#0.プロローグ
最低限のみ記述したため改定する場合がございます。
サラッと読んで頂き、一話に入って頂けると幸いです。
*一部改変
――――1556年2月4日。剣聖『柊』死去。
後日、魔王討伐に大きく貢献を示した柊を弔うため、国葬が執り行われた。
長らく続いた魔族との戦いに終止符を打つため、柊を主軸とした十三人の国の精鋭達が投入された。この十三人は師走と呼ばれこの国に存在する対魔族の階級で最上位に位置する者達だ。
柊は綺麗に棺に収められていた。そんな柊と国民に向け、国王は言葉を紡いだ。
「剣聖 柊はその勇敢な行動と献身によって、我々の国に計り知れない恩恵をもたらした。彼の勇気と磨き上げられた剣技は我々の宿敵且つ最大の試練である魔王との戦いにおいて大いな輝きを示した」
「剣聖 柊に深い感謝と敬意を捧げる。彼の名は永遠に語り継がれ、その勇気と献身は次の世代への道標となるだろう」
国王は悲しみの中でも毅然とした態度で言葉を繋いでいた。彼女の眼は濡れていた。柊は国政にも関与していたため国王とも深い絆があったのだ。
その涙が地に落ちた刹那、国王は剣を地に突き立てた。
「柊よ! 汝の勇気と献身、永久に我が民の心に刻まれん! 汝が戦い、徒らに終わらざることを誓う! 安らかに眠れ、我が国の英雄よ!」
国王の言葉は青く澄んだ空に響き渡り、国民、師走の魂を鼓舞した。
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「あぁ、そうか。ワシは天寿を全うしたのか……いい人生じゃったのぅ」
黒濁した海に沈んでいるような感覚に襲われている。
落ちているのか、上がっているのかそれさえも分からない。
魔族の恨みが結集し、地獄へとワシの魂を誘ったのだろうか。
流れに身を委ね、瞳を閉じようとしたそのとき柊の脳内に少女の声が響いた。
(あ、あなたは剣聖様でいらっしゃいますか?)
「む? そうじゃが、お主は?」
瞳を開き周りを見渡すも声の主は見当たらなかった。
(ごめんなさい、時間がないんです。私に力を貸してください!)
不思議な状況に困惑しながらも少女の何かから逃げるような慌て具合を訝しみ、彼女の言葉を優先する。
(ごめんなさい……!! ごめんなさい……!!)
水泡を纏った細い少女の腕が柊の頭部を目指し進む。
「一体、なんじゃ? お主は……」
そして柊が反射的に少女の腕を掴むと淡い光と共に意識に霞がかかった――――