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橋の上のショートストーリー

作者: パッション3

私の家の近くには大きな河がある。

そしてそこには大きな橋がかかっている。

車道と歩道。

この歩道が結構広い。

全長1キロ、毎日、多くの歩行者、自転車が行き来している。

早朝は老人の散歩、ジョギングする人、

そのあとは通勤通学者、

そして昼間は子供連れ、

夜はカップル。

日により時間により、また天気により、季節により、

様々な人たちが通っている。


これはそんな橋の上の小さな小さなストーリーである。








橋の上の小さな小さなラブストーリー


「ねえ今日はな~に?」

「何がいい?カレー?」

そんな会話をした親子が歩いている。

そこへ、

ドン!

いきなり自転車があたった。

いや、正確には自転車に乗った人が、

その親のバックをひったくった。

「ドロボー!」

前方にサラリーマンがいた。

そのサラリーマンが振り向きざま、

バッグをドロボーにあてた。

ドロボーは自転車ごとひっくり返った。

そして盗んだバッグを放した。

すかさずそのバッグを手にしたサラリーマン、

バッグを親子に投げ、周りの野次馬に、

「警察!」

と叫んで。ドロボーを取り押さえた。

まるで刑事ものドラマのようだった。

と、後ろから見ていた冴子は思った。

そしてそのサラリーマンに惹かれてしまった。


しかし、サラリーマンは警官が来ると、

ドロボーと自分の名刺を渡し、

「すみません、私、急いでいるので、もし用がありましたらそちらへ連絡してください」

と言い残し、去ってしまった。

冴子は焦った。

「私の王子様!!!」

警官に名刺を見せてもらうこともできたかもしれないが、

それはどう見ても不審な行動だった。

そこで熟慮の末、

毎日橋の上で待つことにした。忠犬ハチ公のように。

しかし、一週間たっても、彼は現れなかった。

仕事でたまたま来たのかもしれない。


そして、ついに彼が現れた。

「しかし、どう声をかけたらいいのだろう」

と思っていると、向こうから声をかけてきた。

「落としましたよ」

と。

そう、彼に気を取られて買い物袋を落としてしまっていたのだ。

耳の先まで赤くなるほど恥ずかしかった冴子だが、ここは千載一遇のチャンス。

「この前ドロボーを・・」

と言うと、

「ああ、見てたんですか? まあ、偶然ですよ、よくこの橋通るんですか?」

と思わぬ展開になった。

「いえ、あなたを待っていたんです」

とは言えず、

「ええ・・」

「そうですか、私は2回目なんですよ。両方とも会うなんてすごいですね。

おっと、時間が・・私、こういう者なんです」

と、ドロボーのとき同様名刺。

そこには、

「〇〇医療器株式会社 営業 〇田昭雄」

とあった。そして、

「では、失礼!」

と言って去ってしまった。

でも名刺受け取ったし、

と思っていたとき強風が・・

「あっ!」

遅かった・・名刺が飛んでしまったのだった。

確か医療関係の会社だったような・・名前も下は覚えているが・・


こうして再び「忠犬ハチ公」の世界が始まった。

しかし、もう彼は現れることはなかった。



橋の上の小さな小さな不思議


丸田茂雄は、毎日思っていた。

「何かいいことないかなあ」

そう考えながら橋を渡っていた。

すると前に紙屑が。

いつもは素通りするが、今日はなぜか拾っていた。

それは宝くじだった。

これもいつもは捨てるところだったが、なぜか今日は考えた。

「後で調べてみよう」


「当たってる!千円だけど」

信じられなかった。

そしてなぜか再びその橋に向かっていた。

そして信じられないことに再び宝くじを見つけた。

そして今度は何と百万円当選していた。

しかし、百万円の場合は千円のように単純にはいかない。

何せ銀行に行かなければならない。

結局、正直に話し、拾得物として、数か月後に受け取ることとなった。


そして、それから、あの橋には行っていない。

なぜか怖くなった。



橋の上の小さな小さな子供


その子はあの橋の上にいた。

たったひとりで。

だから、鈴木みかんは声をかけた。

「ぼく、ひとり?」

その子はうなずいた。

「パパ、ママは?」

首を振る。

「何してるの?」

これは警察しかない、

と、交番に連れて行くことにした。


最初は手をつないでいた。

しかし、その子がいやがったので、放して、数メートルあとを歩かせた。

何度も振り返った。そう何度も。

その何度目かに、その子はいなくなっていた。



橋の上の小さな小さな・・


変らぬ毎日。

なんてない。

毎日何らかの変化がある。

それを私たちは見逃しているだけなのだ。

この橋の上にも変化はあった。


規制線が引かれていた。

「何かあったんですか?」

と鈴木冴子は野次馬に聞いた。

「自殺者らしいですよ。飛び降り」


鈴木冴子は氷ついた。

「もしかしたら、私が・・」

そうだ、冴子は1年前ここで自殺を考えた。

それを止めたのは昭雄だった、間接的にだが。


「もう生きていけない・・」

そのとき冴子は思った。

数か月前までは幸せの絶頂だった。

家族には反対されたが、結婚し、子供もできた。

しかし職を失い夫は変わった。

毎日暴力の連続。

何とか離婚したが、夫は追いかけてきた。

「接近禁止命令」

まで警察に出してもらった。

しかし状況は変わらなかった。

いや実際には変ったかもしれないが、冴子にはそう思えなかった。


自殺を考えた。

そして来たのが、

あの橋だったのだ。



橋の上の小さな小さな・・


杉田昭雄は思っていた。

「あれでよかったのだろうか?」


一年前杉田昭雄は、丸田クリニックの診察室にいた。

診察に来たわけではなかった。

医療器の説明に来ていた。

説明を医師に終え、クリニックを出た。

そこまではいつも通りだった。


数日後バッグを開けて驚いた。

医療器の説明書とともに、

2枚の「宝くじ」が入っていた。

いつもなら、すぐ連絡し、返しに行くところだった。

しかし宝くじを頻繁に買っている昭雄は、番号を調べてしまった。

当たっていた。それも100万円。

あのクリニックにとっては大したお金ではない。

それももう数日たってしまった。

連絡もない。

ということは、

「気づいていない」

ということも考えられる。

さ~てどうする・・


考えに考えた末、

「あの橋の上に落として来ることにした」

そして、できたら、本当にできたら、

あのクリニック院長の息子に拾わせたい。

息子のことは昭雄は小さい頃からよく知っていた。

大きくなったその息子と院長の折り合いが今は悪いことも。

今は何もしていない息子にあの宝くじが渡れば・・

それが昭雄の願いだった。



橋の上の小さな小さな・・


人の気持ちは不思議なものである。

少し前まで自殺まで考えていた鈴木冴子の頭は、

もう、昭雄でいっぱいだった。


ふと気づいた。

「息子は?ひとしは?」

「そうだ!私にはひとしが・・」

「ひとし!ひとし!」


ひとしは橋の上にいた。

「ママ!」

抱きかかえ思った。

「生きなきゃ!」


そこに、

「なんだ、姉さんの子だったの?」

妹のみかんがいた。

親に反対され結婚したため、

姉妹の交流は数年なかったのだ。




















世界には80億の人がいる。

日本だけでも1億。

しかし、意外にどこかでつながっているのかも。

それが、小さな小さなストーリーでつながるのかもしれない。


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― 新着の感想 ―
[一言] 色々な人達がその橋の上でお互いに関係し合っているというストーリー構成が面白かったです。 群像劇好きなので……(´ω`*) パッション3さん、ありがとうございました。
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