裏4項 自分勝手な悪魔たち
目を開けるとどこかの神殿だった。
目の前には、この世のものとは思えないほど美しい女性がこちらをみて佇んでいる。
あれ?
わたしは天国に来たのかな?
それか、此処は地獄なのかもしれない。
女性は、こちらを見て話しはじめた。
「私は、ウルズ。アヴェルラークの3女神が1柱。あなたは何故、ここに呼ばれたのかわかりますか?」
わたしは答える。
「わたしを、天国か地獄に送るためですか?」
「愛しい我らが子よ。豊穣の女神レイアが言っていた通りですね。あなたは慈しみ深く、思慮も深い。しかし、あなたが行きたいのは天国でも地獄でもないでしょう?」
「わたしは、ルーク様に会いたい。話せなくてもいいからもう一度だけでもいいから会いたい」
「分かりました。あなたに選択肢を与えます。このまま天国に行くか。それとも、私たちとある約束をし、最愛の相手に会うチャンスを得るか」
神様との約束ってなんだろう。
「約束って?」
「今、この世界は不安定なのです。この世界には、私達、神々だけでなく悪魔も跋扈しています。彼らは遊んでいるのです。人々が、希望を自ら投げ捨てるのか」
意味がよくわからない。
わたしの頭が悪いのかな。
「希望とは?」
「勇者です。いま、勇者の心は闇に囚われています。そして、世界に絶望し、馬車に轢かれて自ら命を絶とうとしている」
「世界のどこかに勇者さまがいるのですか?」
「います。我々は勇者を失うことはできない。しかし、生き返らせたくても、魂が闇に囚われている彼に、私達の聖なる力は届かないのです」
約束?
勇者?
わたしはルークさまに会いたいだけなのに。
話が壮大で変な方向に行っている気がする。
女神さまは続ける。
「しかし、悪魔達は、勇者を死なせないでしょう。お気に入りのおもちゃを捨てるハズがありません」
悠久の時をすごす悪魔達にとって、人間の命など瞬きほどの長さらしい。暇つぶしの玩具を自ら手放すことはないそうなのだ。
悪魔って、相当性格がわるい?
そりゃあ、悪魔だもんね。
「悪魔は勇者と契約し、彼に3度のチャンスを与え、生き返らせるはずです」
「わたしは何をしたら?」
「貴女は、勇者のループに同行し、彼を我ら光の陣営に導くのです。くれぐれも、悪魔たちに気づかれることのないように」
要は、神と悪魔で勇者を取り合っているのだろうか?
だとすれば、私たちの命はゲームの駒?
わたしには、神も悪魔も大差がないように思える。
だけれど、ルーク様に会えるならわたしも駒になりさがってもよいのだ。
「分かりました。ルークさまに会えるならそれでいいです。勇者さまをどうやって探せば?」
「自然に会えますよ。それは、貴女の待ち焦がれた人なのですから。さぁ、行ってきなさい。運命を正すために、あの時に戻るのです」
え、あのクズでバカで薄毛でメタボなルーク様が勇者?
またまたぁ。うそだぁ。
女神さまも冗談って言うんだね。
……え? ほんとなの?
だったら、ルーク様はわたしだけのルーク様じゃなくなってしまう。
女神さまが天に掲げた手を下ろすと、わたしは意識を失った。
★今回のお話しの表側★
「第4項 自分勝手なゴミカス」
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