ミッション09;プールの開放感と緊張感を満喫せよ
なろう小説大賞6に参加させてもらってます。
なんとなくシリーズ化したハル先輩&健太シリーズも9作目。
お題は「プール」、お楽しみいただけると嬉しいです。
「うん、プール日和!」
晴れ渡る空、白い雲。連日の熱中症アラート!
の中、電車でお出かけの都会デートは、初めてづくしに人、人!、人!!
田んぼに畑に住宅地、学校と工場、近所のスーパー、少し離れたショッピングモール、ささやかな観光地が生活範囲の大半だった俺は、刺激と情報量に処理が追い付かない。
人並以下どころか全く青春を謳歌せずに切り捨ててきた事で、得られなかった経験値の大きさを思い知る。
賑やかな喧騒の中、電車を乗り継ぎ人混みをすり抜けて辿り着いた遊園地のプール。
そして人混みの中でも眩しく目立つ、水着姿のハル先輩。
俺に水しぶきをかけてはしゃぐ先輩、ジュースを持ち帰った俺にパラソルの下で手を振る先輩、一緒に焼きそばを食べる先輩、スライダーで俺にしがみつく先輩、意外に怖がりですねと俺に指摘されてむくれる先輩・・・。
強烈な太陽も傾き、これでもかと未体験を初体験に変えた、目まぐるしくも楽しい時間は過ぎていった。
電車に揺られて別れが近づくと、車があれば送ってあげられるのに、もっと一緒にいられるし、もっと頼りにしてもらえるかもしれないのに、とモヤモヤが押し寄せる。
何度も考えたけど、体調が万全とは言えない母と高校生の弟を思うと、正直厳しい。
そんな俺を見透かすように、ハル先輩は繋いだ手に力をこめてそっと囁き、
「今日は私、めっちゃ楽しかった。健太は健太だからいいんだよ、またね」
ゆっくりと離して降りていく。
俺も!俺だってすげー楽しかった!!
叫びたいくらいなのに声は出ず、口をパクパクさせるだけ。
車内から手を振って見送り、一人になる2駅分とチャリンコを漕いでいる間も、すでに先輩に会いたくなる自分にビックリだ。
望んで家事とバイト漬けの学生時代を送ったけど、今日は『中高恋愛を一日で理解!』みたいな凝縮っぷりじゃないか?社会人3年目なのに。
思い出すだけで、なんだか熱が上がりそうだ。
いやいや、しっかりしろ俺。楽しんだ分、家事もやるぞ。
そう気合を入れなおして帰ったのに、母と弟で洗濯も掃除も終わっていた。俺が担当なはずの料理も、買い出しと下ごしらえが済んでいるらしい。
「健太には感謝してるよ。でも、自分を優先する時があっていいんだよ」
母の言葉は後でじんわり響いて、家族を言い訳に面倒がったり切り捨てたりしてきた事に思い至る。
俺、浅瀬ばっか歩いてたんだな。なんかいろいろ、奥深いわ。
読んで下さって、ありがとうございました。
回を重ねてもイチャイチャやキュン不足、地味な話でスミマセン。
相変わらずの恋愛ジャンル詐欺っぽいですが、目指すはハッピーエンドです。
お付き合いいだけましたら幸いです。
イイネ、評価いただけると乾き気味の心が充電されます。
よろしくお願いします。