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ゾンビにされた  作者: 斉藤一


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13話目

 食堂にはテーブルがいくつか並んでおり、食券販売機―――ここでは全て無料だが―――で注文した食べ物を好きなテーブルで食べるようだ。今はまだ開いたばかりだからか、カエデとユカリ以外の人は見当たらない。料理人は居るようなので、注文自体はもうできるだろう。


「とりあえず、メニューを見ませんか?」

「・・・任せるわ」

「あ、はい」


 カエデは食券販売機の前に立ち、何があるのか確認する。焼きそば、ラーメン、うどんにカレー、おにぎりなど普通のメニューばかりだ。食券販売機自体は高速道路のサービスエリアで昔見た事があるので、使い方は分かる。お金を入れて好きなメニューのボタンを押せばいいのだ。今はお金を入れなくても、ボタンを押すだけで引換券が出て来るだろう。


「これは、いくつも注文してもいいんですかね? 私としては久しぶりに食べられる朝食なので、がっつりと食べたいのですが」

「・・・私はこれを」


 カエデが何を注文しようか迷っているうちに、ユカリは何を頼むのか決めたようだ。カエデはユカリの指を目で追うと、その指はライス(小)のボタンを押す。ピンポーンというアナウンス音と共にチケットが排出される。ユカリはそのチケットを取り出すと、再び両手をだらりと下げて佇む。


「・・・カエデちゃんは何にするの?」

「え。ユカリさん、それだけなんですか?」

「ええそうよ。私、拒食症なの」


 拒食症・・・摂食障害とも言い、必要な量の食事を食べられない、自分ではコントロールできずに食べ過ぎる、いったん飲み込んだ食べ物を意図的に吐いてしまうなど、人によってさまざまな症状がある。


「そうなんですか? えっと、私が食べているのを見るのは大丈夫です?」

「大丈夫よ。私が食べられないだけよ」


 どおりでやせ細っているわけだとカエデは納得するが、見た目的にそれだけではないように思う。どうにもユカリからは生きようという気が薄いと感じるのだ。それはそうと、カエデは再び何を食べようかと悩む。朝食を食べられるなんて数年ぶりだし、最後に何を食べたかの記憶も無い。

 とりあえず、最初は自分の一番好きな物を注文しよう。もし、これが最後の食事だったとしても後悔しないように。


「ハンバーグ定食、君に決めた!」


 カエデは元気いっぱいにハンバーグ定食を選ぶ。焼肉定食にも惹かれたが、さすがに朝には重いだろうと。昨晩もお腹いっぱいに近いくらい食べたけれど、食べれるときに食べる事が大事だとカエデは身をもって知っている。

 ピンポーンと再び音が鳴り、チケットが排出される。料理が出来上がったら、このチケットをカウンターに持って行けば交換して貰えるはずだ。料理が出来るまで、近くのテーブルに座って待つ事にした。


「・・・ここに来て初めての食事だわ」

「えっと、それって何日目です?」

「そうね・・・2日ほどかしら」

「大丈夫なんですか? 私も数日何も食べられなかったことがあるので分かりますが、本当につらいですよね」

「大丈夫よ・・・というか、カエデちゃん、数日何も食べられなかったことがあるのね・・・そっちのほうが驚きだわ」

「ええ。お金が無くて・・・。学校が休みの連休や夏休みなんかは本当に死にかけました」

「大変だったのね・・・」


 カエデは平気そうに話しているだけだが、ユカリはまだ子供なのにそんな辛い目に遭っているのだと知って心配になる。ユカリは辛いのは自分だけじゃ無いんだと、少し気が楽になった。

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