29話目
「ウノです!」
「あっ、悪いね。Dカード」
「えぇ、ひどいです、アヤヒさん!」
「これが戦略ってもんだよ」
カエデ達はアヤヒの部屋でウノをしていた。しかし、ルールを覚えたてのカエデや、ほとんどやった事のないユカリは弱かった。そこを容赦なくアヤヒが勝ちまくっていく。
「やりぃ、これであたしの勝ち。もし、お酒が補充されたらあたしの物だからな」
「別に、私は飲まないからいいですけど。それに、どうせ勝ってなくてもアヤヒさんなら勝手に持って行きそうですが」
「まあまあ、勝ったときに飲む酒はまた格別なのよ」
といいつつ、アヤヒはノンアルコールを飲む。やはりアルコールが入っていないと全然物足りないが、味だけでも気分はまぎれる。それに、勝利の美酒はうまいものだ。
「ユカリさんもあまり強く無いんですね」
「ええ。ほとんどやった事は無いわ」
「それなら、別のゲームにしますか? ババ抜きとかなら私も知っていますし」
「・・・任せるわ」
ウノだとアヤヒが強すぎるため、種目をトランプに代えてババ抜きを始めた。
「マジ、かよ・・・」
「つ、つよいですね・・・」
だが、今度はユカリが強すぎた。ババを取ろうが何をしようが、ユカリの表情が変わらなくて全く読めないのだ。ユカリ自身、勝とうが負けようがどうでもいいと思っている上、今は表情が死んでいるのだ。
「だったら、今度はカエデが得意なゲームをするか?」
「私、神経衰弱なら得意ですよ?」
「神経衰弱かぁ・・・、あれ、あたしは苦手だな」
「別に、私を勝たせようとしなくても大丈夫ですよ。こうして遊べるだけで、すごく楽しいです」
今日は経過観察の為、夕食までやることは無い。アルコール以外の飲食は禁止されていないので、お腹が空いたり喉が渇けば好きな物を飲み食いできる。
「マリアさんや、田野さんは何しているんでしょうね」
カエデは、マリアは「マリアとお呼びください」と言っていたのでマリア呼びだが、見た目が完全な不良のアサミに対しては、名前を呼ぶ度胸が無く苗字呼びである。カエデは、親しくなるには名前を呼び合う事が大事だと思っているので、ユカリとアヤヒも名前呼びなのだが、アサミに対してだけは仲良くなれる気がしていない。
「さあね。案外、マリアはずっと祈ってたりしてるんじゃないか? 正直、普段の様子が全く想像できないんだよねあの子」
アヤヒはマリアの事が苦手であった。初日に、アルコール飲料を貰おうと
ユカリの所とマリアの所に顔をだしたのだが、ユカリは「いいわよ」とあっさりと分けてくれたが、マリアの一番最初の会話が、「あなたは今、幸せですか?」から始まり、そこからよく分からない話をしてきたので、適当なところで逃げてきたのだ。
「誘ったら、来ますかね?」
「あー、止めといた方が良いと思うよ。少なくとも、あたしは一緒に遊んで楽しい未来が視えないから」
「そうですか。じゃあ、やめときましょうか」
アヤヒもカエデもユカリに尋ねないのは、2人ともすでにユカリが自分の意見を言う性格ではないと知っているからだ。恐らく、尋ねても「任せるわ」と返事が返ってくるだけであると読み切っている。




