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太陽の騎士団  作者: 丸居
第一章 人間の国の厄災
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第19話


 正午、厄災来たる。

 その一報はラーハストの民を震撼させた。


 厄災が来ることは昨日のうちによく理解できていた。

 しかし、だからと言って、立ち向かう勇気が生まれるのかと言われれば、そうではない。


 日が出始めた頃に目覚めた人々は、不安げな顔で荷物の確認をしていた。


 食糧、衣服、大切な宝物、武器、お守り。

考えても何が足りないのかは分かりようがない。


 なにせ、ラーハストという都市の民が王都に避難することなど、今まで無かったのだから。


 不安を背に、避難民は戦闘の5時間ほど前に出発していった。


 「いっちゃったね」

 「ああ」


 サニー達は、歩く避難民を眺めることしかできない。


 「なあ、故郷を追い出されるってどんな気持ちなんだろうな」

 「…辛いよ、絶対」


 アスラが確信めいた目で言い、ヘルメスとサニーも頷いた。


 「ラーハスト、絶対に守ろう。そして、帰ってきてもらおう」


 サニーは決意を秘めた目で呟いた。


 さて、ラーハストには残っている市民が存在する。

 避難に耐えられない老人はこの町と共に最期を待つ覚悟はあるが、そうでない市民もいた。


 それは、故郷を離れたくないという気持ちを持ち、避難先での見通しが全く立てることができない市民達である。


 特に、若くして夫を亡くした未坊人や、幼い子供の多い家族、そして、出産をもうすぐ控えている妊婦などがそうである。


 また、家族をラーハストで亡くした者や、兵士のパートナーも残っていた。


 離れないといけないのに、離れることはできないい、したくない。


 そんな気持ちを非難してまで、王都に避難しろと告げることは控えるようにと、ライゼンは兵士全員に伝えていた。


 兵士の想いと市民それぞれが持つ想いが、無駄にぶつかり合うことを避けるためであろう。

 戦いの前に言い争いなど、もっての外なのである。


 厄災は自然災害と同義なのだ。

 その脅威を前に人々は一丸となって、それぞれの戦いをしなければならない。


 避難民が出発した後は、市民のほとんどは兵舎の周りに集まっていた。


 治癒園の中で祈る者もおり、天使の加護を受けようと熱心な信者がいる。

 また、子ども達が兵士と追いかけっこをしたり、腕に捕まって遊んでいたりする。


 兵舎の中はのほほんとした空気で、この先戦いが起こるとは誰も思わないように感じられた。


 打って変わり、城壁の外、南側。時刻は正午に近づいていた。


 最前線には騎士団とサニーが率いる第一部隊がおり、敵の侵攻を真っ先に止める役割を持っている。

 第二部隊と第三部隊は、側面側に漏れた敵を倒すために広範囲に横へと広がっていた。


 そして、リリィとウィリスは一切の護衛をつけずに城壁の上で共に静かに見下ろしている。


 地平線まで平野が続くこの場所で、戦士達は悠然と来たる厄災を待ち構えていた。

 数刻が経った。


 双眼鏡を持った兵士の目には、地平線から進軍してくる魔物と厄災が見えた。


 その兵士がめいいっぱいに笛を吹くと、国全体に警告が伝わった。


 戦いが始まると、全ての人間が理解したのである。


 兵士たちはそれぞれの武器を取る。

 耳をすませば、剣と鞘が擦れる音と静かな息遣いが聞こえる。


 魔物と厄災が近づいてくると、その姿が鮮明になってきた。


 厄災であるスライムは、水色の球体で空中に浮いてるかのように跳ねている。


 その前には、直立型のスライムが厄災スライムを守るかのように並んでいる。


 それは兵士の総数を超えるほどで、全てが人型をとっていた。

 スライム兵士と呼ぶべきだろう。


 頭部であろう頭には赤い核があり、それは目のように目の前の兵士たちを見つめていた。


 手と足は細長い三角形のようで、人間の動きではないが。


 「あれが厄災か。あんなに魔物がいるのは初めてみる」

 「うん、倒し漏れがないようにしないとね。ラーハストには1匹も近づけないよ」

 

 スライム兵士たちはまるで一つの生命体であるかのように、動きが均一だ。

 機械じみたその不気味さは、まるで感情のない兵士である。


 厄災の進軍が止まると、スライム兵士たちも止まった。

 そして、突如、ゆらゆらと液体のように動いていた体が、張り詰めた弦のように固定される。


 殺しにくる。誰もがそう思った。


 それは正しく、スライム兵士たちは走り出す。

 水の刃で目の前の獲物を切り刻むために。


 ラーハストの兵士が再度、笛を吹く。


 攻撃の合図だ。


 笛の音に呼応するかのように、兵士たちが雄叫びを上げ、走り出す。


 サニー達も、同様に武器を構えてスライム兵士と真正面から衝突した。

 水の刃は鋼鉄の如く硬い。


 サニーが剣を振るうが、水の刃で簡単に防がれる。


 最初から全力で行かずに、様子見をしながら戦うことにしているため、剣に魔力は倒していなかった。

 

 「流石に魔力を使わないで倒すのは無理だね」と心の中で思い、僅かに魔力を剣に通した。


 すると、次々と赤い角を切り刻み、数を減らしていく。


 サニー達が前衛で突っ込んでいくその勇姿に昂る兵士達。

 その光景を城壁の上からリリィとウィリスは眺めていた。


 「ウィリス、あなたもサニー達と戦ってもいいのですよ」

 「いえ、ここに残ります。厄災が動いてから、どうするか決めようと思います」

 「ふふ、頼りになりますね」


 ウィリスが自制心を持って行動していることにリリィは喜んでいるようだった。


 「あれはスライムが厄災化したものですね。自身の分身体を作り、その身を守らせる。スライム兵士は、厄災の分身体です。そして、厄災には悪魔の力が宿っている。聖女の力は、貴重です。ラーハストを守る結界を維持するのにも、厄災の力を弱らせることもできる。力の使い所を考えねばなりませんね」


 「はい! でも、サニーさん達なら、私の力が無くても倒せそうな気がします…」


 眼前に広がる光景を厄災は見ていた。

 人間達が我々の進軍を邪魔している。

 厄災は考えていた。

 人間の心を折るために、その愉悦に浸るためにはどうするべきか。


 「リリィ様!」

 「ええ、気配が一層強くなりました。攻撃がきますよ」


 リリィとウィリスは、握っている錫杖に魔力を込める。

 厄災は、分身体を生み出した。

 それは、上空でふわふわと浮かんでいる。

 赤い核には魔力がふんだんに蓄えられているようで、スライム兵士よりも大きいかった。


 その魔物は、通称、浮遊スライムである。

 浮遊スライムは、厄災の上を回り続けていたが、急に散らばった。

 そして、赤い核が淡い光を放つと、魔力が光線の如く飛んでいく。


 「結界を維持します」


 リリィが端的に伝え、二人の聖女は結界に魔力を込め出す。


 治癒園で結界を生み出している魔法陣で祈りを続けていたクリスも、ラーハストが攻撃されていることに気がついたのか、魔力をさらに込めていった。


 さて、魔力の光線、魔光線は何もラーハストだけを攻撃してはいなかった。


 それは、前線で戦う兵士たちの頭上からも降り注いでいたのである。

 突然の攻撃に対応できない兵士もおり、頭から体全体を貫かれ絶命している。


 「飛んでるやつを倒しにいくぞ!」

 「私たちも行くよ!」


 グラセムは、真っ先に遠距離攻撃型の魔物を倒すことを決めて、サニー達もそれに続く。


 風の魔法を行使して、スライム兵士達を叩き潰しながら、上空の浮遊スライムに向けて、飛んだ。


 魔光線が飛んでくるが、それを紙一重で交わしたサニーは、赤い角を真っ二つに切る。


 「あ」


 しかし、上空では体の制御が効きにくいため、真光線を集中して撃たれると、流石のサニーでも避けきれない。


 だが、サニーは腕に魔力を込めることで、受け止めることに成功する。

 攻撃を受け止めたその腕は、肉が鉄板で焼かれるような音をしていた。


 「グラセム様から教わった通りだね。魔光線は魔力の塊だから、体が頑丈なら耐えられる」

 「でも、あんまり耐えられるものでもないだろ。厄災も多分、魔光線を撃ってくるぞ。それは、避けろよちゃんと」


 サニーの体では厄災の眷属の魔光線で腕を損傷する可能性があるのだ。

 いくら、頑丈であっても限度というものがあるのである。

 避けるにこしたことはない。


 「うん、わかった。次に行こう」

 

 ラーハストを絶えず攻撃している浮遊スライムは、厄災の周りを周回している。

 まだ、厄災までは遠いが風の魔法で近づけばすぐに辿り着く距離だ。


 「グラセム様、厄災の方に行っていい?」


 スライム兵士を相手にしながら、サニーが聞く。

 片手で簡単に核を切り刻んでいくグラセムは、鷹揚に頷いた。


 「構わない。だが、どんな攻撃をしてくるか未知数だ。お前達、3人だけで行ってこい。まずは、様子見からだ。厄災自体は少人数で相手にする方が被害が少ない」


 グラセムの返答を聞いたサニー達は頷き、一気に風の魔法で厄災に近づいた。

 空中を飛んでいるサニー達の下にはスライム兵士が今か今かと待ち構えている。


 しかし、そんなのはお構いなしで突っ込んでいき、魔力剣で一気に薙ぎ払う。


 ヘルメスとアスラもそれぞれの武器に魔力を込めて、スライム兵士を倒していた。

 そんな状況に危機を感じたのか、厄災は動きを見せた。


 甲高い悲鳴のような鳴き声と共に、厄災は自身の体から分身体を生み出した。


 高速で回転する回転スライムである。

 赤い核を中心に、水の刃がプラペラのように高速で回転している。

 大きさは小さいが、高速で動いていた。


 それが、数十匹とサニー達の周りを機械的に精巧に動いている。


 1匹が飛来すると、サニーの頬を掠めた。

 頬からは血が滴り、地面に落ちる。


 「うえ、すばっしっこい!」

 「あたらねぇな、うお!」


 ヘルメスが槍で飛んでいる回転スライムに向けて、魔力を飛ばすが、簡単に避けられてしまう。


 お返しとばかりに、ヘルメスの体に目掛けて突進してくるが、なにも前からだけではない。左右、上からも回転スライムはやってくる。


 人間の目は後ろや横にはついていないので、サニー達は避けるのに苦労していた。

 

 「おびき寄せて叩くしかないね。でも、ハンマーじゃ相性が悪いよ」


 アスラは重いハンマーを持っているとは追えないほどに軽やかに避けている。まるで、どこから攻撃が来るのかわかっているかのようだ。


 「アスラ、避けるの上手いね! どうやってるの?」


 「気配に反応してるだけだよ。厄災の眷属は魔力が濃くて分かりやすいから、気配を感じやすいよ。集中してみて」


 スライム兵士の相手をしながら、アスラはにこやかにいう。

 言われた通りに、二人は気配を感じ取れるように集中した。


 「あのスライムの気配を覚えて、似たような気配があれば、避ける感じでいいのかな?」とサニーは心の中で思い、実際に試してみる。すると、後ろから気配を感じた。


 なので、避けてみると回転スライムが横を通り過ぎていった。


 「できた!」

 「お、おれもなんとかいけたぞ!」


 サニーは無傷だが、ヘルメスは少し避けるのが遅れたのか、服が破れ出血している。

 だが、感覚は掴めたのか、回数をこなしていくうちに完璧に避けることができていた。


 「よーし、反撃だよ!」


 左右上下からやってくる回転スライムを、サニーとヘルメスはタイミングを合わせて赤い核を叩き潰していく。


 回転スライムの数がみるみる減っていることに厄災は気付いたのか、更なる分身体を数十体生み出した。

 

 回転スライムとは打って変わって、今度は大きいスライムだった。スライム兵士とは違い、数倍は大きい。赤い核は手のひらと顔の部分を合わせて三個あり、魔光線を放っている。

 巨人スライムである。


 「大きいのは、私の領分だね!」


 アスラはハンマーを握り、巨人スライムの下へと走り出す。

 放たれる魔光線を避け、アスラを切り刻もうと腕にある水の刃が回転するが、そんなことはお構いなし。


 アスラはハンマーを魔力で強化すると同時に、巨大化させる。

 ハンマーは淡い青色の光を放っており、そして、巨大スライムの腕を真正面から殴った。


 硬い水との衝撃音とともに巨腕は抉られ、赤い核が砕けた。巨大スライムの核は残り二つあったが、流れるようなハンマーの軌道と足の動きにより、安易に砕けることになった。


 「やっほーい!」


 パキンと割れる赤い核が心地よいのか、アスラは興奮気味だ。


 昂る気持ちを糧に、次々と巨大スライムを倒していく。もちろん、回転スライムの攻撃を避けながらである。


 快進撃を遂げているサニー達であったが、遂に厄災自身が攻撃の手を下してきた。


 サニー達は煩わしいと思っているのだろうか。

 回転スライムを作り出し、それを厄災本体の体から長細い腕のようなものを伸ばしてつかんだ。

 そして、次々に地中へと穴を掘るかの如く進んでいく。

 厄災の気配が変わったことに気づいた三人は、これから何が起こるかは理解できていない。

 しかし、すぐに理解することになった。


 「地中にいっぱい気配がある!」


 サニーは慌てて、二人に伝えた。

 目で見ることはできないため、数えることはできないが、サニー達が絶対に逃げられない数であることは確かだ。

 3人の額は、近づいてくる気配に脂汗が垂れる。

 まず、襲われたのはヘルメスだった。

 だが、助けることは不可能。


 アスラとサニーもほぼ同時に攻撃を受けていたからだ。


 真下から体を貫こうと、一直線にスライムの細い腕が出てきた。それを間一髪で避ける。


 サニーは一発目は避けれたが、二発目が僅かにあたり体勢を崩されてしまった。


 そのサニーの周りから、地中より這い出てきたスライムの腕が取り囲み、体を穿かんと襲いかかる。

 しかし、サニーは風の魔法により足を無理やり回転させた。

 体ごと回転することになったサニーは、そのまま剣でスライムの腕を次々と切り刻んでいく。


 「へへーん、こっちも回転してやったよ!」


 ざまぁみろとでも言いたげに、顔をいたずらっこのような笑みを浮かべる。


 「全く危ねぇ。心配して損したぜ!」


 ヘルメスもステップを踏みながら、スライムの腕を避けては横殴りに振って切り刻んでいる。

 アスラも避けることを優先にしながら、どうしようもない攻撃はハンマーで防いでいた。

 べたりとハンマーに引っ付く粘り気のある液体が気持ち悪い。

 それをハンマーで振り払いながらも嫌気がさす顔をしている。

 

 「厄災に近づけないのに、攻撃はどんどん苛烈になっていってる。このままじゃ、埒があかない」


 厄災はすぐに近づける場所にいるが、遠い。

 スライム兵士はもちろん、回転スライムは頻度は少ないが増殖されているようだ。

 敵の数が一向に減らないのである。


 「敵の数が全然減ってねぇからな。まずは分裂を止めねぇと。無理やり突っ込むか!」


 「いや、地面から来る攻撃と地上からも攻撃してくるんだよ? 避けれるのかい?」


 「やってみなきゃわかんねぇ。未知の相手だ。危険は承知でなんでも試すしかねぇだろ?」


 「じゃ、一番乗りで行ってくるー!」

 「あ、おい!」


 ヘルメスの制止を聞かずにサニーは風の魔法で一気にスライム兵士の間をすり抜けていく。

 急接近する人間を認識した厄災は赤い核を持った浮遊スライムを飛ばしていく。

 そして、浮遊スライムは魔光線をなん度もサニーに向けて放っていく。


 「まずは、一発攻撃を入れないとね」


 剣に魔力を込めていく。魔力が淡いオレンジ色の光を放つが、時間が経つにつれて太陽の如く明るい色になる。


 「う、きっついけど、いける!」


 絶え間なく素早く魔力を送り続けるサニーの腕は血管が浮き彫りになる。


 両手で剣を持ち、厄災に向けて横殴りに一閃した。

 伸びた魔力剣が遠くの厄災の体を襲う。


 厄災スライムの赤い核へと魔力剣が届くと思われたが、止まった。 


 「あれ、動かない!」


 サニーはなん度も力を入れるが、全く動かない。

 赤い核に近付いていた魔力剣は締め付けられるように抑えられている。

 動きが止まったサニーに向けて厄災は、地中から攻撃を放った。


 「やば、解除解除」


 慌てて魔力を霧散させ、サニーは魔力剣を戻す。

 回転スライムやスライム兵士も同時に襲うが、それはアスラとヘルメスが隙を埋めるように援護してくれた。


 「厄災ってのはとんでもねぇな。あの魔力剣が止められるなんて思ってなかったぜ」


 「わたしもびっくりだよ。全力でやったはずなのに。もっと強いやり方を考えないと」


 「上空から突き刺せばいいんじゃない? 私のハンマーみたいに巨大化させてから」


 「いいかもそれ! でも、攻撃するまでの時間が長いから避けられ…」


 サニー達が次の攻撃を考えていると、厄災が突然叫びだした。


 サニー達を襲う回転スライム達が厄災の元へと戻り、吸収されていく。

 そして、厄災大きく飛び跳ねた。


 空中にいる厄災の一際大きな赤い核が赤い閃光を放ち、平野全体を照らす。

 

 攻撃が止んだ城壁にいる聖女は気づいた。


 リリィーがガンを飛ばすして厄災を睨む。


 「特大の魔光線が来ます。結界は捨てますよ。全力でシールドを張りましょう」

 「はい!」

 赤い閃光を飲み込むかのように、錫杖からも光が放たれる。

 もし、防がなければ、兵舎や治癒園にいるクリス達もろともラーハストは蒸発することになるだろう。

 全力を出さない理由などない。

 赤い閃光が一点に集中した瞬間、魔光線は放たれた。

 放たれた魔光線に誰もがラーハストへと目線を向ける。

 結界をいとも簡単に破り、二人の聖女の元へと辿り着く。


 「「シールド!」」


 空気圧が戦場全体に駆け巡り、兵士の兜を吹き飛ばす。

 大きな風と衝撃がサニー達を襲った。


 魔光線を受け止める特大のシールドに亀裂が入っていく。

 横に逃げた魔光線のエネルギーが城壁の瓦礫を吹き飛ばしていく。

 

 魔光線はまだ、止まらない。

 ウィリスとリリィはさらに魔力を込めていくと、光を放つ錫杖は一層に輝く。

 そして、二人の体から湯気と血が噴き出た。

 終わらないかに思えたが、魔光線は徐々に細くなっていった。

 防ぎきったのである。

 城壁の上には頼もしい二人の聖女の姿。立ち塞がるその守護者の姿に、兵士たちから歓声の声が上がる。


 戦う前から士気は高かったが、より一層に士気は高くなった。

 だが、代償に二人は重傷を負うことになった。

 すかさずグラセムがやって来る。


 「リリィ、ウィリス。大丈夫か」

 「うう、動けません。少し休まないといけないです…」

 「ダメ、ですね。二発目は確実に防げません。残った市民を無理やり避難させるべきでしょう。グラセム、伝令兵を見繕って治癒園にいるクリスに伝えてください。彼女も事態は把握していると思いますから」

 「了解した」


 リリィの命令にグラセムは頷く。そして、伝令を見繕いに行った。


 「あれほどの攻撃の後であれば、弱体化しているはず。執拗な攻撃も止んでいますし…後は、前線の皆さんに託すしかないですね」

 「うう、サニーさん達と戦いたいです…」

 「ウィリス、聖女の力は強力です。ここぞという時にまで力は溜めておくべきですよ」


 リリィがウィリスの頭を撫でる。


 「む、私はもうそんな子供じゃないですよ」

 「まぁ、いいじゃないですか」

 

 城壁の聖女達は静かにその時を待っていた。

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