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ゾンビにされた  作者: 斉藤一


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23話目

 アオイは別室でノートパソコンを開き、治験者達の個人情報を見ていた。


「1番、長縄まりあ、23歳。自称教団の巫女らしいけど、実質は無職ね。志望動機は、世界の滅亡から人類を救済するため・・・意味が分からないわね。でもまあ、この研究所をコネもなく見つけるなんて、本当に未来が見えているのか、それとも他に情報を得る手段を持っているのか。まあ、こっちとしては被験者が増えるのは願っても無い事なんだけど、注意は必要かしら」


 今回の治験は募集をかけていない。過去の治験・・・実験である程度薬の効果が得られているので、今回は最終試験を行うつもりだ。そして、最終試験はリスクが高く命の保障すら出来ない為、闇金で借金するような金に困っている人間を集めたつもりだ。つまり、命を金で買うのである。そんな中、自ら志願者としてこの研究所を訪れたマリアは想定外であった。


「2番、田村ゆかり、33歳、専業主婦。夫に先立たれ、子供も病気で亡くなっているわね。そして、自暴自棄になって何度も自殺未遂を繰り返しているという情報が偶然得られたため声をかけた、か。年齢的に、この人が私の思う条件に一番合っているんだけど、問題は健康面か。拒食症で体調を崩す前に何とか結果を得たいわね」


 今までの治験者は60代以上が多かった。薬の効果を見る関係上、拘束期間が長くなる。その上、携帯等の外部へ連絡がつくものは情報の漏洩の関係上持ち込みが禁止されていたため、ネット依存症が多い若者の志願者がいなかったのだ。


「3番、高垣彩陽、22歳、元キャバ嬢。ホストに入れ込み借金を背負う。さらに、金が無くなったとたんに捨てられ、ストレスからアルコール依存症になったと。この子は闇金からの借金返済でここへ連れて来られた口ね。闇金に手を出すって事は、他に頼るものが居ないという事だから、リスクがあっても受けるという事よね」


 アオイは、一度コーヒーを飲んでのどを潤す。ずっと画面を見つめるその目には、治験者に対する同情の色は全くなく、モルモットを見るかのように淡々と情報を頭に入れている感じだ。


「4番、本渡楓、12歳、学生。父親の借金返済のために、本人の同意なく無理やりここへ連れて来られた子ね。正直、身内が居ない10代の子なんてそうそう手に入らないから幸運だったわ。若い程薬の効果も早く出るだろうし、この子には悪いけど目いっぱい利用させて貰うわ」

「5番、田野アサミ、19歳、無職。友人から借りたバイクで事故を起こす。無免許の上に無保険だったため、自分の治療費すら払えず闇金から借金する。家族、親戚は居ない。本当に、今回はいい人材に恵まれたわね。マリア以外はほぼ社会とのつながりを持たない感じだから、仮に居なくなったとしてもすぐに問題にはならないって事よね」


 アオイはノートパソコンを閉じ、椅子から立ち上がる。


「これで健康に問題が無ければ、午後から早速実験が開始できるわ。本当に楽しみね。早く、私の研究の成果を見てみたいわ」


 アオイは、ご機嫌でミカコの元へ診断結果を見に向かうのだった。

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