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第1話

   

「失恋したら髪を切る」という言い回しがあるけれど、一体あれは何なのだろう。

 おそらくは気分を一新させるとか、未練を断ち切るみたいな意味だと思うが、本当に髪を切るくらいでそれが可能なのだろうか?

 少なくとも私には無理。もっと思い切った行動が必要だ。

 だから私は、失恋するたびに引っ越しすることにしていて……。

 大学入学以降、今回が5度目の引っ越しとなる。


 まあ今回の場合、気持ちをリフレッシュみたいな感覚的な理由だけでなく、もう前のアパートには住めないという現実的な意味もあった。

 部屋の入り口で派手な痴話喧嘩をやらかしてしまい、それを同じアパートの住民に聞かれたり見られたりしたからだ。


「どうして? 私のお腹の中には、あなたの赤ちゃんがいるのよ!」

「いやいや、ちゃんと僕は気をつけてるから、それはあり得ない。そもそも君と僕は、あの一晩限りの関係だろう? 『妊娠した』っていうなら、それは僕じゃなく別のやつの子供じゃないのか?」

「酷い! 私、そんなふしだらな女じゃないわ! あなただけよ!」


 そんな感じで大騒ぎ。

 しかもその数日前には、満面の笑みを浮かべながら、隣近所に対して「赤ちゃんできたので近々、学生結婚することになりそうです」と吹聴して回ったばかり。

 それも含めて余計に、もうご近所様に顔向けできない……という状態だった。


 今にして思えば、相手の意向を確かめる前から「学生結婚することになりそう」と言って回った私も悪かったのだろう。

 しかしあの時の私は、子供ができた以上は彼も結婚してくれるものだと思い込んでいたのだ。

 そもそも私は、昔から思い込みが激しい人間だったらしい。高校時代の友人からは、よくそう言われていた。

 特に大学に入った後くらいからは、私自身もそれを実感するようになっていた。例えば彼氏が女性と二人で歩いているのを見かけて、その彼氏からは妹について聞かされていたはずなのに「あの女、浮気相手に違いない!」と勝手に決めつけたこともある。あれは「思い込みが激しい」の一例だったのだろう。


 それこそ、今回の「お腹の中に赤ちゃんがいる」も「思い込みが激しい」の実例だ。

 生理が遅れて、なんだか吐き気も感じるようになって……。「これは妊娠したに違いない」と思い込んでしまったからこそ、妊娠検査薬の結果も陽性と見間違えてしまったのだ。

 あの男と別れることになり「どうしよう? おろすしかないのかな?」と心配して病院に行った結果、想像妊娠に過ぎなかったと判明して……。


 ホッとすると同時に、顔から火が出るほど恥ずかしかった!

 ちなみに、想像妊娠がわかった途端、遅れていた生理がやってきた。吐き気も完全に(おさ)まった。「(やまい)は気から」の(たぐ)いだったらしい。

   

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