15話目
「・・・私、死にたいのよ」
「え・・・?」
カエデは、思ってもみなかった理由がユカリの口からでたので驚き目を丸くする。
「・・・私には、夫が居たの。死亡原因は事故なんだけど、よりにもよってその日の朝、私は夫と喧嘩したわ。それも、私が一方的に夫を責めただけ。今でも、なんでそこまで機嫌が悪かったのか自分でも分からないけど、その日は朝からむしゃくしゃしていたの。だから、いつもなら何でもない夫の行動に少しカチンときて、思っても無い事で怒ったの。当然、夫も言われない事で怒られて、気分を悪くして仕事へ出かけて言ったわ。それからしばらくして、夫が事故に遭ったと警察から連絡があって・・・。夫は即死だったらしいわ。スピードの出し過ぎだと言っていたけれど、夫は普段スピードは出さないから・・・機嫌が悪くない時以外は」
カエデはそれで分かった。夫の機嫌を損ねたため、ユカリが原因で夫が死んだと思っているのだと。実際にそうなのかそうでないのかは分からないが、少なくともユカリ自身はそう思っているのだろうと。
「そうだったんですか・・・」
「ええ。私は、なんであんなことを言ったのか、今でも後悔しているの。それから、食事が食べられなくなったわ。何を口にしても、胃が受け付けないのよ。でも、こうして他の人と一緒に居る時は、少しだけ食べる事が出来るのよ」
それが、ユカリがカエデと一緒に食事を摂ろうとした理由だった。
「おかしいでしょ? 死にたいって思っているのに、空腹には耐えられない。いっそのこと、餓死すればいいのにって思うんだけど、どうしても我慢できなくて・・・」
ユカリはポロポロと涙を流す。それは、自分がこうして生きているという罪悪感から流れる涙であった。生きててごめんなさい・・・。ユカリは、常にそう思いながらも死ねないでいた。
「何度も自殺しようとしたわ。けれど、死ぬ勇気も無いの。高い場所から飛び降りようと思えば、足がすくみ、海で溺れようとしても息が苦しくて顔を上げてしまうわ。手首を切っても、血が怖くなって止血してしまうし、首を吊ろうと思っても、どうしても踏み台を蹴れないの・・・。夫を殺した私が、のうのうと生きているなんておかしいでしょう? ごめんなさいね。こんな話、食事の時にする事じゃないって分かっているんだけど・・・」
「つらい思いをしているんですね・・・」
カエデは同情的な目をユカリに向ける。確かに、夫が亡くなった原因の一部はユカリかもしれないが、致命的な事は何もしていない。運が悪かったという方が大きいだろう。
「あまり人に話したことは無いけど、カエデちゃんなら聞いてくれそうな気がして・・・」
「私、話しやすそうですか?」
「ええ。この子ならきっと聞いてくれるわって思ったもの」
「まあ、話ならいつでも聞きますよ。他にやる事も無いですし」
「それはそうと、私達の居る部屋が監視されているのは知っているかしら?」
「・・・え?」
カエデは、急な話の代わりように再び目を丸くする。それも、監視されているとは穏やかではない。




