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太陽の騎士団  作者: 丸居
第一章 人間の国の厄災
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第18話


 第一部隊の兵士が宿舎を飛び出した頃、サニーとヘルメスの治療は無事に終わっていた。


 ウィリスがサニーを、クリスがヘルメスを担当し、傷は癒えたのである。


 サニーはウィリスの目を見て、覚束ない言葉で行った。


 「ごめん、ウィリス。久しぶりに会うから、かっこいいとこ見せたかったのに…」

 「謝る必要なんてありません」


 ウィリスが自身の膝をつねるように握りしめた。


 「かっこよかったです。あの悍ましい気配に立ち向かって、傷だらけになっても戦ってたんですよね」


 ウィリスもメルビンの気配を直に浴びている。

 その恐怖はよく理解しているのだ。


 「私はその、けっこう臆病なんですよ。サニーさん」

 「はは、ウィリスは頼りになるのに…」

 「…ありがとうごさいます。今は眠って下さい。少し寝たら、意識も鮮明になりますから」


 ウィリスの言葉に頷いたのか、サニーは眠りについた。

 すやすやと寝息を立てているため、しっかりと傷を癒すことはできたのである。

 峠を越えた安心感からか、ウィリスとクリスも肩の力を抜いた。

 アスラもずっと心配していたため、疲れが溜まったのだろう。椅子に座って眠っている。


 「クリスさん、久しぶりですね」

 「ええ、ウィリス。あなた、こんなに大きくなったのね」

 「いえ、体だけが大きくなってるだけですよ」

 「相変わらず、自信がないわねぇ」


 クリスが我が子を見るような目で、ウィリスの頭を撫でる。


 「あなたは強いでしょ。騎士団と一緒に各地を走り回ってるくせに、よく言うわ」


 「でも、皆さんがいるから立ち向かえてるだけです。一人だったら、きっと、逃げちゃいます」


 ウィリスの言葉にクリスは深いため息をついた。


 「まあ、いいわ。取り敢えず、私たちも休みましょうか」

 「はい」


 クリスの体はライゼンの治療を経ているため、もう動かないのである。

 ウィリスもラーハストについてからは一度も休んでいないため、明日のためにも体を休めておかなければならない。

 仮眠用のベットでサニー達と同じ部屋に寝て、すやすやと寝息を立てた。


 しばらくして、部屋の扉が乱暴に開かれた。


 「クリスはいるか?」

 「ん、ライゼン?」

 「すまん、疲れているだろうが、防衛網の構築をしたい。明日の昼には厄災が来る」

 「厄災! 明日!」


 クリスが飛び跳ねるように起きたことで、寝ていた四人の意識が覚醒する。


 「こうしちゃいられないわ。ウィリスもきて! ライゼン、邪魔よ!」


 「はい! サニーさん達はまだ安静にお願いします!」

 「お、おい、あまり無理するなよ」

 「今更よー!」


 扉の前に陣取っていたライゼンはすっと避けて道を譲る。

 ライゼンは走り去っていく後ろ姿に心配の声をかけるが、ばっさりと切られた。


  サニーは厄災という言葉を聞き、共に戦う仲間として兵士達がいたことを思い出した。


 「ライゼン、第一部隊の兵士はどうしてるの?」

 「ああ、今は騎士団と一緒に訓練してるぞ」

 「なら、私たちも行かなきゃね」


 サニーにヘルメスも同意する。アスラも同様であったが、ソワソワとし始めた。


 「その、ちょっといいかい?」

 「ん? どうしたの?」

 「二人横に並んでくれるかい?」

 「なんだなんだ?」


 ベットの上でちょこんと兄妹が座る。

 アスラはゆっくりと手のひらを広げて、二人を一緒に抱きしめた。


 「そのさ、また、一人になっちゃうかと思ったよ」

 「あ、そっか。ごめんね。アスラ」

 「すまんかった」

 「許す」


 アスラは抱きしめる力を弱め、二人から離れた。

 サニーは立ち上がって、アスラの肩を掴む。


 「アスラ、私たちは絶対に死なないよ。大丈夫」

 「ああ、そのためにも、まだまだ強くならねぇと」

 「そうだね。じゃ、行こうか」


 三人が走り去る光景をライゼンは腕組みをして黙って眺めていた。


 「俺も、やるべきことをやらないとな」


 それぞれが何かしらの使命を持って、これから来る脅威に立ち向かっている。

 それを喜ばしくも羨ましくも思うライゼンは、独り言をポツリとつぶやいた。


 第一部隊の兵士達は騎士団とともに訓練を受けていた。

 内容は打ち合いであるが、騎士達は兵士たちの粗い動作やぎこちない部分を洗い出していた。


 「そこだ。力が一瞬抜けている。もっと思いっきり振ってみろ。優しさはいらん」

 「おらぁーー!」


 真剣が僅かな火花を散らす。

 剣がぶつかる音がそこら中から聞こえ、兵士たちの雄叫びは空へと響き渡る。

 兵舎の訓練場は熱気を帯びていた。

 そして、サニー達はその熱気に当てられる。


 「すごい。みんな、やる気一杯だよ!」

 「あ、ああ」

 「何があったんだい」


 アリエルがサニー達に気付いたのか、駆け寄ってくる。

 兵士たちも、アリエルの後に続き、サニー達の前へと整列した。

 ガイアが一歩出て、胸を張る。


 「サニー隊長! 共に戦えず、申し訳ありません!」

 「申し訳ありません!」

 「わぁ」


 サニーはちょっと驚いたように感嘆の声を上げる。


 「みんな、顔を上げて」


 兵士達は緊張の面持ちで顔を上げた。


 「みんなに言いたいことがあるんだ」


 サニーはポリポリと頬をかいて、自分の気持ちを伝える。

 「私にとって仲間ってさ、ヘルメス兄とかアスラとかウィリスとかのことを言うんだよ。でもね、みんなのことも思い浮かべちゃったんだよね。いつの間にか、みんなも仲間になってたんだなぁって」


 兵士達は目を見開く。どんな叱責が来るのか、どんな落胆の声が来るのか、兵士達は各々が予想して、震えていた。しかし、サニーは怒ることもせず、兵士達のことを仲間と言った。その言葉は、兵士たちの胸にゆっくりと静かに浸透していく。


 「だから、こうやって強くなろうって思ってくれたこと、すごく嬉しいよ。みんなの隊長として追いつかれないように、私も強くなるから覚悟してついてきてね」


 サニーが満面の笑顔で締めた。

 その笑顔は太陽のように明るい。


 「はい! サニー隊長!」

 「えへへ」


 兵士達の声が辺り一体に轟く。その返事に、サニーは思わずにこやかに笑った。


 「じゃ、訓練に戻ろっか」


 兵士達は一斉に散らばり、己を鍛えるために訓練に励む。


 「俺たちはどうする?」

 「グラセム様いないかなぁ」

 「ここにいる」


 サニー達の後ろには、いつの間にかグラセムが立っていた。


 「手合わせしよう。三人同時で来ていい」

 「いいのかい?」

 「ああ、遠慮なく来い」


 アスラが本気かと問うが、グラセムは本気だと言いたげな表情で頷いた。


 「よーし、グラセム様なら安心して全力をぶつけれる」

 「2年前よりは強くなったところを見せてやるぜ」


 サニーとヘルメスは意気込んでいた。


 「もしかして、会ったことがあるのかい?」


 アスラはヘルメスの2年前という言葉から考えたのだろう。

 二人の過去が気になって聞いた。


 「うん、私たちの村に厄災が来たんだけど、グラセム様とリリィ様がやっつけてくれたんだ。戦い方も教えてくれたんだよ」

 「へー、だったら、成長したところを見せないといけないね」

 

 三人はそれぞれの武器に魔力を込めていく。

 まずはサニーの魔力剣がグラセムを襲った。


 伸びた斬撃をグラセムは片手で叩きつける。

 ヘルメスも高速の連撃をお見舞いするが、グラセムは攻撃を見切っているのか、流すように槍を受け流し、避けていく。


 連撃が終わった反動で、ヘルメスは動けなくなり、その隙は致命的だった。風の魔法で高速で接近したグラセムは横殴りに剣を振るう。


 両手を突き出して、槍の取っ手で受け止めるが、あまりの衝撃に訓練場の壁まで飛ばされてしまう。そして、そのまま、壁を突き破ってしまった。


 ヘルメスが飛ばされた後、アスラは思い切りハンマーを叩きつけた。

 暗黒騎士を地面に叩きつけた攻撃だが、グラセムは手の甲に魔力を瞬時に込め、簡単に受け止めてしまう。


 それだけでは飽き足らず、ゴミを払うかのように振り払った。

 しかし、それは強力で、ハンマーが思わず手から離れそうになる。


 焦ったアスラが、慌てて力を入れるが、その一瞬をグラセムは魔力剣で刈り取った。

 アスラも壁に激突して穴を開ける。

 

 「グラセム様、覚悟ー!」


 サニーは再度、魔力剣で応戦する。

 先ほどよりも伸びが素早く、横振りの早さも上がったが、グラセムは一歩も動かずに剣で受け止めた。


 「まだまだ」


 サニーはもっと早く魔力剣を振るう。しかし、グラセムは受け止めることだけでなく、反撃をしてきた。

 二人の距離は離れているが、近距離で戦っているかのように、魔力剣の乱舞が始まる。

 グラセムの魔力剣は固く、厚い。それが、サニーの魔力剣を上回る早さで、サニーの元に迫る。

 たった数秒でいくつもの斬撃が来るが、サニーも負けていない。

 アクロバティックに避けながら、反撃をする。

 その応酬に、周りの兵士の手が止まり、見物していた。


 「う、しんどい」


 サニーは魔力の使い過ぎにより、体が悲鳴を上げ始めた。

 たが、力を全て使っても戦えるまで戦う。

 その方が、魔力の安定力を身につける練習になるからだ。

 事実、サニーはどれだけ大怪我を負っても、魔力の安定性が乱れることは殆どない。


 「魔力が安定しているな。だが、体が追いつかないか」


 グラセムはサニーが弱っていることを魔力剣の斬撃が遅くなったことから感じ取り、距離を一気に詰める。

 風の魔法を用いて、高速で接近したのである。

 近距離で数回撃ち合いするが、サニの剣は弾き飛ばされた。

 ブルブルと手の筋肉が震える。

 サニーはばたりと倒れた。


 「負けたぁー!」


 大の字に倒れ込み、悔しそうに叫んだ。


 「グラセム様に一回だけでも攻撃当てたかったのにー!」

 「2年前に比べたらとんでもなく強くなっている。誇っていいぞ、サニー」

 「ええー?」

 

 訝しげにグラセムを見ていると、アスラとヘルメスが帰ってきた。


 「私のハンマーを簡単に吹っ飛ばすなんて、どんな原理なんだい」

 「お、俺の槍が、簡単に」


 アスラとヘルメスはグラセムの強さに驚いていた。

 サニーはグラセムの異常な部分を思い返してみる。

 アスラとヘルメスの攻撃力はサニーもよく知っている。

 それを、全く動かずに受け止めていた。

 なんなら、アスラの重いハンマーを片手で受け止めていた。

 そう言えば、暗黒騎士も弾いていたことを思い出したサニーはグラセムに問う。


 「グラセム様、アスラのハンマーってどうやって弾いたの?」

 「ふむ、今のお前たちなら十分な下地ができているからな。教えよう」


 グラセムは試しに魔力を拳に貯めた。

 それをサニーたちに何回も見せるように繰り返す。


 「なにか、気づくことはあるか?」

 「うーん?」


 サニーは頭を捻って考えてみる。取り敢えず、自分も同じようにして、魔力を拳へと通してみた。


 「あ」


 サニーがふと気付いたように声を上げる。


 「グラセム様、魔力を通すのがとっても早いね」

 「そうだ。普通はこんなはやく魔力を通さない。なぜなら、素人がやるとすぐに体が壊れるからだ。では、こんなにはやく魔力を通す理由はなんだ?」


 その問いに、ヘルメスが思いついたように答えた。


 「瞬時に扱える魔力を増やすためか?」

 「正解。そして、もう一つ理由がある。サニー、全力で俺を攻撃してくれ」


 サニーは魔力をふんだんに込める。魔力のベールが厚く揺らいでいた。そして、グラセムを攻撃する。

 グラセムは剣を構える。

 剣は一瞬で魔力が帯び、サニーの剣を受け止めた。

 

 アスラはグラセムとサニーの状況を比べていた。

 「あれ、グラセム様はそんなに疲れていないね。サニーは、全力で使ってるから、めちゃくちゃ息が上がってる」


 「お、ほんとだ。これって、グラセム様が強すぎるわけじゃないんだよな。多分」


 サニーは疲労感からか、膝に手を当てて息をしていた。


 「サニー、長時間の魔力の行使は疲れるだろ?」

 「う、うん」


 「疲れるのは魔力を長時間、流しているからだ。しかし、それは瞬時に流す魔力量を増やし、すぐに放出することで避けれる。そのためには、相手の攻撃をよくみて、受け止めるまでの流す時間やタイミングをはかる必要がある」


 「てことは、今からその練習をするのか」

 


 「ああ、これができれば、強力な攻撃を何度も受けとめることができる。ヘルメスのような連続攻撃であっても、アスラの一撃必殺の攻撃でもな」

 

 グラセムに、試しにやってみろと言われた三人は、取り敢えず心臓から拳に魔力を繰り返し流してみる。

 今まではゆっくりと丁寧に流していたのを、素早く流すのである。

 その反動は我慢できるものではなかった。


 「い"」

 「な、なんだ。これ」


 アスラは声もあげずに、必死に痛みに耐えるように腕を掴む。

 腕の内側から溢れ出さんとばかりに痛みが漏れ出してくるためだ。

 それは、幻肢痛などではない。腕から血が吹き出しているのだから。


 「ちょ、これ、だいじょうぶなのか? 疲れはあんまり感じないが」

 「初めてやることだからな。慣れれば、血を噴き出すことはなくなるが、それでも痛いものだ」


 魔力を初めて使った時と同じような恐怖を三人は味わっていた。


 「なんか、思い出すね。初めて魔力を使ったこと」

 「今回はそれの進化版とでも思ってくれ。鍛え方

は変わらん。慣れるまで繰り返すだけだ。慣れれば、俺の攻撃を受け止めるようにしようか。これが扱えるようになれば、魔物や悪魔の全力攻撃を何度でも、真正面から対抗できるようになる」

 「……本当なの? それ?」

 「ああ」


 サニーは確かめるように聞くと、グラセムは自信のある声で頷いた。

 もし、それが本当ならば、救える命がどれほどあったのか、サニーは知っている。


 それから、サニーたちの訓練は始まった。小一時間ほど続けながら、魔力を素早く流す訓練をする。


 すると、感覚を掴んできたのか、真っ先にサニーがグラセムにお願いした。


 「グラセム様、攻撃してきて!」


 頷いたグラセムは、魔力剣を一瞬で作り上げ、攻撃力を確認する。


 先ほどの理論は攻撃にも応用できる。

 暗黒騎士のように、爆速で家を真っ二つにするような真似事も人間にできるようになるのだ。


 試しに遠くの的を一瞬で真っ二つにして、サニーがイメージを掴めるようにする。

 そして、同じようにサニーを攻撃した。

 サニーは習った通りにやり、グラセムの剣を受け止めた。そればかりか、弾き返すことができた。


 「やった!」

 「喜ぶのは早い」


 グラセムは続け様に攻撃をする。油断していたサニーは慌てて魔力を通すが間に合わない。受け止めた剣は衝撃を殺せず、サニーは残像を残して吹き飛んでいく。


 「……」

 「…サニー」


 アスラがポツリと心配そうに名前を呟いた。

 サニーは壁を盛大に突き破り、転げ回った。たまたま通りかかった兵士がなんだなんだと騒ぎ出している。何人か巻き込まれているが、サニーは気にもせず立ち上がった。


 「うへぇ」


 周りの惨状を見て嫌な顔をする。

 壁穴と内装が乱れた部屋、そして、巻き込まれた兵士が倒れている。


 「あー、怒られるかなぁ? まぁ、いいや」


 サニーは気にすることをやめた。

 今は訓練中なので、そっちに集中する方が大切だからだ。


 グラセムの元に戻り、3人はどんどん攻撃を受け止めていく。


 何度も何度も吹き飛ばされてはの繰り返し。


 長い時間が経ち、グラセムも多少は息が上がっていたが、まだまだ余裕がありそうだった。

 ヘルメスとアスラは、もはや力が出ないのか、一歩も動くことができないほどであり、地面に仰向けに倒れていた。


 「よし、訓練を終わりにしよう」

 「グラセム様、もう一回だけ!」 


 サニーはまだまだいけるのか、元気に飛び跳ねて手を振っている。

 

 「いくぞー!」

 「かかってこーい!」


 サニーは最初の時とは目に見えて、何度も攻撃を受け止めることができている。

 なんなら、防御するだけでなく攻撃することもできていた。

 だが、グラセムにはまだ届かない。届くはずもない。


 「うぐ」


 魔力の制御が間に合わず、グラセムの魔力剣を受けた。


 当然、飛んでいき、壁に穴が開く。だが、サニーは金属の反響音のようなものにぶつかった。


 「い! いっだぃ」


 壁よりも硬い感触に思わず苦痛の声を上げる。

 サニーは痛みの原因を探るために、頭を抑えながら立ち上がると目に映るのは透明な壁。


 「あれ、シールドだ」

 「まったく、やり過ぎですよ」


 呆れたように声を出したのはリリィである。

 その後ろにはウィリスとクリスがいる。


 「こ、ごめんなさい。あれ、リリィ様、どうしたの?」


 「厄災に対しての準備はある程度整ったので、段取りを話したいんですよ。それでここに来たら、急にサニーがとんでもないスピードで来るのを感じて。思わず、シールドを出しちゃいました」


 リリィからはサニーの姿は見えなかった。だが、危険な気配を感じ取り、すぐに魔法を行使したようだ。

 リリィもサニーたちが訓練している内容はすでに習得済みなのであろう。

 並の聖女であれば、防御すら間に合わなかった。


 「すでに各隊長を集めています。兵士たちにはのちに隊長から厄災がやって来ることを伝え、持ち場の確認を行なってもらいますよ。来てください」

 「わかった!」

 「グラセム、今日の訓練は終わりです。行きますよ」

 「ああ」


 ラーハストには第6部隊まで、部隊がある。

 会議室にはその各隊長が集まっていた。

 第一部隊の隊長であるサニーも同席している。

 近場でサニーを見た各隊長は、サニーを睨むような目で見ている。


 なんか睨まれてる、と思うが、それはただの勘違いである。


 ラーハストに直接厄災が来ることを伝えられた隊長たちが緊張感を持ち、仕事を真剣にやろうとしているだけなのだ。


 「さぁ、防衛戦と避難民の誘導について話し合いましょう」


 会議室では、各隊長が意見交換をしていく。ものの数時間で会議が終わると、ぞろぞろと走り去っていった。

 それはサニーも同様で、いち早く部隊の仲間に伝えにいったのである。


 第一部隊の宿舎では、サニーの帰りをみんなが待っていた。

 なにやら重要な会議だと知らされていたため、眠るにも眠れなかったのである。


 サニーの姿を見た途端、第一部隊の兵士は今後何が起こるのかを聞きたそうな目で着席していた。


 「ごめんね。待たせちゃって。明日のことを話すよ」 


 サニーの真剣な言葉に兵士たちはゆっくりと頷き返す。


 「明日の正午、南方面から厄災がやってくる」

 「……」


 兵士たちはただ、サニーの言葉を聞いていた。


 「私たち第一部隊は、厄災の討伐隊に抜擢された。騎士団と一緒に戦うことになる。みんな、いける?」

 「はい!」


 兵士たちが息を合わせて返事をした。


 「サニー隊長」

 「何?」

 「市民が避難の準備を始めていると伺っています。どこに避難するのですか?」


 「それは王都になったよ。もう受け入れ準備を始めてるみたい。もちろん、第6部隊と第5部隊が護衛につくから、無事に王都に着くと思う」


 サニーの言葉に兵士たちは安堵の表情をした。

 サニーたちはラーハスト出身ではないが、兵士たちはここが故郷である人が多い。

 家族の安全を心配する兵士もいるのだ。


 「避難するって言っても、ここに残るって言う人もいるみたい。みんなの大切な故郷を守るために、私も全力で頑張るから、みんなの力を貸してね!」

 「おお!」


 兵士たちは雄叫びをあげて、返事をした。

 それは、来る厄災の恐怖に慄くような返事ではない。


 「それじゃ、明日のためにさっさとねちゃおう!」


 兵士たちは部屋に戻り、明日の戦いに向けて休憩を取るのであった。


次回から厄災戦です

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