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太陽の騎士団  作者: 丸居
第一章 人間の国の厄災
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第10話

本来、襲撃編で組み込む話でしたが、字数が1万を超えるかもしれないので分けることにしました。

 長すぎると時間がかかり読みにくいと思いますし、作者の技量ではうまくまとめて書けなかったので。

 今話はライゼンの視点になります。

 リーダーとはなんだろうか。

 俺は幾分とその悩みに苦しんでいる。

 一番強い人間か、カリスマがある人間か、それとも、どちらも併せ持つ人間か、はたまたそれ以外の要素が必要なのか。


 30年程生き、ラーハストの兵士長を10年務めた俺にとって、リーダーとはなんだろうか。


 騎士を名乗れる程、強くなかった俺にとって一体、それは何を意味するのだろうか。


 だが、今は意味のないリーダー論など持ち出したところで状況が変わるはずもない。


 「ライゼン兵士長! 南地区城壁、崩壊! 魔物の襲撃です!」

 「兵士は市民の避難を優先しろ。魔物はどれくらいだ」

 「100は確実にいます。そして、強力な魔物が一体いるとのことです!」


 「現地の兵士には時間稼ぎをするよう伝えろ。いけ!」


 伝令兵は敬礼をして、走り去る。

 俺は革鎧を装着し、剣盾にある剣を乱暴に抜く。

 十年にも及ぶ魔物との戦闘で俺を支えてきた剣だ。

 これ以上の頼もしさは無い。

 兵舎は阿鼻叫喚で、怒号が響き渡る。

 ラーハストは魔物の襲撃を幾度となく経験してきた。市民達が逃げる場所はここ兵舎であり、兵士たちは臨時部隊を編成し、数が集まり次第南地区に向かう。

 治癒園を一度訪問し、市民の受け入れと治療の準備を始めさせる。


 「クリス!」

 「もうやってる! さっさと行きなさい!」


 クリスは頼もしい。

 彼女もまた、ラーハストを支えている聖女だ。

 俺よりも10年は年下であるのに、なかなかの貫禄を持ち、治癒園にいる者たちを励ましながらも指示をしている。

 後方は問題ない。

 ならば、俺も出ねばならない。

 兵を集め、出動しようとしたその時、一報が入った。

 「ライゼン兵士長! ライゼン兵士長は何処か?」

 兵舎の喧騒が消え去りそうなくらい大きな声を出した伝令兵が俺の元にやってきた。

 嫌な予感がする。


 「なんだ!」

 「北地区の中心に魔物が出現です!」

 「中心だと! 数は? 魔物はなんだ?」

 「暗黒騎士を中心に魔物が出現! 数は増えています!」


 最悪だ。

 北地区の中心に魔物が突然出現。

 なぜ、そんな場所に魔物がいるのか分からないが、いるものをいないものとして片付ける程、愚かな判断はしない。

 暗黒騎士は悪魔の眷属であり、階級は中級眷属に位置する。

 中級眷属は、下手をすれば町が滅びるほどの脅威。そして、対応できる人間は俺と聖女しかいない。


 他にも問題はある。

 北地区と南地区に魔物が出現したとなると、兵舎にくる避難民が挟撃に遭いかねない。


 それに兵舎には神聖な治癒園がある。

 あそこは、聖女達が日々の祈祷によって天使様から力を借りる神聖な場所。

 そして、傷ついたものを癒す場所だ。

 どちらにせよ、兵舎を守ることに変わりはない。

 だが、それは多くの避難民を戦闘に巻き込むことを意味する。


 「どうなさいますか」

 「俺は北地区の暗黒騎士を討伐する。クリスに来るよう言ってくれ。浄化の力を借りたい」

 「了解しました!」


 これしかない。

 聖女の浄化の力を借り、暗黒騎士の力を弱め討伐する。

 そして、すぐに南地区へと応援に向かう。

 大丈夫だ。

 それでいい。

 南地区より北地区の方が混乱が大きいはずだ。

 脳裏に兵士や市民の悲鳴が聞こえる気がするが、ただの幻聴だろう。

 気にするだけ無駄だ。

 今は北地区の暗黒騎士を倒すことだけに集中しなければいけない。


 「で、伝令! 南地区に暗黒騎士と思われる魔物が出現!」

 「なんだと!」


 思考が真っ白になる。

 これは、俺の兵士長人生、類を見ない襲撃だ。

 絶望の文字が頭に浮かぶ。


 「どうなさいますか?」


 やめろ、やめてくれ。

 命令を待つのはやめてくれ。

 伝令兵は俺の命令を待っている。

 先ほどの命令と違って、これからする決断はどれほど重いものだろうか。

 だが、リーダーが泣くことは許されず、常に胸を張り、命令を下さなければいけない。

 そうでなければ、兵士も市民も不安になるだけだ。

 

 「…南地区の兵士には時間稼ぎをするよう伝えろ」

 それは、死を意味する。


 「…わかりました!」 


 若い伝令兵は敬礼をして走り去っていった。

 あの若い伝令兵は死ぬだろうか。それとも生きるだろうか。

 俺の命令の意図を理解していただろうか。

 そんな悩みがグルグルと回り続ける。

 だが、俺は自分のやるべきことをしろと叱咤する。


 「いくぞ!」


 俺は号令をかけて、北地区に出撃した。

 激しい戦闘が北地区で行われた。

 突然の魔物の出現で、避難誘導が遅れたのだろう。

 市民を守るように兵士たちが盾になった骸もあるが、それ以上に市民の死体が多かった。

 血生臭い中、我々は武器を振り魔物を討伐していく。


 後からやってきたクリスは傷を負った兵士をすぐに癒しながらも、俺の背中についてきてくれた。


 そのおかげで、暗黒騎士と対面してもすぐに浄化の光を使用し、戦闘を助けてくれる。


 時にはシールドを使い、時には浄化によって暗黒騎士の体勢を僅かに崩したりと、補助をしてくれる。

 追い詰められた暗黒騎士は魔力を集い、力の解放を行う。

 暗黒騎士が行う極めて特殊な行動。

 命を糧に自身を強化し、死ぬまで戦い続けるのだ。

 死ぬまで戦う魔物が多いが、死ぬつもりなど毛頭もない。

 だが、暗黒騎士は違う。死を全く厭わない。

 文字通りの死ぬつもりで戦い抜く。

 それは、まるで騎士のような存在。


 だが、暗黒騎士は騎士と真逆の存在である。

 あんな顔をする魔物を騎士とは呼ばない。

 人の負の感情を喜ぶ愉悦の笑みを浮かべるこの魔物を騎士とは到底言えないのである。


 戦闘行為は長く続いた。

 クリスと俺も全力だ。

 もし、クリスの補助がなければ確実に俺は死んでいる。

 それでも、時間を稼ぎ、最終的には暗黒騎士は自滅することになった。

 そのおかげで、周辺の建物はものの見事に崩壊。

 だが、無事に生き残ることができた。

 「クリス、次、行けるか?」

 「ええ、だいじょうぶよ!」

 俺もクリスもボロボロだ。

 クリスもモロに暗黒騎士の魔力剣の攻撃を喰らってたが、目は戦う意思を宿している。

 だが、足や体が震えているのは目に見えて明らかだった。

 無理をしているのだろう。

 彼女もこのラーハストにいる一人だけの聖女だから。


 暗黒騎士はもう一体いる。

 今の状況で戦えば、負ける可能性は極めて高い。

 だが、すぐに向かわねば多くの犠牲者が生まれる。

 ここは無理をしてでも行かねばならない。


 そう思っていた矢先にまた伝令が入った。

 俺の背中に冷や汗が流れる。

 南地区はすでに壊滅状態だろうと思いながら、報告を待った。

 若い伝令兵の笑顔に違和感を覚えながらも、大人しく聞く。


 「ライゼン兵士長! 南地区で暗黒騎士が倒されました!」

 「……」


 その報告を聞いて、思わずガッツポーズをする所だった。

 クリスも目を点にして驚いている。


 「それは、本当なのか?」

 「はい!」


 満面の笑顔で伝令兵は笑った。


 「それじゃ、戦いは終わりね。私は治癒園に戻って、準備をしてくるわ」

 「ああ、頼んだ」


 クリスはじゃあねと言って、治癒園に向かって走り出した。


 「ライゼン兵士長はどうなさいますか?」

 「暗黒騎士を倒した者を見てみたい。できれば勧誘したいな」


 暗黒騎士を倒すほどの勇み人。

 類を見ない襲撃に、突然の強者の出現。

 まるで、子供の頃に見た英雄譚に出てきそうな話だ。

 どんな顔か見たい。見てみたい。


 これから先は、より一層戦闘が激しくなる。

 悪魔の眷属が2体も一気に現れたのなら、必ずどこかに悪魔がいる。


 つまり、それは悪魔と戦うことを意味した。

 もしかしたら、厄災が現れるかもしれない。

 問題は山積みだが、希望が見えてきた。


 そして、俺は南地区に向かった。

 そして、その背中を見た。

 旅人らしき服装をした3人。

 オレンジ髪の男と女がおり、もう一人は綺麗な青髪の女性。


 オレンジ髪の女の背中は血で濡れており、戦闘の激しさを物語っていた。

 そして、その女は死んだ兵士の手のひらをぎゅっと握っている。


 死んだ兵士の誉を讃えてくれているのだろうか。だとしたら、なおさら兵士に勧誘したい。


 「君たちか、ここで戦ってくれたのは?」

 

 旅人達が振り返った。

 俺の目に映るのはあまりにも若い少女の顔だ。

 若すぎる、というのが率直な感想だった。

 あとげなさを感じるが、何か俺とは違う何かを持っているような気がした。


 そして、また俺は驚いた。

 どれだけの傷を負っているのか分からないほどの怪我だ。

 なのに、目の前の少女は平然としている。

 痛みを感じないのかと思ったが、どうやら違うようで、ただ我慢しているだけのようだ。


 勇敢に戦い、どれだけの傷を負おうが泣き言も言わず、兵士の誉を守る。


 その姿に俺は思わず、心が熱くなってしまった。

 そして、同時に自身の不甲斐なさを露呈しているようで嫌気がさした。


 「ああ、疲れているのにすまない。自己紹介をさせてくれ。俺はここラーハストにある兵舎の隊長だ。名をライゼンという」


 彼らは名前を教えてくれた。

 サニー、ヘルメス、アスラという名前だ。

 希望というのはこういう事を言うのだろうか。

 絶対に仲間に引き入れたい。

 彼らにはどうにか好印象を与えるためにも、笑顔を取り繕う必要がある。

 だが、肝心の町を守れていないことに俺は疲れた顔で話すことしかできなかった。


 「兵舎に来てくれるか? そこで休憩できるし、怪我も見てやれる」


 とにかくサニーはひどい怪我だ。

 治療を施さなければ今にも死にそうだ。

 だが、来てくれるだろうか。

 俺の心配は杞憂なようで、彼らはついてきてくれた。


 その間、彼らは終始無言だった。

 もしかしたら、俺と同じ気持ちなのだろうか。

 この街の惨状を見て、彼らも心を痛めているのか。

 全く息もしていなかった旅人が、暗黒騎士を倒したのに全く驕ったりもしない。


 俺は、それがひどく嬉しかった。


 「服装を見ればわかるが、旅人なんだろ? 何のために旅をしていたんだ?」

 「…騎士になりたいから、王都を目指してた。ここは、その途中で寄ったの」

 「そうか。騎士、か。俺も騎士だったがやめちまったな」


 サニーは騎士になるために旅を始めたようだ。

 騎士という言葉は俺にとって懐かしい言葉だ。

 彼女はきっと立派な騎士になれるだろう。

 俺みたいに、悩むことなく戦い続けれるはずだ。

 俺が望むリーダーの理想。


 それをサニーは持っているような気がした。


 「何で、やめちゃったの?」

 「そうだな。そんなに強くないから、だろうか」

 「………」


 俺の返答にサニーは言葉を返さなかった。

 前を歩いているせいで彼女の顔は見えないが、きっと悲しんでいるのかもしれない。

 俺と同じように。

 だから、俺はこう聞いた。


 「今日の惨状のせいでやめたくなったか?」

 「……いや、もっと強くなる決心がついたよ」

 「そうか、強いな。俺にはないものを持ってるのが羨ましいよ」


 ああ、やっぱり、彼女は良い騎士になる。


 「それで、他は?」と聞いたら、ヘルメスはサニーが心配だということらしい。


 確かに、今の傷らだらけのサニーを見ていればそう思えなくもない。

 心配してくれる人がいるというのは、心強いだろう。

 そして、アスラは騎士になりたいかもと自信なさげに言った。

 俺はそれに対してそうかと返すだけだった。

 悩みは誰にでもあるものだからだ。

 そして、悩みを解決するには行動を起こすしかない。


 「なら、三人とも兵士になるか?」


 3人とも目的が交わっている。なら、この3人を勧誘できるかもしれないと思い、俺は提案した。


 「いいの?」

 「ああ、試験は免除だ。提案を受け入れてくれるなら、すぐにでも兵士になれるよう手続きを進める。強いやつの勧誘はしないといけなくてな」


 普通は入団試験である程度の体力と筋力、精神力があるかみるが、彼らにそれは必要ない。

 それに、サニーにはやってもらいたい役割がある。

 俺にはきっと荷が重い役割だが、サニーならうまくやれるだろう。


 「じゃ、お願いするね。ありがとう」

 「礼などいらんさ。これから大変だからな。戦力が増えたのはありがたい」

 「まだ、何かあるの?」

 「まずは治療と食事だな。それを終えてから、先の話をしよう」


 これから忙しくなるだろう。

 復興もそうだが、これから訪れるであろう災いの対処を考えなければいけない。

 本当なら、俺の心の中はずっと暗闇の中だった。

 だが、サニー達が現れたおかげで光が差したような気分だ。

 久しぶりに希望を見た。

 サニーはきっと、この街の希望の象徴になれる。

 なら、俺のやるべきことは決まっているだろう。

 俺は俺のやるべき事をやるだけだ。

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