25話目
カエデは、一万円の支払いについてミカコに聞いてみる事にした。ミカコは追加注文等を受けるために同じ部屋に居るが、必要以上に接触しないようにしているのか、部屋の隅でコーヒーを飲むだけに留めている。そこへ、カエデはトテトテと近づいて質問する。
「ミカコさん、今、話しても大丈夫ですか?」
「いいわよ。追加注文かしら?」
「いえ、ここに居る間、一日一万円貰えるって聞いたんですけど、本当ですか?」
「本当よ。治験の期間中は、一日一万円が支払われているわ。そして、午後から始まる薬品を飲むごとに別途報奨金が支払われるわよ。薬にはいくつか種類があって、リスクが高い物ほど報奨金が高額になるわ」
「そうなんですか? ちなみに、いくらですか?」
「そうね、安い物でも30万、高い物なら1千万もありえるわね」
「1千万!」
カエデは、思いのほか自分の声が大きかったので口を押さえる。一瞬、注目を集めたが、すぐにそれぞれ食事へと戻った。
「でもね、カエデちゃんは別よ」
「えっ、どうしてですか?」
「すでに、報奨金を含めてあなたの父親へ支払われているわ。だから、悪いけどカエデちゃんには拒否権は無いのよ」
「えぇぇ・・・本当に、あのクソ親父!」
カエデの知らない間に、すでに何かしらの契約が結ばれていたらしく、カエデに支払われる予定のお金は全て父親へと支払われていた。つまり、カエデになんのメリットも無くリスクの身を背負うことになっている。他の者には、きちんとそういうリスクを含めて説明がされているが、カエデにはそういう事情があったため説明が省かれていたのだった。カエデは、肩を落としてアヤヒたちの所へと戻る。
「アヤヒさん、私にはお金が支払われず、すべて親に支払い済みらしいです・・・」
「あー、それはご愁傷様としか言いようが無いわね」
「・・・カエデちゃん、良ければ私が奢ってあげるわよ。どうせ私、お金なんて必要ないし」
「それはさすがに、悪いですよ! それに、お金が必要無いって事は絶対に無いです! お金があれば、美味しい物を食べて幸せになれます。ユカリさんにも、きっと美味しく食事が出来る時が来ると思います」
「・・・そうね、そうだといいわね。けど、少しくらいの食事ならいいじゃない? どうせ今は私は食べられないし、その分カエデちゃんが食べるだけだから」
「うー、私、ユカリさんにどう恩返しすればいいんでしょう? マッサージでもしましょうか?」
「そんなのいいわよ。ただ、一緒に居てくれればいいわ」
「それだけでいいんですか?」
「ええ」
ユカリは、カエデの事を自分の娘の様に扱おうと思っていた。ただ普通に話してくれるだけ、一緒に居てくれるだけで幸せを感じられる。それこそ、カエデと一緒に居れば近いうちに拒食症も治るのではないかと思うほどに。だが、それと同時にカエデが再び居なくなった時の事を考えると胸が締め付けられるように痛む。なので、カエデにはもう帰るところが無いと聞いているので、この治験が終われば一緒に住まないかと誘うつもりであった。




