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太陽の騎士団  作者: 丸居
ドワーフの国の厄災
29/31

第27話 カルペロ

28話になってましたね。申し訳ない…27話です。

誤字の訂正により、更新しました。

 荒野を駆け抜け、砂岩地帯を抜けたサニー達は、砂漠への入り口まで後もう少しのところまで来ていた。


 「太陽の騎士団だな。待っていた」

 

 鉄鎧を着た兵士長が、どうやらお迎えに来てくれたようだ。


 「ここは、ドワーフとの国境付近だ。だが、近頃は全くドワーフを見ない。共にいたドワーフ達も、様子を見にいくと行ったっきり、帰ってこない。心配だ」


 「もしかして、何があったのか連絡が来ていないのですか?」


 ウィリスが尋ねると、兵士長は頷いた。


 「ああ、砂漠を渡れる用意をして欲しいとラヴィエルから連絡があったっきりだ。新しい英雄が誕生して、砂漠を横断するから、もろもろの手伝いをしてあげろと命令が来た。それが終われば、国に帰ってこいと。いったい、何が起きているんだ?」

 

 「今、こんなことが」


 ウィリスは諸々の説明をし、兵士長は目を見開いていた。

 国に今までに無い脅威が迫っていると知れば、驚くのも無理はない。


 「そうか。そんなことが。これは悠長にしてられんな。来てくれ。カルペロの乗り方を教える」


 「カルペロ?」

 「行けばわかるさ」


 黄土色の土が広がり、家々や畑が集まっている。

 小さな石壁があるが、それらは途切れ途切れにいろんな場所に散乱している。

 太陽の騎士団が案内されたのは、カルペロと呼ばれる動物が群れで過ごしている場所だ。

 水場の近くで走り回ったり、ダンスのように飛び跳ねて回っている。

 太く強靭な足と爪、茶色の毛で羽は覆われている。口は大きく、硬い皮膚で守られていた。尻尾は太く、先端にコブがある。そのコブからは、深緑の蔦のようなものが尻尾に巻き付いている。蔦のようなものは、等間隔に硬いコブがあり、それは尻尾の付け根にまで伸びている。頭の上にも大きなコブがある。


 「こいつらは、カルペロ。砂漠のお供、君たちの旅の仲間だ。こいつなしで砂漠を渡るのは困難だよ」

 サニーやヘルメスの反応が微妙なのは、カルペロの様子に眉を顰めているからだ。

 サニー達に気づいた数匹のカルペロが集まってくる。人よりも倍ほどの大きさで、目の前にすると威圧感がある。

 サニーは恐れず、触れ合おうとした。

 

 「兵士長さん、触ってみてもいい?」

 「ああ、いいぞ。首のあたりを擦ってみてくれ」

 「触るね」


 サニーは言われた通りにやる。カルペロは首を近づけてきたが、自身の顔を使ってサニーの手を吹き飛ばす。

 そして、カルペロはサニー達を見下している。

 何かしたわけでもないのだが、ただただ、目線を下に向けて、見下している。他のカルペロも同様だ。

 すると、何を思ったのか、唾を吐きつけてきた。

 突然のことだったが、サニーは寸前で避けた。

 

 「…気に障ったかな?」


 カルペロはゲラゲラと笑っている。1匹は笑いすぎて後ろにひっくり返り、転がっていた。

 その様子に、サニー達は目を点にする。


 「さて、とりあえず、乗ってみようか」

 「ええ…」


 兵士長の提案にみんなは訝しむが、渋々従う。

 まずはサニーやヘルメスがカルペロの骨格に合わせた専用の鞍に乗る。

 数秒はおとなしかった。


 「カルペロは仲間想いの強い生き物だ。だから」


 しかし、背中に乗った人間に振り返り、考え事をするように見つめた後、急に飛び跳ね回った。

 振り落とされるサニーとヘルメス。カルペロ達は、地面でくたばる二人をゲラゲラと笑うように羽を広げたり、顔を近づけて馬鹿にするように舐め腐る。

 

 「この子らと一緒に砂漠を渡るって本気ですか?」


 「ふはは、こいつらはな、最高にめんどくさいのさ。遊びたがりで、怒られるのが嫌。気難しく、強情。今は君たちを試しているのさ。懐いてもらうには、辛抱強く触れ合ってくれ」


 兵士長の言葉を信じ、太陽の騎士団はカルペロ達と絆を深めることになった。

 旅に同行するのは、十匹。サニー達は総数二十人なので、二人一組で触れ合うことにした。


 サニーとアスラはペアになり、一匹のカルペロと対峙する。

 これは、戦いである。太陽の騎士団には、使命があるのだ。ここで、時間を無駄にはできない。


 「触れ合うって言っても、どこを触るのがいいのかな?」

 「頭とか下顎とか撫でるといいかも。コブのあたりは、多分」


 団員の一人がコブのあたりをさすると、カルペロは、不愉快な人間を突き飛ばした。


 「触らない方がいいね、大切なところみたい」


 兵士長が思い出したかのように、注意喚起する。


 「あ、コブは親しい仲間にしか触らせないぞ。水分を貯める場所で、カルペロにとっては生死に関わる場所だ。触った人はちゃんと謝るように」


 先ほど殴り飛ばされた団員は、何度も謝っていた。唸りながらも、謝罪を受け入れたカルペロは、乗れと言いたげに首を背中へと回している。


 サニーはカルペロに優しく声をかけた。


 「ねぇ、乗らせてもらってもいいかな?」


 サニーはカルペロに話しかけると、首を横に振った。


 「あなたに乗ってみたいんだ。とっても立派だからね」


 サニーの褒め言葉に機嫌をよくしたカルペロは、乗りやすいように足を曲げて、座った。


 「意外と単純なんだ。ねぇ、私も乗ってもいいかい?」


 アスラの言葉にカルペロは目を向けない。なんなら、プイッと顔を背けてしまう。

 そればかりか、虫を煙たがるように羽で追い払った。


 「アスラ、単純って言ったこと、怒ってるよ」


 サニーが静かな声で、アスラに理由を伝える。


 「ご、ごめん。単純って言っちゃって。君たちが素直なのが可愛いと思って」


 カルペロは許すか悩んだ後、こくんと頷いた。

 そして、アスラに背中に乗れと首を振って伝えてくる。


 「いいのかい? ありがとう」


 アスラはサニーの背中に張り付いて乗った。

 他の団員達も、それとなく乗ることができた。それを確認した兵士長は、前進する方法を教える。

 

 「カルペロは頭がいい。前進するなら言葉で伝えてくれ」

 「よーし、前進〜!」

 

 サニーの言葉に、カルペロは歩き始める。

 真っ直ぐ歩かず、緩やかに曲がる。

 時々、急に直角に曲がったり、飛び跳ねたりするので、振り落とされないようにするのが大変である。

 サニー達も、大きな動きがある度に、大慌てで必死にしがみついている。

 カルペロは後ろ目でその姿を見て、ニヤニヤと笑う。

 その顔を見たサニーは「もう、お茶目だね」と声をかけ、アスラは「元気があっていいね」と、感想を口にする。

 二人のカルペロ乗りは穏やかであるが、聖女組は

そうではない。

 クリスとウィリスのカルペロは飛び跳ねており、宥めるのに必死だ。


 「待ってください! 落ち着いてください! あー!」

 「う、ウィリスー!」

 

 飛んで行ったウィリスにカルペロは、煽るように笑った。

 ウィリスはムスッとして、カルペロを睨む。


 「もう一度、やらせてください」


 カルペロはやってみろとばかりに、舌を突き出した。

 サニー達のように乗りやすいように膝を曲げないので、ウィリスは鞍の紐に手を引っ掻けて登る。


 「ウィリス、行けそう?」


 「はい、行けます。この暴れん坊と長い旅にでるので」


 ウィリスの言葉尻を待たずに、カルペロは走り出す。

 そして、また、飛び跳ね回っている。


 「ちょ、ほんと気性が粗いわね」

 「うぐぐぐぐぐ」

 聖女組の躾は、難航しているようである。


 他の団員達も同じ様子で、一日中、カルペロに振り回されることになった。

 夕方ごろ、すでに太陽は地平線に重なっている。

 広場には、満足したように眠るカルペロの姿があった。尻尾を枕代わりにして、丸まって眠っている。

 何匹かは、お互いの尻尾を枕にしあい、眠っていた。その傍には、土埃と汗、泥、唾で汚れたサニー達が疲れ果てた顔で、頭を撫でている。


 「はぁ、やっと寝た。随分と早いねんねだね」


 「カルペロ達も遊べて満足している。久しぶりの来客に興奮したのだろう。これなら、明日には出発できる」


 太陽の騎士団が触れ合っていた姿を、見守っていた兵士長は、老人のような笑みを浮かべた。


 「え、一日しか相手にしてないよ?」


 「十分さ。あとは、旅をしながら絆を深めていけばいい」


 「これが、毎日、ですか?」

 

 ウィリスは、今後のことを考えて頭を痛める。初めての旅で、こんな暴れん坊達と共にするなど、経験がない。

 財政管理や運営管理、リリィから渡された手紙を届ける役目、これらの不安に加えて、カルペロが一挙に押し寄せてきた。クリスも手伝ってくれるが、使命感の強いウィリスは不安が尽きない。


 「ウィリス、大丈夫。カルペロのことは心配し過ぎないで。ウィリスとクリスのカルペロ、楽しそうだったよ」


 「え、そうなんですか?」


気持ちよさそうに寝ているカルペロの顔をウィリスはじっと見つめる。


 「そう思うと、可愛いかもしれません」と心の中で思うが、散々な体験に、その気持ちは掻き消された。


 「はあ、もう。そう思うことにします」


 広場には、鐘の音を鳴らす兵士がいた。

 寝ていたカルペロ達も起き上がって、大きな小屋の中に入っていく。


 「もう飯の時間か。太陽の騎士団の皆様方に食事を振る舞おう。明日の早朝には、荷造りの準備をするから、ご飯を食べたら早めに寝てくれ」


 サニー達は食事を摂り、久しぶりにふかふかのベッドの上で寝た。

 髪留めを外したウィリスが「ふかふかのベッドです!」と言って、身を預けた。その姿を見られたため、恥ずかしそうに顔を赤らめていた。

 サニーもシーツに頬ずりをして、安心しきった顔だ。

 旅の疲れを取るかのように眠り、早朝に鐘の音で起こされる。

 時折あくびをしながら、サニーは教わった通りに荷造りをしている。


 カルペロは一体で六つの木箱を運ぶ。体の両側にそれぞれ三つずつ、木箱を配置して、縄で専用の鞍に固定する。格子状に巻かれた木箱の上側に、軽くて丈夫な棒を通し、木箱を固定する。


 「休む時には木箱を下ろしてやってくれ。カルペロの体を休めるためにな」


 「うん、あと、木箱の上に色が塗られているけど」


 「それは、中に何が入っているか種類に分けているんだ。赤は食糧。青は水だ。黄色は衣服などの日用品になる」


 カルペロは合計で十匹なので、持ち運べる木箱は六十個になる。そのうちの二十箱は食料であり、もう二十箱が水分になる。残りの十箱が野宿に必要になる木材や衣服等になった。残りの枠は、サニー達が持ってバックを鞍に留め具で引っ掛けて、固定した。


 「君たちのバックに改めて、食料や火の魔法陣を刻んだ魔道具も入れておいた。これで、食事には困らないだろう」


 「何から何までありがとうございます。兵士長様」

 「無駄にはしないよ。ありがとう」


 「構わんさ。これが俺たちの仕事。それに、国を救うために旅をする騎士団の手伝いができるなど、誇らしいことさ」


 兵士長は両手を腰に当て、誇らしげに胸を張った。


 「俺たちは準備が整い次第、ラヴィエルに戻る。君たちの使命に天使の加護があるように祈っておこう」

 

 そうして、サニー達は十匹のカルペロと共に、出発した。

 

 重い荷物を運ぶカルペロのやる気は漲っている。鼻息も荒く、瞳は燃えていた。


 「そんなに飛ばすと疲れちゃうよ」


 サニーが話しかけると、カルペロは抗議するように羽を揺らす。

 後ろのカルペロを見て、ドワーフの王都の方向へと首を向けた。


 「何て言ってるんだい?」

 「…うーん、王都にも仲間がいるみたいだね。危険が迫ってるって分かってるのかも」

 「だから、頑張ってるんだ。ほんとに仲間想いじゃないか」


 アスラの言葉に頷くように、カルペロは吠える。

 荒れた大地を駆け抜けるカルペロ達と太陽の騎士団は、ドワーフの砂漠の入り口に、足を踏み入れたのである。


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