていたが、話してみると口調は荒いが性格は普通だったため避ける理由は無くなっていた。むしろ、積極的に情報を得ようとする姿はカエデ達にとっても好ましかった。カエデ達は、一度5番の部屋へと向かう。
「アサミさん、食堂へ行きませんか?」
「あー、飯か。いいよ、うちも行く」
ベッドに座っていたアサミは、横においてある松葉杖を抱え、入口へと向かう。アサミは、実はカエデの遊びの誘いを断った事を少しだけ後悔していたので、食事を一緒にとれるなら是非参加したいと思っていた。アサミは自分でも見た目で避けられることが多いと分かっていたため、自分からは誘いにくかったのだ。
「支えましょうか?」
「いや、大丈夫だ。それより、うちは食堂へ行くのは初めてだから、一緒に行けて助かるよ」
「そうなんですか? 食堂にはいろいろな食べ物があって、なんと無料で食べられるんですよ」
「そりゃいいな。うちは来たばかりで、まだどこへも行ってないんだ」
「部屋にパンフレットもありますよ。まあ、書いて無い事も結構あると思いますけど」
「そんなのあったのか? 知らなかったな。テレビしか見てなかったよ」
怪我をしているアサミに合わせ、ゆっくりと食堂へ向かう。話の中心がほとんどカエデの為、ユカリとアヤヒは静かだった。アヤヒは職業柄、話をする事自体は好きなのだが、やはりアルコールが無いと調子が出ない。それに、やはり接客で話すのと普通に雑談するのとでは違うので、いつも聞く側が主だったアヤヒは割り込んでまで会話する事は少なかった。
「ここが食堂です。さあ、今日は何を食べましょうか!」
「おぉ、結構広いんだな。カエデは食べるのが好きなのか?」
「好きと言うか、お腹いっぱい食べられるっていう事がほとんど無かったので、こうして食べる事が出来るだけで幸せですよ!」
「へぇ、そうなのか」
食べられる事だけで幸せと聞いて、アサミはすぐにカエデの環境を察する。見た目でもなんとなくそうなのかとは思っていたが、カエデの口から実際にそういう環境だと推測できる言葉が出たので、そこには触れないようにしようと思うのだった。




