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ゾンビにされた  作者: 斉藤一


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24話目

 10分ほどで準備が終わり、20分くらい雑談していると料理が届いた。


「本物のステーキです!」

「あたしは、結局うなぎの蒲焼にしたけど、いい匂いだ」

「あっ、それすごく美味しそうですね。アヤヒさん、私のステーキと少しだけ交換しませんか?」

「いいけど、カエデちゃんはそんだけ食うの?」


 カエデの前には、5人前のステーキが用意されていた。確かに、好きな物を頼めと言われたのでどれだけ注文しようと別におかしくは無いのだが、200グラムのステーキ5枚が中学生の前に用意されているのには驚きがある。


「はい、これぐらい食べられますよ。食べられるときに食い溜めするのは、大事な事ですので」

「ここじゃあ、くいっぱぐれる事は無いと思うけどな・・・」


 他のメンバーにも料理が置かれている。マリアの前にはフォアグラのステーキが、アサミの前には2人前はありそうな寿司桶が、そんな中、ユカリの前に置かれたおにぎり2個は場違いに見えるが、本人の希望なので文句を言う筋合いは誰にもない。


「それじゃあ、いただきます!」


 飲み物はすでに部屋から持ち込んでおり、注文の中には入っていない。カエデはまだマリアとアサミとの距離感をどう取ればいいのか分からず、話しかけにくいと感じている。実際、マリアは一人で貴族のように丁寧なフォームでフォアグのステーキを切り分けながら少しずつ食べ進めているし、アサミも寿司をがっついて食べるだけで会話を振ることが無さそうだ。それは、さっきの20分間の雑談の間も変わらず、その2人は無関心だった。と言っても、カエデもアヤヒと話していただけで、ユカリは静かに2人の話を聞いて相槌を入れていただけだったが。


 ユカリは、カエデがおいしそうにステーキをほおばるのを見て自分もおにぎりを口へ運ぶ。いつもなら、口に入れただけで吐き気をもよおすのだが。


(私の娘も、生きていたらカエデちゃんみたいに育ったのかしら)


 10歳くらいにしか見えないカエデの見た目は、もし生きていたら自分の娘と同じくらいなのでは無いかと姿を重ね、ユカリのストレスによる拒食症はカエデと食事している間だけは落ち着いていた。それでも、食事を摂る事自体が自身の生命を生かす行為となるため、拒否感がある。衝動的な自殺未遂はカエデのおかげで発症していないが、無くなったわけでは無い。


「私、他にも食べた事の無い料理が多いので、できればもっと色々と食べてみたいです」

「だったら、食堂で食べずに注文してもらったらいいんじゃない? 一応、自腹なら外部に頼んでもらえるよ」

「自腹ですか・・・、でしたら無理ですね、お金が無いので」

「一日一万円は支払われているから、お金が無いって事は無いと思うけど。あたしも借金を返すのを優先したいから使えないね」

「えっ、一万円って何の話ですか?」

「聞いてなかったの? 治験中は一日当たり一万円が支払われているよ。最終日に、その中から使わなかった分が全額支払われる予定だって」

「聞いてないですよ。一万円って言ったら、私の一か月分の生活費じゃ無いですか」

「えっ、マジ? リアルで一か月一万円生活やってたんだ・・・」


 アヤヒは、カエデの生活費を聞いて、いかに自分がお金を使いすぎていたのかを自覚することになったのだった。

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