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ゾンビにされた  作者: 斉藤一


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12話目

 カエデは、だらだらとテレビを見て時間を過ごしていた。そして、テレビに表示されている時刻が5時55分を指すのを見てテレビを消す。


「そろそろ、朝食が食べられる時間だよね」


 朝食は6時から食べられるとパンフレットに書いてあった。そして、食堂の場所も書いてあるので準備は万端だ。鍵は無いので、そのまま部屋を出る。そして、右を見て固まる。


「ヒッ!!」


 そこには、白い服を着て、長い髪はぼさぼさで、肌が病的に白い女性が壁に向かってジッと立っていた。その異様な姿に、カエデはそれが幽霊だと判断する。もう一度部屋に逃げ込もうと思ったところで、その女性がゆっくりと顔をこちらに向けようとしていた。その動作は遅いのだが、カエデはその動きを見守ることしかできなかった。


「・・・新しく・・・入った子?」

「えっ、あっ、はい・・・。本渡楓です・・・」


 カエデは、意外にかわいい声だなと思いつつ、自己紹介をしつつ会釈する。よく見ると、白い服は検査衣で、どうやら自分と同じ治験者だと分かる。


「・・・田村ゆかり。2番よ・・・」

「あ、私は4番です・・・。よろしくお願いします」


 ユカリはそう言いつつ、ジッとカエデを見る。カエデも負けじとジッと見返す。長い髪から見える顔は、青白くて頬もこけているが、普通に美人だと思う。年齢は30歳くらいだろうか。


「あの・・・何か?」

「・・・どこへ行くの?」

「食堂に、朝食を食べに行こうかなと・・・」

「・・・私も行くわ」


 ユカリはそう言いつつも、微動だにしない。だらりと腕を下げ、ハロウィンで貞子のコスプレをしていますと言われたら納得しそうだ。


「・・・行かないの?」

「えっと、ユカリさんは行かないんですか?」

「・・・私、場所知らないの」

「そうなんですか? 部屋にパンフレットが置いてありましたけど・・・」

「・・・見て無いわ」

「じゃあ、私と一緒に行きましょうか」


 カエデは、不審者にしか見えないユカリと一緒に行くのはちょっと嫌だと思ったけれど、無視して横を通り過ぎるような度胸は無かった。カエデが横にならぶと、ユカリもぺたりぺたりと歩き出す。


「あの、どうして裸足なんですか?」

「・・・?」

「部屋に、スリッパが置いてありましたけど・・・」

「・・・そうなの。知らなかったわ」


 カエデは、ユカリさんが2番という事は、アヤヒさんよりも先にここへ来ているはずで、それなのに食堂どころかスリッパの存在すら知らない事に驚くと同時に不気味に思う。

 カエデは、何を話せばいいか分からない為、無言で先を歩く。その後ろを、ぴったりとユカリがぺたりぺたりと裸足で歩く姿は、第三者が見たら「後ろ、憑いてますよ」と言われそうだ。幸い、食堂は一個下の階のためすぐ着くだろう。


「つ、ついたみたいですよ?」

「・・・そう、ありがとう」


 食堂と書かれたプレートを見て、カエデは安心した。別に何かされたわけでは無いが、心臓がバクバクと音を立てている。だが、食堂に着いてもユカリはカエデの後ろから先に進まない。


「えっと、入らないんですか?」

「・・・先にどうぞ」

「えっ、あ、はい・・・」


 カエデは、言われるままに食堂の扉を開いて中へ入るのだった。

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